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LV 悪夢の様な話-II
しおりを挟む「――俺は、あまり良くない仕事をしてる」
今にも消えてしまいそうな、小さな声。
「――売り手と買い手の仲を取り持つのがブローカー。宝石であったり、洋服であったり、質の良い布であったり……取引される物は様々だ。……でも俺は、その中でも特殊な物の取引を担当してる」
「特殊……?」
彼が深い溜息を吐き、そして深く息を吸い込んだ。瞳を伏せ、躊躇いがちに口を開く。
「……“子供”の、売買だ」
彼の言葉に、息を呑む。
――子供の取引。そして、貴族を相手にしている。
その情報で、とある事に気付いた。
私がまだ屋敷に居た頃。社交界で良く、慈善活動の一環として“孤児”を引き取り、養子として育てる家が多いと噂で聞く事があった。何処かの孤児院から引き取っているのかと思っていたが、ずっと、高慢な貴族が下層階級である孤児を自身の屋敷に招き入れ、そして美しい服を着せ何不自由の無い暮らしをさせる事に違和感を抱いていた。
彼等は階級を何よりも大切にしていて、孤児等ゴミの様に扱う事が殆どだ。そんな彼らが、自ら引き取り養うだなんて、心の何処かで何か裏があるに違いないと思っていた。
それに、彼が関わっていたのなら……?
「訳有って子供が欲しい貴族。借金、配偶者からの暴力、望まない妊娠等から子供を手放したい親。双方からの依頼を集め、そしてその中で比較的条件の一致する依頼者同士を引き合わせる。それが、俺の仕事だ」
あまりにも、非現実的な話だ。しかし、その話に妙に納得がいった。
彼と出逢ったあの晩、彼が自身の仕事を“人助け”と言っていた。今の今迄、それはただの誤魔化し文句だと思っていたが、話を聞いている限りでは“人助け”でも強ち間違いでは無い様に思える。
「――どうしてセドリックは……子供の売買の仲を取り持つ仕事を選んだの……?先程貴方が言った様に、宝石や服、布でも問題無かった筈だわ」
「特に、理由なんて無い。ただ、貴族が絡む仕事は割が良いんだ。本当に、それだけだよ」
それは、此処で暮らしていて何度も思った事。
街の人達と比べて、私達は遥かに良い暮らしをしている。子供が2人も居れば生活が苦しくなることが普通だが、この約14年間生活に困った事は1度だって無かった。
「――貴方の仕事は、分かったわ。でも……どうして揉め事を起こしたからといって、2人がスタインフェルド家に居るのか……それが分からない、理解出来ないの。どうして……?誘拐でもされたって言うの……?」
「――……」
彼が再び、口を閉ざす。
そんな彼に、深い愁然の様な、痛憤の様なものが沸き上がるのを感じた。
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