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黎明叙情録
5/恐れ入谷の鬼仔菩仁
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私からあなたへ
この広い世界にたった一人の私の好きな…あなた、の呼び名にはっとする俺は「すまない…」言いかけて振り返る。そこに小夜子の姿があって胸を撫で下ろした。
「どうしました?」
「最近、姿が見えなかったので」
小夜子は一人きりで、初めてのお産から始末をこなし血に染まる我が子に何度目かの授乳をしていた。咳き込みながら乳房に吸い付く、その様子をじっとみつめる小夜子は「男の子でよかった…」そっと呟く。
「本当に女児なら、君は死んでいたの?」
「そうよ。自分が生まれた時の事をよく覚えています」
「夜巫女とは不思議な者だね…ああ、それは?」
「一馨からお祝いよ。この子が元気に育ちますように…て」
コンコンと咳き込む生まれたばかりの柔らかな肉は文字通り、赤ちゃん。
御印と呼ばれる青痣は俺の遺伝である証拠。首から下の上半身にかけて斑に広がり、左手が真っ青だ。これでは長く生きられないだろう。
「可愛らしいお顔、貴方にそっくりね」
「痣だらけじゃないか。これじゃ表に出たって俺と同じで…」
「青い御印は竜跳虎臥…そうだ、この子の名前…劉がいいわ。貴方から一文字いただいて劉青はどうかしら」
「親の一字を取るなんて不吉だよ」
「あら、私はお母様と同じ名前よ。不吉だと仰るの?」
「名前は何でもいいから。乱暴だけはしないで、約束だよ」
外が騒がしい、きっと子の性別が気になるのだろう。
夜巫女は女児であれば命を差し替えて生まれ変わる御霊寄という術を使う。出産は儀式として一人で行われ、男児であれば本家の継承者に名を連ねる。十月と経たず、齢16に満たない小夜子から生み落とされた劉青は祖父いづるから祝福を受ける一方で、長男・一馨から恐ろしい呪いを掛けられてしまう。
不死の妙薬という
毒薬を与えられていた。
黒木家は父・いづる、母・小夜子の間に息子がふたり
長男・一馨
次男・三頼
長女・小夜子
もうひとりの男児は死亡、次に生まれた三頼は先天性の神経疾患があり重度の機能低下症を患っている。
小夜子が生まれてすぐ母親は死亡。
いづるは亡き妻の生写しである娘から一馨から遠ざける様にして離れで育て、遊び相手に選ばれたのが養子の双子だった。
赤い顔で咳き込む劉青を眺める双子を見て、乳房を露にする小夜子は誓う。
「この子は死なせないわ。だって青之郎だもの」
強張った表情で忠興の袖を引く。
もう誰も、俺を知恵遅れとは言わない。
声の出し方や行儀作用、文字の読み書きも全部、忠興に教えられ学校にも行けるようになった。小夜子と3人これからもずっと一緒に居れると思っていたのに…
小夜子が妊娠した時から
俺たちの運命は変わってしまった。
でも、忠興は…ずっと…最初からそうだったと、走馬灯に飲み込まれる。
◇
忘れもしない2歳の頃
暑くて暗い部屋で、来る日も来る日も、機嫌の悪いオンナは大きな声で…
俺だけを蹴手繰る。
最後は決まって台所の下に放り投げられ、乱暴に扉を閉めたら外から塞がれて狭くて臭いここから出ることは許されない。痛みと飢えから、冷たい水道管に涼を求めて短い舌を伸ばす。
俺を見つめる"あの子"は、温かな食事を美味しそうに食べて、いつも綺麗な服を着ていた。テープで塞がれた扉の向こうは楽しそうな笑い声と絵に描いたような幸せがいつも起きてるのに、俺は閉じ込められた狭い空間で暴力と飢えに苦しむ日々。
俺には名前が無い「蛆虫」のうじと呼ばれる虫程にもないちっぽけな命をやっとの思いで繋げてきた。
ある日、息もできない腹痛と耳の痒さに襲われた猛暑の出来事。
見た事もない大きなオトコが部屋のドアを壊して、俺は初めて"あの子"が何をしているのか、そしてこれから自分の身に何が起きるのかを知る。
乱暴に、
ただ乱暴に…
口にそれを押し込まれては液体を飲み込む。
ごはんじゃない
初めて食べる…変…な味の…あの子が泣いてる「許して、もうやめてお願いだから。何でも言うこと聞くから」と狂ったように暴れているのを押さえつけられ、膨れた紙おむつを脱がされお尻を掴まれると体が下から割れるような激痛に吐き戻す。
両足は宙を藻掻き、体は黒い影に押し潰されて最初しか声が出なかった。
断続的に押し込められる勢いのままに、まっ赤なあぶくが…ぽたぽた…喉から下に落ちる。
不思議な気持ちだった
ずっと、ずぅ…っと…してるうちに近くのオトコの顔が大きく歪んだり、周りの景色がゆっくりとだけど音だけは速く聞こえて、警察のおじさん達が上着を脱いで俺を包んでくれた。
ふわりと体が浮いて、さっきよりもいい気持ち。
きっといい子にしていたから神様が助けてくれたんだ。誰かあの子に伝えて。
――――…しあわせに…なって そして、拙い息は切れた。
8月9日、午前3時12分
出生届が提出されてない無戸籍児の俺は、母親の虐待により死亡。
加害者の男性は薬物取締法で現行犯逮捕。組織的な違法グループが関与したとみて捜査している…とあったが、明け方に病院から連れ出された俺は大きなお屋敷であの子と再会する。
「うじ!よかった無事だったんだね」
あの子の瞳は昼間の空に浮かぶ花火のようで、例えようもない感情が押し寄せた。
「あれか…どれ、こちらにおいで。顔を見せてごらん」
煙を吹く白髪頭のオトコに呼ばれると隣の千鶴子に受け渡された俺は顔を覗き込まれ「はははっ上玉じゃないか。そっちはどうだ」上機嫌で品定めをする。男の名前は黒鬼いづる、泣く子も黙る関東随一の親分でひとり娘の遊び相手を探していると髭を撫でていた。
奥の間から黒髪のお人形みたいな女の子が顔を覗かせて、千鶴子を手招く。
「すぐにお医者様を」
「はい、お嬢様」
「動かさないで!病むわ…早く…苦しい」
「申し訳ございません」
ひとり娘の黒鬼小夜子の命令は絶対を誇る、神託であり、未来を予知する偽りのない真言として崇められている。
俺の痛みも逐一解ることから疾患を含む大きな手術を受け、何度も縫い合わせながら、半年後には走って遊べるようになった。
「なぁ小夜…考え直してはくれないか」
「あれは番の小鳥よ。いいじゃない私は弟が欲しいの」
「成りは女だがありゃ男だ」
「お父様も男だったら勝負に御出で下さいませ」
「ははは。連れない女だな、お前って奴は」
いづるは小夜子に頭が上がらない。
夜巫女の能力を齢2歳にして開花させた正妻の忘れ形見が、さぞや愛しいのだろう。元気になった俺は小夜子の遊び相手としてお飯事をしたり、草を編んで水に浮かべて数え唄らい、晩秋の夜にあの子から突然の別れを告げられた。
「うじ、いい子にするんだよ」
「…ぁ…あいっ」
「いつか必ず迎えに来るから、それまで生きて。約束だよ」
返事をするのがやっとな俺は堅く結ばれた手と手が震えて離れがたい様子に、何度も返事を繰り返しているとあの子がわっと泣き出して小夜子がそっと慰めていた。
いづるの伝手で酒問屋から養子の話が来た。
あの子の瞳の色を気に入ったらしい、明日には上越の山の中だという。
「ごめんなさい、あなた達を守ってあげられなくて」
「絶対に許さない。お前も、あの男も…」
「恨むなら私を恨みなさい」
朝になってあの子が泣き腫らした顔でお屋敷を出た。
何度も、
何度も、
悲しそうなあの瞳で振り返る、最期まで。
夜になっても帰らないのが寂しくて千鶴子の布団の方に入って泣いた。わからない、わからないけど胸が苦しくてしょっぱい涙がどんどん溢れ出る。いくら泣いても帰らないあの子が恋しい季節が流れ、4度目のお正月を終えた白銀濤の暮れに、あの子は山伏を連れて里に下りて来た。
その姿は―鬼に弁天―後世まで伝えられる、恐ろしい悪魔の所業。
この広い世界にたった一人の私の好きな…あなた、の呼び名にはっとする俺は「すまない…」言いかけて振り返る。そこに小夜子の姿があって胸を撫で下ろした。
「どうしました?」
「最近、姿が見えなかったので」
小夜子は一人きりで、初めてのお産から始末をこなし血に染まる我が子に何度目かの授乳をしていた。咳き込みながら乳房に吸い付く、その様子をじっとみつめる小夜子は「男の子でよかった…」そっと呟く。
「本当に女児なら、君は死んでいたの?」
「そうよ。自分が生まれた時の事をよく覚えています」
「夜巫女とは不思議な者だね…ああ、それは?」
「一馨からお祝いよ。この子が元気に育ちますように…て」
コンコンと咳き込む生まれたばかりの柔らかな肉は文字通り、赤ちゃん。
御印と呼ばれる青痣は俺の遺伝である証拠。首から下の上半身にかけて斑に広がり、左手が真っ青だ。これでは長く生きられないだろう。
「可愛らしいお顔、貴方にそっくりね」
「痣だらけじゃないか。これじゃ表に出たって俺と同じで…」
「青い御印は竜跳虎臥…そうだ、この子の名前…劉がいいわ。貴方から一文字いただいて劉青はどうかしら」
「親の一字を取るなんて不吉だよ」
「あら、私はお母様と同じ名前よ。不吉だと仰るの?」
「名前は何でもいいから。乱暴だけはしないで、約束だよ」
外が騒がしい、きっと子の性別が気になるのだろう。
夜巫女は女児であれば命を差し替えて生まれ変わる御霊寄という術を使う。出産は儀式として一人で行われ、男児であれば本家の継承者に名を連ねる。十月と経たず、齢16に満たない小夜子から生み落とされた劉青は祖父いづるから祝福を受ける一方で、長男・一馨から恐ろしい呪いを掛けられてしまう。
不死の妙薬という
毒薬を与えられていた。
黒木家は父・いづる、母・小夜子の間に息子がふたり
長男・一馨
次男・三頼
長女・小夜子
もうひとりの男児は死亡、次に生まれた三頼は先天性の神経疾患があり重度の機能低下症を患っている。
小夜子が生まれてすぐ母親は死亡。
いづるは亡き妻の生写しである娘から一馨から遠ざける様にして離れで育て、遊び相手に選ばれたのが養子の双子だった。
赤い顔で咳き込む劉青を眺める双子を見て、乳房を露にする小夜子は誓う。
「この子は死なせないわ。だって青之郎だもの」
強張った表情で忠興の袖を引く。
もう誰も、俺を知恵遅れとは言わない。
声の出し方や行儀作用、文字の読み書きも全部、忠興に教えられ学校にも行けるようになった。小夜子と3人これからもずっと一緒に居れると思っていたのに…
小夜子が妊娠した時から
俺たちの運命は変わってしまった。
でも、忠興は…ずっと…最初からそうだったと、走馬灯に飲み込まれる。
◇
忘れもしない2歳の頃
暑くて暗い部屋で、来る日も来る日も、機嫌の悪いオンナは大きな声で…
俺だけを蹴手繰る。
最後は決まって台所の下に放り投げられ、乱暴に扉を閉めたら外から塞がれて狭くて臭いここから出ることは許されない。痛みと飢えから、冷たい水道管に涼を求めて短い舌を伸ばす。
俺を見つめる"あの子"は、温かな食事を美味しそうに食べて、いつも綺麗な服を着ていた。テープで塞がれた扉の向こうは楽しそうな笑い声と絵に描いたような幸せがいつも起きてるのに、俺は閉じ込められた狭い空間で暴力と飢えに苦しむ日々。
俺には名前が無い「蛆虫」のうじと呼ばれる虫程にもないちっぽけな命をやっとの思いで繋げてきた。
ある日、息もできない腹痛と耳の痒さに襲われた猛暑の出来事。
見た事もない大きなオトコが部屋のドアを壊して、俺は初めて"あの子"が何をしているのか、そしてこれから自分の身に何が起きるのかを知る。
乱暴に、
ただ乱暴に…
口にそれを押し込まれては液体を飲み込む。
ごはんじゃない
初めて食べる…変…な味の…あの子が泣いてる「許して、もうやめてお願いだから。何でも言うこと聞くから」と狂ったように暴れているのを押さえつけられ、膨れた紙おむつを脱がされお尻を掴まれると体が下から割れるような激痛に吐き戻す。
両足は宙を藻掻き、体は黒い影に押し潰されて最初しか声が出なかった。
断続的に押し込められる勢いのままに、まっ赤なあぶくが…ぽたぽた…喉から下に落ちる。
不思議な気持ちだった
ずっと、ずぅ…っと…してるうちに近くのオトコの顔が大きく歪んだり、周りの景色がゆっくりとだけど音だけは速く聞こえて、警察のおじさん達が上着を脱いで俺を包んでくれた。
ふわりと体が浮いて、さっきよりもいい気持ち。
きっといい子にしていたから神様が助けてくれたんだ。誰かあの子に伝えて。
――――…しあわせに…なって そして、拙い息は切れた。
8月9日、午前3時12分
出生届が提出されてない無戸籍児の俺は、母親の虐待により死亡。
加害者の男性は薬物取締法で現行犯逮捕。組織的な違法グループが関与したとみて捜査している…とあったが、明け方に病院から連れ出された俺は大きなお屋敷であの子と再会する。
「うじ!よかった無事だったんだね」
あの子の瞳は昼間の空に浮かぶ花火のようで、例えようもない感情が押し寄せた。
「あれか…どれ、こちらにおいで。顔を見せてごらん」
煙を吹く白髪頭のオトコに呼ばれると隣の千鶴子に受け渡された俺は顔を覗き込まれ「はははっ上玉じゃないか。そっちはどうだ」上機嫌で品定めをする。男の名前は黒鬼いづる、泣く子も黙る関東随一の親分でひとり娘の遊び相手を探していると髭を撫でていた。
奥の間から黒髪のお人形みたいな女の子が顔を覗かせて、千鶴子を手招く。
「すぐにお医者様を」
「はい、お嬢様」
「動かさないで!病むわ…早く…苦しい」
「申し訳ございません」
ひとり娘の黒鬼小夜子の命令は絶対を誇る、神託であり、未来を予知する偽りのない真言として崇められている。
俺の痛みも逐一解ることから疾患を含む大きな手術を受け、何度も縫い合わせながら、半年後には走って遊べるようになった。
「なぁ小夜…考え直してはくれないか」
「あれは番の小鳥よ。いいじゃない私は弟が欲しいの」
「成りは女だがありゃ男だ」
「お父様も男だったら勝負に御出で下さいませ」
「ははは。連れない女だな、お前って奴は」
いづるは小夜子に頭が上がらない。
夜巫女の能力を齢2歳にして開花させた正妻の忘れ形見が、さぞや愛しいのだろう。元気になった俺は小夜子の遊び相手としてお飯事をしたり、草を編んで水に浮かべて数え唄らい、晩秋の夜にあの子から突然の別れを告げられた。
「うじ、いい子にするんだよ」
「…ぁ…あいっ」
「いつか必ず迎えに来るから、それまで生きて。約束だよ」
返事をするのがやっとな俺は堅く結ばれた手と手が震えて離れがたい様子に、何度も返事を繰り返しているとあの子がわっと泣き出して小夜子がそっと慰めていた。
いづるの伝手で酒問屋から養子の話が来た。
あの子の瞳の色を気に入ったらしい、明日には上越の山の中だという。
「ごめんなさい、あなた達を守ってあげられなくて」
「絶対に許さない。お前も、あの男も…」
「恨むなら私を恨みなさい」
朝になってあの子が泣き腫らした顔でお屋敷を出た。
何度も、
何度も、
悲しそうなあの瞳で振り返る、最期まで。
夜になっても帰らないのが寂しくて千鶴子の布団の方に入って泣いた。わからない、わからないけど胸が苦しくてしょっぱい涙がどんどん溢れ出る。いくら泣いても帰らないあの子が恋しい季節が流れ、4度目のお正月を終えた白銀濤の暮れに、あの子は山伏を連れて里に下りて来た。
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