生きる希望を失った青年は伯爵様の娼夫として寵愛されている

カミヤルイ

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おれにあたえられた本当の仕事

「あの、あの……?」

 どうしておれがリューク様のベッドに? おやすみなさいの挨拶に連れて来られたんじゃなかったの? 

「おやすみの挨拶は必ずしよう」 

 あ……リューク様はやっぱりおれの考えをお見通しだ。でもこの姿勢で、リューク様のベッドの上では失礼だろう。いつの間にかメイドさんはいなくなっているけれど、メイドさんはご挨拶をしないんだろうか。

「ユアル」
「はい」
「おやすみの挨拶も、おはようの挨拶も毎日ここでするんだ」

 リューク様の手がおれの紫のガウンにかかる。器用に腕の片側をするりと脱がされて、透ける寝衣姿を見られてしまう。

「あっ、あの。それはどういう意味で……」 
「私がいるときは必ず私のそばにいると約束しただろう?」
「それは、そうですけど、でも」

 両腕で前を隠そうとするも腕を取られてしまった。まじまじと身体を見られている。

 ……恥ずかしい!

「肌を赤に染めて、本当に愛らしいな。わかっていたがユアルはまだ交わりを知らないようで嬉しいよ」

 交わり? それって、それって、もしかして。

「ユアル、これからの君の仕事は私に愛されることだ。早く身体を整えて、私を受け入れる準備をしなさい。そのときが来たら、本当の意味で愛を注ごう」

 ……ああ、そういうことか。リューク様はおれに身体を差し出せと言っているんだ。

 貴族は一八歳から二十歳までの男を慰みものにするのがひとつのステータスだと聞いたことがある。
 昔働いていた食堂のお客さんに、ユアルは男好きする雰囲気があるから夜道に気をつけろよ、と、肩を抱かれたこともあれば、夜道で立っていると、舌なめずりをして目をギラギラさせた男の人に「いくらだ」と聞かれたこともある。

 そっかぁ……だからリューク様はおれを拾ったんだ。ちょうどケーキとフォークだから、唾液や血を与えてやれば大人しく従うと思ったんだろう。

 リューク様は素晴らしい領主様だけれど、やっぱりただの男の人なんだ。
 だから簡単に「愛らしい」なんて言うし、こんな卑猥な寝衣を着せてそばにいなさいと言うんだ。

「んっ……!」

 唇が重なる。大きな手が寝衣の上から肌を撫でる。
 親鳥が小鳥を慈しむような優しい触れ方、啄み方。
 背筋がぞくそくとして、肌が粟立つ。もっと触れてほしいと思ってしまう。これが「そういう行為」のときの触れ方なんだ。

 しだいに唇の合わさりは深くなり、腕に身体を包まれる。
 脚を割られ、リューク様の体温と重みが身体にかかった。

「ふ、ぁ……ん、んっ」

 リューク様のたくましい体躯と温かい体温、ケーキが持つ甘い匂いと味に思考が流されていく。身体がひとりでに反応し、下半身に熱が集まっていく。

 悲しい。生き延びても、結局はこんな生き方しかできない自分の第二性が悲しい。

 なのに、ケーキの味が染み込むほどにおれの意識は快楽に流されていく。

 おれは悲しみなのか快楽なのか、自分でもわからない涙を流しながら、犬が甘えるような声でリューク様の名を呼び続け、キスに応えていた。
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