俺のご主人様がこんなに優しいわけがない

及川まゆら

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淫内感染

絶倫ヤリチン男たちの罠

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 忘れもしないあの日
 凌辱に屈し、焼き払われた俺は青嵐に抱かれて…

 今こんな気持ちで茜の夕空を眺めていることが不思議だ。
 錆びた自転車が軋みながら横を通る
 あのタイヤみたいに俺は転がり続けて、どこへ往くのかもわからない。
 届かない思いに雲の陰り
 もうすぐ夜が来る。激しさの中にある静けさに、俺は佇む。

 「大丈夫。気にせんといてな」
 「…だといいけど」

 梶さんこと隼翔はやとの笑顔に吊られてグラスを傾ける。
 過労に白髪で落ち込む俺を労い「栄養バランスの良いものを」都内レストランで頂く高級フルコースが喉を通らないのは、渚の放つイケメンの気風…店内ざわざわ…芸能人?


 いいえ、渚は現役GV男優。

 
 誰も知らないと思ったら大間違い。
 どこにでもファンが存在する。それも引退した隼翔と揃いのカップルデート(おまけ付き)見る人が見たらバッテリーが切れるまで盗撮されること請け合い。

 「これは想像以上にアレです、ね」
 「いつものことやん。な?」

 頷くだけで言葉にしない渚は穏やかな表情を浮かべる、恐怖。

 「晃汰とはどこまでヤッたの?」

 やはり、そこ…気にして(怒って)ますよね。付き合ってるわけじゃない、セーフで甘いだけの関係をどうやって説明したらいいのか思い悩む。

 「今ここで話す内容じゃない」
 「じゃあ場所を変えるか。時間の許す限り、尋問してやる」
 「待って、怒ってる?」
 「当たり前だ。お前にとって人の不幸は蜜の味か?」
 「昌ちゃん知らんから、もうやめぇ…」
 「失恋に浸け込んで寝取るなんて、どんな神経しているんだ」

 胸が揺さぶられる、慟哭。

 失恋?そんなこと俺は聞いてない。
 思い返してもそんなことを晃汰は一度も言ってなかった、けど俺が知らないだけで彼氏がいるのか。
 隣の隼翔から差し出されたスマホの画面を目で追いかけるとそこには俺の知られざる事情が綴られていた。
 そうだ、初めて会った時…
 指輪の痕をみつけた俺は晃汰に既婚者なのか質問した先で
 「好きな人はいる。けど暫く会ってない」
 そう言ったきり、今まで一度も自分から切り出すことは無かった。

 なぜ、会えないのか
 答えを言える筈もない。




 もう、生きて無いのだから。




 ググれカスとは、この事で…
 海外の有名なモデルが晃汰の彼氏
 ここでは名前を伏せる。去年、現地で起きた震災の犠牲となり遺体がみつかったのは半年後。それまでの間、ずっと祈る思いを綴った頁をまとめサイトで読み上げ、涙が止まらない。
 自分が一番辛いだろうに多くのファンと家族に励ましの言葉を贈り続け、今に繋いでいる。
 未来への渇望
 それは痛いほどよく解かる。
 俺も…手が届かない想いをずっと、胸に秘めているから…
 個人サイトには俺と出会った日
 いつも通りに過ごしている様子が投稿されていた。それは晃汰が大勢に見せていかなければならない姿であり、肌を合わせている間も消えない愛に喘ぎ、罪に涙していたとしたら…俺が寝取ったと疑われても仕方ない。
 いつものように連絡が来て、スマホの画面が光る度に心が塞ぐ。
 急に態度が変わったら…
 不自然だよな。今は俺にできる精一杯を返そう。

 「体調が悪くて寝てた。何かあった?」
 「大丈夫?」
 「俺の頭っていつから白かったの…気持ち悪くない?」
 「染めてると思ってた」
 「皆それ言うけど一過性のストレス症状だって」
 「え…ごめん俺、何かした?」

 その口調、同じなんだよ。
 すぐ自分に置き換えて
 謝ってから躊躇いがちに言葉を結ぶところも全部…
 俺は、どうかしてる。
 玲音の変わりはいないのに、寂しくて、晃汰の優しさに甘えてた。

 「今どこに居るの」
 「もう会えない」
 「どうしたの急に、ちゃんと話そう?」
 「彼氏の事…知らなくて…ごめん」
 「あぁ…知ってたんだ」

 互いに途切れる言葉
 何を言われるか胸が張り裂けそうで、止め処なく流れる涙をそのままに…
 震える手で口を押える。
 
 「そっか…いや、遊びでも僕はよかったんだけどね」
 「そんなつもりは…」
 「これで終わりってことでいい?」

 引き留めようとする言葉が出かかる。
 だめだ。そんな都合のいいことを言えるだけ度胸のない俺は責任を感じて、晃汰の言葉に撃ち抜かれた。
 誰かと別れる度に自分を責めて、結果それが答えになる。
 ヤバいな…これは仕事に支障が出る。
 忙しければ忘れる、と思ったんだが…裏目に出た。
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