ちょっぴり奇妙なお話集 

夏実朋可

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残業②

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 アルバイトのその男は浦沢学と言った。
 見た目はちょっぴりラッパー系を取り入れたファッションと茶髪……というよりも金髪に近いくらいの髪の色でフリーター。まさに今時の若者だった。
 どうせ仕事が続くはずは無いと思われてしまうような見た目だったが、その見た目とは裏腹に、そろそろまともな仕事に就きたいと学は考えていた。二十八歳の男子が親元で生活をし、小遣いがなくなったら仕事する。特に大きな夢など無い。毎日楽しければ良いと割り切って過ごしてきたつもりだったが、そんな生活に少しずつ疑問を感じ始め、だらしないのではと思うに至り自分に嫌気が刺してきたのだった。
 この警備会社の仕事を選んだきっかけは、長く続けられるかもしれないと言う予感と、ちょっとした友人の怪談話だった。
 自分に何が出来るか何が向いているか、何を基準に仕事を探したらいいか分からない。ただ長く続けられる仕事と思っていても、どんな仕事が長く続けられるのか分からない。とりあえず、とりあえずだ、とりあえず仕事についてから続けられるかどうか考えてみたっていいじゃないか。
 そんな風に思っていたところ友達のアキオから面白い話を聞いた。
 アキオが言うには、自分がアルバイトに行った先の警備会社では、あるビルの夜勤者が常に人手が足りない。というのもみんなそのビルに出るお化けのせいで辞めていくものが後を絶たないという。だから、いつもアルバイト募集中なのだという。アキオ自身も興味を持って自分も応募してみたのだが、なんとなく怖くて結局は夜勤をしても見回ることが出来なかったというのだ。

 「じゃあ、とどのつまりは本当なのかどうなのかは分からなかったって話じゃない」
 「そう言われちゃうとさ~そうなんだけど」
 「ふ~ん、じゃあ俺が確かめてみるかな?」
 「アルバイトに行くって事?」
 「そうそう」
 「いいんじゃない、常に募集中だし。お前、正社員になりたいんだろ? そこの会社は勤まりそうだったらアルバイトから社員にするって言ってたし」
 「で、どんな化け物が出るって噂なのよ?」
 「気配だよ、気配。音がしているような感じがする。誰かがいるような感じがする。腕を掴まれたような感じがするって事かな」
 「腕掴まれちゃうの?」
 「感じ感じ! ……だけどその人、痣が残ってたって言ってたな」
 「……確かめるっきゃないか」

 これじゃあアキオと一緒だな。確かめるなんて言っておきながら、見回る勇気が出ないぜ。
 興味はあるものの、アルバイトを始めて2週間経っても、いまだ間上が見回りに行くのを警備室で見送り、留守番をしている自分がいた。
 間上は、浦沢学に無理強いはしなかった。
 無理強いして夜警をさせても、怖がってすぐに辞めてしまうだけだ。今までだって無理強いをさせたことは無かったし見回りをさせたことはなかったが、結局は気味が悪いといって去って行った。
 だが…
 この男は違う。
 そんな気がしていた。こいつだったらこの仕事長続きするかもしれない。仕事に対して意欲的だし、何よりも肝が据わっている感じがする。これならやつとも上手くやっていけるかもしれない。そう思っていた。
 様子を見て見回りに連れて行くか。

                               残業③へ続く
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