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XLVII 大切な家族-I
十月十日とは、短い様で長い。それは、先生が前に言っていた事だ。
しかし私にとってこの期間は、表現しようが無い程に短いものだった。
先程迄の慌ただしさが嘘の様に、部屋は静まり返っている。響くのは、秒針の音のみ。
妊娠が分かったのは、ほんの数か月前。――の様に感じるが、実際は10カ月もの期間が経ったのだ。改めて考えると、本当に妊娠期間とは短い物なのだと実感した。
他の妊婦よりもお腹が大きくならず、不安がる私に先生は「個人差がある」と言った。幾ら先生の言葉でもそれを盲信する事は出来ず、私は何度も繰り返し先生に訴え続けた。お腹の子の成長に問題があるのではないか、と。
しかし生まれてきた子は、そんな不安を払拭する程に元気な赤子だった。
可愛い我が子に出会えた感動は、とても言葉にする事は出来ない。全ての事が幻の様に感じて、自然と涙が零れる程に嬉しかった。
だがそれと同時に、出産の痛みを言葉にする事も出来そうに無かった。
彼を初めて受け入れた初夜。あの日も、酷い痛みを感じた。叫びだしそうな程の痛みに、まるでナイフを差し込まれているかの様だとも思った。
当時はまだ、自身が妊娠をし、出産をする事など全く考えていなかったが、あの痛みを超えるものは存在しないと思っていた。しかし出産の痛みは、その痛みを遥かに超えるものだった。
痛みを超越し、それが苦しみに変わった時。“産みの苦しみ”とはこの事を言うのだと理解した。
そして愛おしい我が子の姿を見た時、その苦しみが全て吹き飛ぶ程の喜びを感じた。
出産をする前は、仮に自身に万が一の事があってもマーシャにならセドリックと子供を託せるなんて事を考えていたが、我が子の顔を見た瞬間その考えは一瞬で塗り替わった。
他でも無い自分が子の成長を目にし、セドリックと共に喜び大人になる姿を見届けたいと、そう強く願った。初めて、強く生きたいとも思った。
そして何よりも感動し、驚いた事は、自身が身籠った子が“双子”だという事だった。
ベッドの上、自身の隣で眠るのは可愛い双子の女の子。
人形を2つ並べている様にも見えるそっくりな容姿に、不思議な感覚を抱く。
実は自身が身籠っている赤子が双子だという事は、随分と前から先生から告げられていた。故に想像通りの事ではあったのだが、過去に双子を見た事が無かった為半信半疑だった。
事実、出産を終え双子である娘を目の前にしても何処か信じ難い。生命とは不思議な物だ、と思いつつ娘2人を眺める。
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