枕営業から逃げたら江戸にいました。陰間茶屋でナンバー1目指します。

カミヤルイ

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出逢いと因果

願い 壱 ❁✿✾ ✾✿❁︎

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 夜も更け、廊下に置かれた行燈の火がゆらゆらと揺れている。ここに初めて来た時よりも一層寒くなって、廊下の板の冷たさが素足に刺さった。

 保科様の寝所に続く最後の曲がり角で、番をする守人に頭を下げる。ここから三つ先の部屋まではもう守人はいない。
  「絶対泣かない!」
 両手でバンッ、と頬を叩いて気合いを入れた。


  「保科様、百合です」
 ああ、と言う声が聞こえて、正座のままふすまを開いた。

  「こちらへ」
 保科様に促され寝所に入る。
 一週間ぶりの保科様の部屋は保科様の香の香りがして、郷愁的な気持ちになる。

 保科様と膝を合わせるとすぐ、俺の前に打刀と脇差が置かれた。
 素人目にもわかる、立派な打刀のつばには金と銀で細工された百合が施されている。

  「これは……」

  「陰間が街を歩く時と褥に入るそばには必ずこれを持つのが習いだ。陰間は絡まれやすいし、褥では客の皮を被った盗賊などの輩が居ないとも限らない。金剛まわしも部屋の外にはついているが、最後に自分を守るのは自分だ。良いな。必ずそばに」

  「はい……!」
 俺は二つをギュッと胸に抱いた。保科様からの刀はきっと俺を守ってくれる。
  「保科様がいつもおそばにいて下さる。そう思って大切にします」

  「悠理」
 保科様の凛々しい顔が優しくほどけて、手が俺の頬に伸びる。
  「明日、居なくなるのだな」

  「……保科様、そんなこと、言わないで下さい。おめでたいことだとおっしゃったでしょう?」
 切ない顔で名前を呼ばれたら、抑えている気持ちがザワザワと波立つ。

  「そうだな。いや、私もこの一月ひとつきが楽しく、どうやら名残惜しいようだ」

  「……っ。はは……あの、お話はこれだけですか? なら、俺もう行きますね」
 ……失敗。自分のこと「俺」って言っちゃった。「百合」として話さないと。なんて、気を紛らわせながら、刀を抱えて慌ただしく立ち上がる。
 さっさと部屋に戻るんだ。

​  「…………」
 ……戻ろうとしたけど、足が進まなかった。襖の前で、足も肩も震えてしまう。
 ここを出たらもう、保科様の胸に抱かれることも包まれることもない。それどころか、次に本当の名を呼んでくれるのもいつになるのかわからない。
 
 ────なら、最後にもう一度だけ。
 
 「保科さ……」
 保科様はもう、後ろにいた。

 振り返りかけていた俺の背中を、保科様がふんわりと包む。それから、腕の力がぎゅっ、と強くなった。

 「悠理……」
 切ない声で名前を呼ばれる。これを聞いたらもう、自分を抑えられなかった。


 俺は保科様の方へ向き直り、その背中をかき抱く。せっかく頂いた刀はガチャンと音をたてて腕から離れたけど、保科様も気に留めなかった。お互い他のどんなことよりも、目の前の存在を強く求めることに必死で、言わずとも唇を寄せる。

  「ん、んんっ……」
 そのまま俺達は互いの浴衣の紐を解き、荒々しく脱がせ合いながら布団へともつれ込んだ。
 保科様が寝所で全てを脱ぎ去るのは初めてで、程よい筋肉がついた美しい裸体が俺の肌にぴたりと重なる。
 なんて心地がいいんだろう。

  「ん、保科様、保科様」
 足りないとばかりに大きく口を開け、保科様の唾液を受け取る。
 やがて、いつものように保科様の唇は顎・鎖骨を辿り、既にもの欲しそうに尖っている胸の蕾に届いた。
 指先で尖りを挟まれ、先を愛撫される。

  「ん、ん、あン、あぁンン……」
 執拗とも言えるくらいに吸われ、転がされ、俺は声を抑えられない。
 手で口を塞いでも、閉じ込め切れずに恥ずかしい声が響く。

  「悠理、抑えなくていい」

  「だめっ、こんなに大きく声を出したら番の人に聞かれちゃう…………ぁアっ」
 かりっとかじられて、また声が出てしまう。

  「まだ周りを気遣う余裕があるのか。ならば」

 ようやく胸から離れたと思えば、唇はそのまま下へ滑り、保科様の手は俺の硬くなった部分を握った。頭が脚のあいだに降りる。

  「や、あぁっ! ん、んんッ、ほしな……さま……!」

 食事中でさえ音を立てない保科様が、じゅぶ、ぐちゅり、と卑猥な音を立てながら俺のものを口に含んでいる…… こんなの、もう。
  「ん、ンン、出ちゃう。もう出ちゃうから、離して……! あっ……!」

 体が大きく波打ち、腰骨が高く上がって、保科様の中へと吐き出される俺の熱。保科様の一部となり、ずっと傍にいたいと願った俺の欲の塊。
 保科様はそれを、ごくり、と呑み込んだ。

  「やはり青いな」
 クスッと笑い、顔を上げると、盆に用意されていた白湯を飲んだ。

  「も……やだ……こんなの……しないで下さい。保科様が汚れちゃう」
 快感なのか恥ずかしいのか、自分でもわからない感情がごちゃ混ぜ。涙なんか滲んでしまう。

  「汚れないよ。それより、これで口吸いはしても良いか?」
 生真面目に聞いてくれる保科様が愛しくて、その首を引き寄せ、ちゅ、とキスをした。

  「たくさんします。でもそれはあとで。今は……」
 俺も顔を下げて、保科様の大きく張りつめたものに口を運ぶ。

  「……っ、悠理、よしなさい」

  「どうして? 俺も保科様に気持ち悦くなって欲しい。ン……っ」
 肉張った先端から、くびれを伸ばすように口の中に迎え入れた。


 保科様のは大きくて、全ては口に入り切らないけれど、中間までを飲み込み、顎や頬の粘膜にすり付ける。やり方はよくわからない。でも、俺が感じるところを保科様にも。
 
  「ああ……悠理……我を忘れそうだ……」
 は、は、と息を吐きながら切なく言われると、もっともっとしたくなる。

 保科様の根本をしっかり握って離さない。裏の縫い目も、浮き出た血管も、すべてが愛おしい。愛しくて愛しくて、したたった蜜は初めての味だけど、俺には凄く甘くて、ご褒美みたい。
 俺は夢中になって保科様を頬張った。

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