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LII 最後の瞬間-I
しおりを挟む「ルイ、レイ、あまり離れて行かないで。危ないわ」
普段はあまり立ち寄らない、ロンドンの中心部。高級百貨店などもあり、多くの人で賑わう場所だ。
何か特別な日、という訳では無いのだが、常に家に籠った生活をしている娘2人に少しでも気分転換をさせたくて今日は此処まで足を運んだ。
自身の前を歩くのは、10歳になった娘2人。髪に結ばれた赤いリボンが、歩く度にふわふわと揺れる。ルイには苺の飾りが、レイにはさくらんぼの飾りが付いた髪飾りだ。
2人が10歳の誕生日を迎えた日、私とセドリックが贈った物である。
私もセドリックもそれなりの教養があった為、この10年掛けて2人に読み書きを少々厳しく教えてきた。その甲斐あってか、街で2人は賢い子供だと評判だ。
労働者階級の子供は、10歳ともなれば働きに出るのが一般的である。しかし、働きに出ている子供でも読み書きが出来る子は少なかった。無教養の大人も少なくなく、殆どはその様な子供に読み書きを教える大人が居ないのだ。
私は幼少期から家庭教師が付き、厳しく教養をされてきた為読み書きが出来る事は最早当たり前として考えていた。そんな私が現状を知った時は、驚き、そして心を痛めた。だからこそ、娘には出来る限りの教養をしてやりたいと思ったのだ。
教養が無い事を恥だとは決して思わないが、娘には少しでも苦労せずに人生を送ってほしい。教養があれば、将来就ける職も広がるであろう。
娘2人――特にルイは、元々賢い子だったのか教えた事は直ぐに覚えられる子だった。
レイは少々不真面目であるが、ルイに至っては読書も好きで私達大人が驚く程に博識だ。最近では自身で小説を書いている様で、将来は作家を目指している様だった。
反対にレイは絵を書く事が好きな様で、勉強の為にと買い与えたノートには殆どのページに落描きがされていた。しかし落描きと言っても決して粗末な物では無く、物の形をしっかりと捉えた絵ばかりだった。いつかちゃんとしたカンバスと絵具を買い与えて、自由に絵を描かせてみたいものだ。
セドリックの幼馴染であり、私の親友であるマーシャとは10年経った今でも交流がある。セドリックと同じ職に就いている為交流が途切れない、という事もある様だが、それでも週に2回程家に遊びに来てくれていた。
子供達もマーシャに非常に懐いていて、マーシャのあの性格から家に子供が3人いる様だった。
この10年変わる事無く、幸せな生活を送っている。
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