DachuRa 1st story -最低で残酷な、ハッピーエンドを今-

白城 由紀菜

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L 過去-II






「――エル」

 突如背後から聞こえたセドリックの声に、ぐるぐると回っていた思考が止まった。
 ずっと考え事をしていたからだろうか。彼が2階に上がってきた事に、全く気が付かなかった。
 慌てて振り返り、彼に視線を投げる。

「2人とも、寝たか?」

 普段よりずっと潜められた声に、ふふ、と笑みを零す。その問いに応える様に微笑み、そっと手招きをした。
 足音を立てない様ゆっくりと歩み寄ってきた彼が、私の頭上から娘達の顔を覗き込む。

「ほら見て、可愛いでしょう?」

 ベッドに並ぶ、天使の様に愛らしい寝顔。
 2人は、今月の冒頭に4歳の誕生日を迎えた。顔つきもしっかりとしてきて、私達と同じ様な言葉を話し、性格の違いもはっきりと分かる様になってきた。それでも、私達にとってはまだ幼い子供だ。
 些細な仕草や言動、こうした寝顔が何よりも愛らしくて、ついつい子供扱いしては娘達に怒られてしまう。

「レイは、貴方によく似てる」

 レイの目元に指先を触れさせ、瞳の下に2つ並んだ涙ボクロをなぞった。
 セドリックの目の下にも、同じホクロがある。こうしたものを見つけると、やはり親子なのだと実感が湧き胸の中に幸福感が広がった。

「――でも、レイはどちらかというとお前に似てるだろ」

 私の背後から手を伸ばし、彼が徐にレイの頭を撫でた。

「そうねぇ、貴方に似ているのはルイの方かしら」

 ルイはやや中性的な顔付きをしていて、瞳の色もありセドリックに似ている部分が多い。
 しかし、私と同じ口元に小さなホクロがあり、私の遺伝子を継いでいる事も分かった。

 そこでふと、思い出したのは両親の事。
 私は社交界で、“母であるシャーロットに似て美しい娘だ”等と言われてきた。だが、父に似ているとは一度も言われた事が無かった。
 確かに、このアッシュゴールドの髪も、ふわりと柔らかな髪質も、母に似ている物だと思える。しかし、どれだけ考えてみても父に似ている所は思い浮かばなかった。
 では、性格面はどうだっただろうか。
 ルイは人見知りが激しく無口で、表情も乏しい。そこはセドリックに似たのだろう。そして反対のレイは、何処へ行っても愛想が良く、常に笑顔で感情の起伏がやや激しい子だった。どちらかと言えば、私に似たのだと思える。
 私の性格は、父と母どちらに似たのだろう。私がまだ小さな頃は、母はよく笑い優しい人だったと記憶している。物心がついて、いつの間にか母は厳しい人になってしまったが、それでも母が見せてくれた笑顔は印象深く記憶に残っていた。
 反対に、父はどんな性格をしていただろうか。小さな頃から父との関りが薄かった為、父がどの様な人だったか記憶に残っていない。
 自身の娘達を見ていれば両親である私達によく似ていると思えるのに、自身が両親のどちらに似ていたか、というのは幾ら考えても分からない。

 セドリックは、両親の何方どちらに似ていたのだろう。彼は、それを覚えているだろうか。何故だかそれが猛烈に気になり、振り返り彼の顔を見上げた。

「――ねぇセドリック、貴方はご両親の何方に似ていたの?」

 昔、マーシャに2人の両親の事を尋ねて、「知らなくて良い事」だと言われた事があった。その時の彼女の瞳は鋭く、やけに怖かった事を覚えている。故に、セドリックに両親の話題を出すべきでは無いのかと思量しりょうし、今迄ずっとその話は伏せてきた。しかし、娘を持った今なら少し位許されるのでは無いか。
 そう思い、やや躊躇いながらもその問いを口にした。

「――……」

 彼は、娘達の寝顔を見つめたまま何も言わない。その表情は変わらないが、穏やかな空気にピリ、と緊張感が走った様な気がした。
 やはり、聞くべきでは無かった。謝るべきだろうか、それとも、このまま黙っているべきだろうか。
 そう案じてると、彼が徐にぽんと私の頭を撫でた。

「――下で話そう。折角寝かしつけたのに、2人が起きたら困るだろ」
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