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出逢いと因果

願い 弐 ❁✿✾ ✾✿❁︎

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  「ふ……うぅん……」 

  口の奥まで入れた熱は、喉の奥にこすれると苦しいのに切ない。でも、少しも休みたくなくて、保科様の太ももにつかまりながら、顔を押し付けた。
  している時に、保科様が髪や耳を撫でてくれるのが嬉しくて、お腹の奥がきゅん、と疼く。ただ舐めているだけなのになんでかな? 俺はいつの間にか自分の太ももまでくっつけて、こすり合わせている。

  「……悠理、もういいよ。ほら、おいで」

  「ンん?」
 保科様が俺の口から、まだ昂ぶったままのものを引き抜いた。脇をぐい、と抱えあげ、保科様の膝を跨いで座らされる。

  「どうして?」
 俺のやり方が悦くなかった? 俺、独りよがりだった?

 保科様は悲しく歪んだ俺の眉に口付けを落として、柔く微笑んだ。

  「一緒に……ほら、悠理の、また欲しがっているから」

 え?
  「あ……今イったばかりなのに……ごめんなさい」

   「かわいいよ」
 そう言って口付けをしてくれる。最初からくちゅくちゅと音がして、たくさんの唾液が顎を伝った。

  「いつもの、しようか」
  保科様の手が菊座に回る。

  「ああ、触ったわけでもないのにこんなに濡らしてひろげて……いい子だ。自分でほぐすのを忘れなかったんだね」

 恥ずかしい。保科様の指を思い出しながらしていたって、知られたらどうしよう。

 俺はふるふると首を振った。

  「んっ……あっ……ああ……」
 返事を待たずに保科様の指が入ってくる。もう一切の抵抗もなく、そこに入るのが当たり前みたいにするりと。

 すぐにぐちゅぐちゅと音を立てて内壁をかき混ぜられる。
 大好きなこの指をずっと待っていた。

 快感に溺れそうになるのを堪えながら、俺も保科様の熱い昂ぶりを握った。

 あつい。今までの何倍もあつい。
 欲しい。このあついの……。
  「保科様、欲しい……」 

 しっかりした肩につかまり、腰を上げて保科様の指を抜く。

  「悠理? どうし……? ……っ! やめなさい!」
 保科様の根元を掴んで、腰をゆっくりと落とした。つぷ、と言う感触がして、先が菊座に張り付いたのがわかる。

  「……っ、あっ……」
 そのまま、俺の菊座は保科様のものを半分まで飲み込んだ。しっとりとした手で背中を撫であげられるような快感に、ぞくりと震える。けれど、そこで腰を上側に上げられ、中が一気に空虚になる。愛しい熱が離れて、すがるように菊座が窄まり、寂しさだけが残った。

  「ん、やだ。欲しい。保科様と一つになりたい」

  「悠理、これだけはダメだ。私がして良いことではないんだよ。頼むから……」
 保科様は苦しそうに頭を振る。
 額に沢山の汗。眉間に寄せられる眉。なにもかも色っぽくてたまんない。

  「お願い。誰にも言わない。これしてくれたら、俺、もう誰とでもちゃんと仕事する。頑張るから……だから」
 ちゅ、ちゅ、とキスをして強請る。

 保科様は頭を緩く振ってから俺の頬を挟んだ。
  「悠理、違うのだ。それをして欲しくないのだ。この線を超えたら……私は……私はお前を私だけのものにして……離したくなくなる……」

 頭が、一瞬、真っ白になった。


  「保科様、それって……」

  「聞くんじゃない。だからと言ってどうすることもできないのだ。以前お前が言ったように、私はゆくゆくはこの家を継ぐために妻を娶り、子を成さねばならない……心がその者になくとも……そしてお前と共に生きていくことは決して叶わない。なにより、それができたとして、私の欲でお前のこの先の人生を摘み取りたくないのだ。わかってくれ、悠理」
 保科様の漆黒の瞳が濡れて光る。

  「保科様……好きだよ、大好き……」
 保科様は答えようがない。
 だから一方的でも、俺は自分の気持ちを伝える。

 届け、届け、届け……! 俺の気持ち。

「保科様が大好きだよ」

  「悠理……」 
 保科様はまた頭を振る。だめだよ、と。

  「何も言わなくていいです。そう保科様が決めたのなら従います。でも……俺は未来の約束なんかなくてもいいし、言葉も要らない。それでも、他の誰かとしても、いつも心は保科様にあるよ。他の誰かに感じたように見せても、俺が心から感じるのは保科様だけ……そうやって生きていきながら、夢はちゃんと叶える。だから未来なんか気にしないで。今、この瞬間の、目の前の俺を見て……!」
  「……ああ……!」

 保科様が目をきつく閉じ、俺に覆い被さる。俺は保科様を離すまいと、その腰に足を絡めた。

  「お願い、保科様。今はなにも考えないで。理由もなにも要らない。こうなるのも因果だよ……」

  「悠理……お前は本当に……」 
  「んぁっっ」

 腰に絡めたままの足の片方を膝裏から持ち上げられると、菊座に再び熱いものが当たり、襞を割ってぐぐ、と圧がかかった。

  「は……う……んん」
 
 体の力は自然に抜けて、全てを迎え入れる準備ができていた。
 お腹が波打つような感覚。少しずつ菊座から胃に突き上がる甘い痛み。
 決してものが入るべきでない場所に、今、熱い肉塊が進んでくる。

  「は……、全て、入ったぞ」

  「保科様、俺の中にいる」
 嬉しくてお腹をさすってみる。形までは良くわからないけど、確かに下腹が張っていた。不思議な感覚。でもちっとも痛くない。保科様と一つになれたこと、それでお腹がいっぱいだけれど。

  「可愛いことばかり言うんじゃない……すまぬ。優しくしてやれないかもしれない」

  「いいよ、大丈夫……あっ、あぁンッ」
 保科様が俺の両膝を開き、体を真っすぐに打ちつける。
 そのたびに弾けるような、肉と肉がぶつかる生々しい音がして、脳内にまで響いた。

 体が揺さぶられる。

 ……ああ、波だ。

 寄せては引いて返す波に揺さぶられている。
 なんて心地よくて、なんて幸せなんだろう。いつまでもこの波に揺れていられたらいいのに。

  「ふ……う……ッ」
 俺に負担をかけまいと、体重を預けない保科様をぐい、と引き寄せる。
 全部、全部感じたいんだ。保科様の全部を。

  「く……悠理……そんなことをしたら……」

  「ふ、あぁ、ひっ……奥に、当たる……深い……気持ちいい、保科様、気持ちぃッ……もうイっちゃう……!」

  「ああ、私もだよ。大丈夫、悠理。一人にはしないよ」

  「保科様、保科様」

  「悠理。忠彬、だ。私の名も呼んでくれ……ッう……」
 速さと強さを増していく潮流。

 ────ああ、波に攫われて行く。

  「忠彬様、大好きです。ただあきらさ……あ、あぁっ」
  「悠理……!」

 一度大きく膨らんだ感覚のあと、中に熱いものがじわっと広がった。

 下腹が急に楽になり、形容しがたい充足感に包まれる。
 保科様は俺に体を預けたまま、動かずに息を整えていた。背中に浮く玉の汗が愛おしい。
 
  「ふぅ……。すまない、中に……」
  吐息に似た息継ぎのあと、保科様は柔らかくなった自身をゆっくりと引き抜く。
 その刺激さえ、俺には甘美。

  「んっ……」
 全て抜かれたあと、どろっとした白濁が自然に溢れ出した。保科様は指を入れて、まだ俺の中に残ったものも掻き出してくれた。

 俺はされるがまま動けなかった。ううん、動きたくはなかったんだ。ここにいるあいだだけは、陰間の百合ではない、保科様の悠理でいたかったから。

 手を伸ばし、処理をしてくれた保科様の腕を指で辿る。きれいな腕。大好き。
 保科様は優しく笑んで俺を抱きしめ、深いキスを落としてくれた。


 ああ、幸せだな。
 愛する人に愛されながら抱かれたこと。この幸せで、先にある道を強く歩いていける。


  ​──そして、これが俺と保科様が体を繋いだ、最初で最後の夜になった​──

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