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XLIII 吐露-V
しおりを挟む彼の大きな手が、撫でる様に伝った涙を拭う。
私の瞳を真っ直ぐに見つめる彼は、不安な表情をしているものの決して逃げる事はしなかった。正面から、私と向き合ってくれた。
私も最初から、今の彼の様に話をすれば良かったと、出てくるのは後悔ばかり。だが今は、そんな後悔よりも彼に気持ちを伝える事の方が先だ。
「――嬉しくない訳、無いじゃない……」
痛む身体を無理矢理起こし、小さな子供の様に彼へ両手を伸ばす。すると彼が、私を腕の中に受け入れ強く身体を抱いてくれた。
「――でも、貴方の負担に……なりたくなかったのよ……」
私の身体を抱くその腕の強さと、愛おしい彼の体温。それ等に緊張の糸が解け、溢れる涙にしゃくり上げながら言葉を紡ぐ。
「……貴方が、人付き合いを好まないのは分かってた。そんな貴方が私を愛してくれたのは、奇跡だって事も……」
彼が子をあやす様に私の背を優しく撫でながら、小さく頷いた。
「だから、その奇跡を大事にしたかったの……。貴方との子供が欲しいだなんて、我儘を言って……、この関係を壊してしまいたくなかった……。だから、本当はお腹の子、とても大切で嬉しかったけれど……、このまま無茶をして、流れてしまえば、いいのかなって……」
私の言葉に、彼は何も言わなかった。ただ私を抱く腕に力が籠っただけで、口を噤んだままだ。
「……貴方にずっと、愛されていたかったの」
そんな彼に、躊躇いながらも一言付け加える。
すると、彼が1度私を強く抱きしめた後、ゆっくり身体を離した。
「……お前を負担になんて、思う訳ないだろ」
彼が私の頬を優しく抓り、僅かに口元を緩める。
「俺を、子供が出来た位で負担に思う奴だと思ってたのかよ」
「……そういう、訳じゃ……」
こつりと合わせた額から、伝わる彼の体温。
心を満たすのは、安堵と幸福感、そして一抹の不安。様々な感情が混ざり合い上手く言葉にする事は出来ないが、それでも心を苛んでいた怖気は綺麗さっぱりと消え去っていた。
「――これからどんな事があっても、お前を愛してる事だけは変わらないから」
彼が私の頬を両手で包み込み、そっと唇を重ね合わせた。
この3日間で何度も口付けを交わしていたのに、何故だか唇から伝わる体温がやけに久しく感じられた。きっと、彼との口付けに意識を向けられない程に不安に苛まれていたのだろう。
唇を離し、頬を緩ませる。
「貴方にしては、随分とキザな事を言うのね」
「――うるせぇ」
複雑な表情を浮かべる彼にくすくすと笑みを漏らし、何方からともなく再び唇を交わらせた。
久しぶりに、笑った様に思える。彼と唇を交わらせながら、深い安堵からかまた涙が溢れた。
これで、良かった筈だ。
間違った方へは進んでいない。
私の頬を撫でる彼の手の感触を感じながら、彼と2人笑いあった。
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