生きる希望を失った青年は伯爵様の娼夫として寵愛されている

カミヤルイ

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おれの仕事②

 その後また湯浴みがあって、昨日よりさらに丁寧に磨かれた気がした。湯浴み後に高級そうなオイルまで塗ってもらい、アバラと腰骨が浮いた痩せっぽっちの身体には変わりないけれど、肌がツヤツヤのツルツルになって、自分でも触り心地がいい。

「お召し物はこちらです。さ、腕をお通しください」 
「えっ? これ、ですか?」

 思わず顔が赤くなる。
 メイドさんが着せてくれようとしているのは、虹色に光る綺麗な生地でも肌が透けてしまうような、とても薄いガウンだ。
 変な言い方だけれど、卑猥な感じがする。裸の方がいっそマシな気さえしてくるもの。

「そうです」

 けれどメイドさんは平然としている。貴族はこういった寝衣も着るものなのだろうか。でもおれは使用人のひとりだし、リューク様がこんなガウンを着るとは思えない。そりゃあリューク様ならこれを着ても美しいのだろうけれど……。

「ユアル様?」
「あっ、はいっ」

 ボンヤリしていて我にかえった拍子に、腕を通してしまった。
 おれ、今なんてことを想像していたのだろう。
 裸のリューク様を想像するなんて……リューク様は背が高くて脚も長い。上半身も、服を着ていても引き締まっているのがわかる。おれとは違って男らしい体躯なんだろう。

 そして、十八歳になっても成長が悪いおれの身体みたいに、まだ子どもみたいななわけないし……きっともたくましいんだろうな。

「ユアル様、ご用意ができました。お部屋へご案内します」
 
 再び想像の中へ潜っていたおれは、頭をブンブンと振った。

「は、はい。あ、でも部屋ならもう場所を覚えたのでひとりで大丈夫です」
「いいえ、あちらは客間ですので、今夜からは正しいお部屋にお入り頂きます」 
「ああ、なるほど。そうですよね」

 おれは使用人なんだもの。あんな豪華な部屋に居続けていいわけがない。

 でもおれが使わせてもらう使用人部屋って相部屋なんじゃないかなぁ。この寝衣で本当に大丈夫なのかな……。肌が妙に光って見えるし、ち……乳首や下の毛の色が濃く出るような気がして、やっぱり卑猥に感じるんだけれど……。

 心配していると、メイドさんはもう一枚、テカテカした生地の紫のガウンを羽織らせてくれた。これなら廊下を歩くのに恥ずかしくない。

 おれはメイドさんの後ろに付いて歩いた。メイドさんは上の階へ上の階へと登っていく。

 昼に城内を案内してもらったとき、使用人部屋は別棟の一階だと覚えたけれど、上にもあるんだろうか。

「こちらです」

 指を揃えた手が向けられたのは、最上階の立派な浮き彫り扉の前だった。
 この城内はどこもかしこも豪奢だけれど、その中でもこの階の豪奢さは、別格に思えた。

「失礼いたします。ユアル様をお連れしました」

 行儀悪くキョロキョロしている間に、メイドさんは扉についた獅子の顔型のノッカーを叩いた。

 えっ、もしかしてもしかして。

「ああ、中へ」

 リューク様の声。

 ……やっぱり。ここはリューク様の部屋なんだ。いや、この広い最上階すべてが、当主のリューク様のプライベートスペースに違いない。
 だけど、どうしてそこへおれが? おやすみなさいのご挨拶?

 メイドさんが両開きのドアの片側を開ける。自分は入らずにおれだけを促す。
 おれは戸惑いながらも、羽織ったガウンの前をしっかり合わせて足を進めた。

「ユアル、待っていたぞ」
「リューク様……」

 入った途端にリューク様の甘い甘い香りがしてクラっとした。

「おや、大丈夫か?」

 リューク様が腕を伸ばし、おれを胸へと寄せて支えてくれた。

 リューク様はおれとは違ってブルーのシルクガウンをしっかりと着ている。それでも肌の温かみと筋肉の隆起、そして衣擦れによりふわっと漂う香りを感じて、身体が熱くなった。

 夕食、たくさん食べたのに、ケーキの血肉を感じてこうなってしまうのか……おれがフォークなばかりに。

「すみません」

 恥ずかしくて情けない。足の力が抜けて、寄りかからないと立っていられない。

「謝るな。愛らしくて良い」

 リューク様がおれの背を撫で、その手がお尻の丸みにもすべった。

「あっ……」

 なに、これ。ぞくぞくっとして、全身の力が抜けてしまう……!

 そう思った瞬間、横抱きにかかえられた。

「ひゃ……リューク様?」 

 反射的にリューク様の首に腕を回してしがみついてしまう。

「やはり軽すぎるな」

 くすりと笑うリューク様。
 そのままおれを軽々とベッドに運び、昨夜寝かせてもらったのよりもずっと大きく豪華な細工柱のベッドに横たえる。

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