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LVII 分岐点-II
「詳しくは、此処に書いてある」
黙り込んだ私を見て、ライリーが一通の手紙をテーブルに置いた。その手紙には私とセドリック2人の名が書かれている。
ライリーの顔を一瞥し、その手紙に手を伸ばした。
手紙には、切手も貼られていなければ消印も無い。しかし、裏返してみればそこには“Cecilia Umbridge《セシリア・アンブリッジ》”の名が書かれていて、赤い封蝋で口が閉じられていた。
ライリーが彼女――セシリアから直接預かった物だろうか。しかし、昔ライリーはセシリアに会いに行く事が中々出来ないと言っていた筈だ。暫くその手紙を見つめたまま考え込んでいると、私の疑問に気付いたのか彼女が「私宛に届いた手紙にそれが入っていたんだ」と一言告げた。
「とりあえず、セドリックにも話してみてくれよ。返事は急いでないから」
「――ええ、分かったわ」
紅茶を飲み干した彼女が、徐に席を立った。
「話も済んだし、私はここで失礼するよ」
「あら、もう行ってしまうの?」
「あぁ、話も済んだし、あまり長居をするつもりはなかったからね。紅茶、美味しかったよ。ありがとう」
「――いえ……、またいつでも来て……」
彼女も、笑顔の無い私を見ているのがつらいのだろう。私を見る彼女が、寂し気な表情を浮かべている事には気付いていた。
それに、ライリーも娘2人をとても可愛がってくれていた。幼少期には毎日の様にこの家にも遊びに来てくれたものだ。そんな彼女にとっても、娘の居ないこの家は居心地が悪いのかもしれない。
椅子から腰を上げ、玄関へ向かっていく彼女を追い掛ける。
「返事は、なるべく早く出すわ」
「さっきも言っただろう。返事は急がなくて良いって」
「でも、こういうのは早い方がいいわ」
振り返り私の顔を見た彼女が、何か言いたげな表情を浮かべる。しかし、何も言うことなく曖昧な反応を示した。
「じゃあ、私はこれで」
どこか素っ気無く告げたライリーが、1度も振り返ること無く街へと去っていく。そんな彼女の背を見ながら、先程の話を頭に浮かべた。
この家を去り、孤児院でシスターとなる。
それがどういう事かは、理解はしているつもりだ。
娘の帰りを待つ、それは私の唯一の心の拠り所だった。2人が戻ってこないことは分かっていたが、それでも心のどこかでいつか帰ってきてくれるのでは無いかと思っていた。
それが、もう無くなる。それこそ本当の別れだ。
セドリックは、娘が居なくなってから仕事に行っていない。特別辞めたという話は聞いていないが、きっともうブローカー業を続けるつもりはないのだろう。
非合法的な仕事ではあったものの、幸いにも割の良い仕事だった為に貯蓄がある。贅沢な暮らしを求めなければ、このまま仕事をしなくとも暫くは生活が出来るだろう。
非常に悩ましい選択だ。
此処でずっと娘の帰りを待つか、心機一転と考え隣町へ越すか。
ライリーの背がもう見えなくなっている事に気付き、玄関扉を閉め溜息を吐く。そしてふらりと玄関から離れ、テーブルに着いた。
目の前には、先程ライリーが置いて行ったセシリアからの手紙。それをぼんやりと眺めながら、手紙の答えを思案する。
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