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視線
視線に気づかない攻め×視線に気づいてもらえない受け③
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朝目覚めて家に帰らなきゃと思い荷物を持とうとした。
「あれ、ない?」
どこに置いたんだろう。そう言えば、おばあさんを助けたときから持っていなかったような。
僕って本当にどうしようもない愚図で馬鹿だ。
卒業式に間に合わず、向日葵を駄目にして、告白もできずに、鞄もなくして。
結局ここにいることさえ気付いてもらえずに…。
「帰ろう」
帰り道をとぼとぼ歩く。
「あ…」
すると、昨日おばあさんを助けた交差点に着いた。朝だから人がたくさんいる。
「ねえ知ってる?昨日ここで大きな事故があったって」
「ああ、高校生の男の子が高齢の女性を助けてトラックに引かれたってね」
…え?
「季節はずれの向日葵の花束を持っていたみたいで、その子の周りにそれが散ってたって…ほら、ここよ」
「きゃ、生々しいわね」
…え? 横断歩道の真ん中に、事故があった様子を思わせるタイヤの跡と赤黒い跡、そして、片付けきれていないひまわりの花びらが。
事故? それは僕のこと? ……僕が事故? じゃあ僕は……。
悪寒がしてぶるっと震えた。はっと気付くと、通行人の人が僕の体を通り抜けて進んでいく。
うそっ……僕、霊体になってるの!?
「誰か、誰か…僕が見える人はいませんか!」
でも、誰も返事をしてくれなくて、僕は横断歩道の真ん中で、人や車に何度も体をすり抜けられながら、呆然としていた。
それからどれくらいたったのか、横断歩道の上で崩れていると、攻め君の姿を見つけた。
攻め君は私服で、昨日後輩ちゃんからもらった向日葵だろう。花束にしたそれを大事そうに持っていた。そして、横断歩道を足早に過ぎて僕の横も通り過ぎた。
「攻め君っ!」
僕は必死で彼に呼びかける。
気付いて、お願い。僕ね、君が好きだった。君に想いが届くまでは天に昇りたくない。お願い気付いて。
攻め君、君が好きだ。攻め君。ずっと君を見ていたんだ。攻め君っ…!
けれど届かない。攻め君の視線には映らない。
僕は結局、攻め君に一度も顔を見てもらえることはなかった。
けれど行く宛もないので、無意識に攻め君の後に付いていっていた。
これではもうストーカーではなく浮遊霊だ。このまま攻め君に取り付く悪霊になったらどうしよう。
でも、それも幸せなのかな。ずっと彼のそばにいられる。
あれ?病院?ひまわりの花を持った攻め君は誰の所に行くのだろう。
……あ、あれ? お母さん?
攻め君がノックしたドアを開けると顔を見せたのは、疲れた顔で涙を流すお母さんだった。
ということは、もしかしてここに僕の死体が?
僕は急いで病室に入った。
「あれ、ない?」
どこに置いたんだろう。そう言えば、おばあさんを助けたときから持っていなかったような。
僕って本当にどうしようもない愚図で馬鹿だ。
卒業式に間に合わず、向日葵を駄目にして、告白もできずに、鞄もなくして。
結局ここにいることさえ気付いてもらえずに…。
「帰ろう」
帰り道をとぼとぼ歩く。
「あ…」
すると、昨日おばあさんを助けた交差点に着いた。朝だから人がたくさんいる。
「ねえ知ってる?昨日ここで大きな事故があったって」
「ああ、高校生の男の子が高齢の女性を助けてトラックに引かれたってね」
…え?
「季節はずれの向日葵の花束を持っていたみたいで、その子の周りにそれが散ってたって…ほら、ここよ」
「きゃ、生々しいわね」
…え? 横断歩道の真ん中に、事故があった様子を思わせるタイヤの跡と赤黒い跡、そして、片付けきれていないひまわりの花びらが。
事故? それは僕のこと? ……僕が事故? じゃあ僕は……。
悪寒がしてぶるっと震えた。はっと気付くと、通行人の人が僕の体を通り抜けて進んでいく。
うそっ……僕、霊体になってるの!?
「誰か、誰か…僕が見える人はいませんか!」
でも、誰も返事をしてくれなくて、僕は横断歩道の真ん中で、人や車に何度も体をすり抜けられながら、呆然としていた。
それからどれくらいたったのか、横断歩道の上で崩れていると、攻め君の姿を見つけた。
攻め君は私服で、昨日後輩ちゃんからもらった向日葵だろう。花束にしたそれを大事そうに持っていた。そして、横断歩道を足早に過ぎて僕の横も通り過ぎた。
「攻め君っ!」
僕は必死で彼に呼びかける。
気付いて、お願い。僕ね、君が好きだった。君に想いが届くまでは天に昇りたくない。お願い気付いて。
攻め君、君が好きだ。攻め君。ずっと君を見ていたんだ。攻め君っ…!
けれど届かない。攻め君の視線には映らない。
僕は結局、攻め君に一度も顔を見てもらえることはなかった。
けれど行く宛もないので、無意識に攻め君の後に付いていっていた。
これではもうストーカーではなく浮遊霊だ。このまま攻め君に取り付く悪霊になったらどうしよう。
でも、それも幸せなのかな。ずっと彼のそばにいられる。
あれ?病院?ひまわりの花を持った攻め君は誰の所に行くのだろう。
……あ、あれ? お母さん?
攻め君がノックしたドアを開けると顔を見せたのは、疲れた顔で涙を流すお母さんだった。
ということは、もしかしてここに僕の死体が?
僕は急いで病室に入った。
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