俺のご主人様がこんなに優しいわけがない

及川まゆら

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淫内感染

悲報!年上の奴隷に種付けプレスされる童貞

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 晃汰に会いたい。
 怖気づいてあれっきりになってしまったけど…
 寂しいから抱いてくれって弱いとこ、全部見せてもいい。
 酷い言葉を聞かされたら…
 わかりきったことだ、裏切られても、それもまた人の道。
 明日の希望は自分にしか繋げない
 俺はそれを望んでやまない、バカだから。ごめん。


 「遅れてごめん、待った?」 か、可愛い(キュン…)!!


 久しぶりに会う晃汰は整ったラウンド髭もベビーフェイスも全部変わらない。
 落ち込んでいたのは俺だけ?
 2週間も顔合わせてないと恥ずかしくて…
 やっぱりこの顔ど直球で好きだ。
 物事の柔らかさ、その中にも凛とした男気がある理想の男。
 そうか、俺には無いものを晃汰は全部持っているんだな。

 「電話切ってそれっきりだったから…」
 「えー!らしくないよ。やめて」

 明るい声で冗談を言ってくれる優しさが胸に刺さる。

 「謝りたかったんだ。それで、後悔している事があって…」
 「あぁ…うん」
 「晃汰には同じこと繰り返したくない」
 「じゃあさ、僕の恋人のこと話していい?」

 悪戯っぽく笑う晃汰の顔に、迷いは無かった。

 ◇

 恋人と出会ったのは2年前。
 旅行先で出会った年下の彼は、仕事のパートナーとしても共演。
 いろんなことを二人でして
 初めてのことも多かったけど毎日が楽しくて、幸せだった。
 いつもと変わらない毎日がずっと続くんだと思った矢先に震災が起きたことを速報で知り、安否確認が取れない間ずっと「生きてる」と家族一丸となって信じていたけど解体された建物から発見された彼は見る影もなく、どうして一緒に居られなかったのか?幾ら考えても答えはみつからなくて今も、彼の死を受け入れられない。

 辛いのは僕だけじゃない。

 隔たりのある世界で生きる息子を決してよくは思ってなかった彼の両親と、いろんな意見が重なる現実に僕が打ちひしがれている場合じゃない。突然命を奪われてしまった、僕の最愛の人が生きていた証人となって多くの人に伝えていくこと。
 それは僕にしか出来ない。
 彼はいつまでも僕の心の中で生きてるよ。
 寂しくなんかない。
 会いたくなったら…僕にくれた、たくさんの笑顔を思い出すから。
 時が経てば、また会える。僕のことを見守っていてね。

 晃汰の優しい言葉を胸に刻みながら
 俺はどうだろう。生きていれば会える夢追い人に過ぎない。

 「僕もう、口もきいて貰えないと思っていたんだよ?」
 「そんな…俺も会いたかったけど言い出せなくて」
 「あるよね。タイミングて、大事」
 声を潜めて顔を寄せて来る晃汰を、避けてしまう。
 あ…嫌じゃないけどそんな気になれなくて。また謝る。
 仲直りができたとは思ってない。だけど気が晴れたのは確かなことで後日、塚口に誘われ築地にある料亭へ向かった。

 ◇
 
 「ご契約のお祝いに」

 完全に内祝いで済む話、コイツどんだけ俺を買い被っているんだ。
 作法は知らないが畳の縁を踏まないように進む先で、ふと…朱に金糸の掛布団が目に飛び込んできた。絶句。

 「ああ、ご用意させて頂きました。昌宗まさむね様がお望みとあらば…」
 「料金は別途で、命の保証はありません」
 「いいですね!あと20歳若ければ挑んでいました」

 豪快に笑う貫禄に押されつつ、席に着く。
 この爺に正体を見抜かれていることを悟った。
 あくまでも客
 これは商談…営業スマイル…笑え、笑っとけ。あはは。

 「ご承諾はサインで構いません」
 
 腕を伸ばして書類を突き出す。
 どうも俺は狭い空間で一対一になると闘ってしまう性質がある。
 人生において虐められる立場にあった俺だが今にして思えば、この気質が相手を感情的にさせ、駆り立てていたのだろう。
 隷属は皆、S(サディスト)先天的な才覚があり、日常では危機管理能力として潜在意識に重い扉と鍵をかけている。
 誰にも知られたくない
 この中は安全で、誰にも迷惑をかけないのに…
 あの男、歌舞伎青嵐かぶきせいらんは土足で踏み込んでくる。目の前にいる爺も同じだ。

 うんざり、だ。
 宇宙から落ちて来る火球が当たって、燃えて、死ねばいいのに…

 書面を確認してバッグにしまうと料理が運ばれてきた。
 最初から手を付ける気はないが、俺の好みが知りたいと手を組む塚口の真剣な眼差しに撃たれる。

 「私のプライベートを知る必要性をお聞かせ願いたい」
 「貴方をお慕い申しております」
 「なるほど」
 「男であれば強い者に惹かれるのは当然かと」
 「私にその気はありません」

 俺の一言に情熱の灯が揺らぐか
 試してみるけど、気のいい笑みを浮かべて魚を突く。

 「正直いいますと、昌宗様が歌舞伎青嵐のお弟子さんだと聞いた時は心が躍りました。彼は本当に実在するのか?私には知る手立てもありません。でも、昌宗様と悦楽を重ねて確信しました。伝統を重んじ、確かな技術を継承する若者がいる。生きているうちにそれが見れただけで、私は幸運だ」

 仕事を褒めて貰えるのは有難いが、継承は言い過ぎだろ。
 実力のある奴隷たちは腐るほど居て、今この瞬間も、愛に生きている。
 俺はその中のたった一粒・・・・・に過ぎない。
 青嵐に認められたわけではない。
 見染められたんだよ。トイレで抱きしめられて…あれさえ無ければ普通に就職して男を好きになることも無かった。思い返すほどに業腹。どんなに心辛くとも青嵐には絶対に頼らない、褒められても所詮は他人事。
 それが俺の信条だ。

 「私の命ある限り、お仕え致します」
 「お気持ちだけは有難く受け取ります。これは私の主観ですが、人生は等価交換です。世話になるならそれなりの事を相手に返すのが通り…ですから、私の人生に塚口様が必要になる事は万に一つもありません」
 「なるほど、正しくはそうなりますね」
 「もし塚口様の助けが必要になった時はご覚悟を、宜しいですか」
 「はい、喜んで。ああ、本当に…良い眼をなさる」

 真性Mという生き物の肉体を厳しく痛めつけいさめる事はできても精神的に追い込んでやり抜くには、絶対的な主従関係が必要だ。この爺にとって俺の言葉は耳に涼しい。いっそ抱き尽くして貶めてやろうか悪巧みする姿にでさえ、称賛の言葉が溢れて来る。
 そのうち飽きて、俺の方が捨てられるかもな?
 奴隷契約は主人と奴隷が想い合わなければ、破綻する。
 こちらが見限られる可能性もあり、優良物件は果てない競争社会だ。
 
 「昌宗様だけなんです」

 酒を一口で飲み込んだ塚口は機嫌を良くして言ってきた。

 「完全プレイで性愛を決して持ち込まないのは…」
 「肉体の関係を用いるのは、私の落ち度です」
 「物足りなさは感じませんか?」
 「いいえ、仕事ですから」
 「貴方に導かれるお相手が、羨ましい」

 テメェとは比べ物にならないイケメンと爆発しているので、とは言わないが極上の笑みで返すと言葉が止んだ。そして、少しだけ雰囲気が張り詰める。

 「失礼、嫉妬からです。恋煩いですな」
 「今日のところはこれで失礼致します」

 最期は見ないで別れを告げる。
 ああ、なんだろう…
 無垢な人に慕われて嬉しい筈なのに、大事なものをただ奪われて腹が立つ疲労感。コンビニで買った栄養ドリンクの瓶をまっすぐ振り上げ、鋭気を養う。
 ファイト一発!
 不謹慎だが、今すぐやりたくて仕方ない。
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