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XLIII 吐露-II
しおりを挟むその様子を見るに、マーシャから何かを聞いたのは明白だ。
マーシャにとってセドリックは、仕事仲間であり毎日顔を合わせる相手だ。それに幼馴染という事もあり、何でも話せる相手なのだろう。黙っていて欲しい、という頼みはマーシャにとって酷だったのかもしれない。
仮にマーシャがセドリックに妊娠の事を話していたとしても、私にマーシャを責める資格は無かった。全ては、話さなかった私が悪いのだ。
部屋に響く、秒針の音。それはまるで急かす様に耳奥に響き、とても気分が悪い。
「あ、あの……」
長い沈黙が苦しく、なんとか喉奥から言葉を漏らす。
静寂を裂く自身の声。それがやけに大きく感じ、シャツを握る手に力を籠めた。
「――エル」
彼が囁く様に、私の名を呼ぶ。何処か棘がある様で、何よりも優しい、言葉にし難い声音だ。
その場に深く俯き、早く話さなければ、と自身を急かす。
だが、何も言葉が出てこない。何から話し始めればいいのか、自身の不安をぶつけても良いものか、彼はそれを受け止めてくれるのか、様々な事が頭を回り、目が回りそうだ。
ぽたり、と雫がテーブルに落ちる。
それが自身の瞳から零れた涙だと気付くのに、少し時間が掛かった。しかしそんな自身の気持ちとは裏腹に、涙は溢れテーブルには一粒、また一粒と雫が落ちていく。
――ずっと、ずっと不安だった。1人きりで、考え続けていた。
自身の中で張り詰めていた糸が、この状況をきっかけに切れてしまった様だ。
もう考えられない、もう1人で抱えられない。
彼が少しでも子を拒絶するのならそれに従おう。もうどうなったって構わない。彼と居られるなら、それでいい。
全てを打ち明けようと、顔を上げた。
「――……」
瞳に捉えた、彼の表情。
深く傷ついた様な、なんて言葉では表せない。だがその中で、敢えて言葉にするのなら“絶望”。
彼がマーシャから、どこまで聞いたのかは分からない。だがもし私が子を身籠った事を聞いていたとしたら、彼は今迄どんな思いで過ごしていたのだろうか。
思い返してみれば、彼はこの3日間やけに私の身体を気遣ってくれていた気がする。それは、私がここ数日体調を崩していた故の行動だと思っていたが、もしそれに別の意味があったのなら。
彼のその表情は“拒絶”じゃない。ただただ悲愴感に満ちた表情だ。
そんな顔、させたくなかった。見たくなかった。
まさか私が真実を告げぬ事で、彼を傷つける事になろうとは。私は私の事ばかりで、彼の事を何も考えられていなかった。
「――ごめん、なさい」
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