暗闇坂お伽草紙

其の三の四

②

　光が一面を照らし、ただ一人真っ白で何も見えなくなっていたお可奈。
　光は徐々に薄くなって、お可奈にも光が発せられている中心が渦巻いているのが分かるようにまで見えるようになった。
　その光の渦の中にナナ太郎と思われる人物がうっすらと見えたかと思うと、一人、いや一匹のいたちのような姿をした生き物がその光の渦から、ぽん、とはじかれるように飛び出てきた。
　その生き物は、グッタリとして倒れた。
　「何かしら」
　お可奈は目を凝らして見たが、その何かは光を背にしているのでただ黒い塊がそこにあるように見えた。
　辺りの光が収まり始めると、ナナ太郎の姿がお可奈の目にはっきりと見えるようになっていった。
　お可奈はナナ太郎の無事な姿を見てホッとした。
　ナナ太郎の傍に駆け寄ろうとした時、目の端に何か黒いものが横切った。
　先程の黒い塊、あのグッタリとしていた生き物が、ナナ太郎の姿を見て慌てて逃げて行った姿だった。
　辺りはまた暗い闇となり、ナナ太郎の姿だけがくっきりと浮かび上がる。
　「ナナ太郎さん」
　さすがのお可奈も今回の事態は泣きそうになっていた。
　「さあ、戻りましょう」
　少し疲れているようにも見えるナナ太郎だったが、その口調はいつものように何事もなかったような凛としたものであった。