DachuRa 1st story -最低で残酷な、ハッピーエンドを今-

白城 由紀菜

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LIV 失ったもの-IV

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Dear Elle Andor,《親愛なる エル・アンドール》

You just have to believe in you. 《貴女は貴女を信じれば良い》

No one blames the choice. 《その選択を咎める者は居ない》

Mabel Balfour《メイベル・バルフォア》

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「――どうして、どうしてなの……」

 ぐしゃりとその手紙を握り締め、今も風に揺られ開閉を繰り返す扉をゆっくりと開く。

「どうしてあの時も、今も、大事な事が何も……書いていないの……」

 これはきっと――いや確実に、予言の類だ。
 予言など、この世に存在しない。する訳が無い。そう思いたいが、現に今手の中に“それ”がある為否定する事が出来ない。
 あの時も、そうだ。理解できない文章が書かれていたが、きっとあれはセドリックとの関係を指していた。
 そしてこの黒い手紙から僅かに香る甘いシトラスの香りに確信を抱く。私が娘2人を身籠った時に裏路地で擦れ違ったあの女性。きっと、あの女性こそがこの手紙の差出人だ。

 張り裂けそうな程の動悸を感じながら、家の中に足を踏み入れる。
 明かりが消え、人の気配が無い事以外いつも通りの我が家だ。テーブルの上に残された2人のノートを一瞥し、ぐるりと一周家の中を見渡す。

「――ルイ、レイ……どこに居るの……?」

 この家の中に、2人は居ない。それは気配で分かる事なのに、俄かに信じられず2人の名を呼ぶ。
 ふらつく足で2階に繋がる階段へと向かい、言葉にし難い恐怖心を抱え一段目に足を掛けた。そしてもう片方の足を二段目に乗せ、ゆっくりと階段を上っていく。

 幾ら不真面目でも、レイは私の言い付けを破る子では無い。物事に対して冷淡でも、ルイだって物事の善悪は付く子だ。
 故に、2人は自らの足でこの家を出た訳では無い。2人の身に、何かがあったのだ。それはもう、とっくに分かっていた。

 しかしまだ、心の何処かで願っていた。私を驚かせようと、わざと子供部屋に籠っているのでは無いか。部屋に入った瞬間、笑顔のレイが「勉強漬けにさせたお返し」なんて言って驚かせてくるのでは無いか。もしくは、私の言い付けを破って外へ遊びに行ってしまったのでは無いか。
 そうであって欲しいと、心から願っていた。

 辿り着いた2階。子供部屋のドアノブに手を掛け、息を深く吐く。この奥に、2人は居る筈だ。きっと、私の帰りを待っている筈。
 まずは、これ程心配させたことを叱ろう。如何なる理由があったとしても、善悪を教えなくてはならない。そしてその次に、思い切り強く抱きしめて、おやつとして果物を剥いて出してあげよう。
 あぁ、でもその為には、外で落したまま拾っていないバスケットと食材を取りに行かなくてはならない。食材と果物は、傷んでいないだろうか。
 だがそれは、3人で取りに行けば良いだろう。食材も、3人で買い直しに行けば良い。

 ――しかし、2人が居なかったら?
 子供部屋はもぬけの殻で、本当に2人の行方が分からなかったら?
 それが今は怖くて、怖くて仕方が無い。ドアノブに掛けた手が、酷く震える。

 しんとした家の中と裏腹に、外からは激しい雨音がしていた。娘は部屋の中に居る筈だと思いながらも、何処かへ消えてしまった2人が雨に濡れていないだろうかだなんて、矛盾した心配が募っていく。
 いつまでも、扉の前で娘を想っていたって仕方が無い。意を決し、そっと扉を開いた。
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