親友と異世界トリップ

瀬尾

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事情

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 食事を終え、体力面で少し心配だったが、身体を洗うか尋ねると嬉しそうに頷いたので浴室を貸すことになった。

 使い方を軽く教え、服を貸した。着ていた高そうな服は残念ながら穴まで空いていたため捨てることにした。

 リビングの様な所でユキと二人で彼を待った。

 「……リチャード可愛いね。子供が出来たみたい……」

 「俺の気持ちも考えろよ。罪悪感で辛いし、お前は俺を睨みまくるし……、はぁ……」

 ユキはカイトに笑いながら謝った。彼女はカイトのしていた事の意味を分かっていながら、あえてあの態度を取ったのだ。

 「あまりに可愛くてねぇ!」

 先程から同じことしか言っていない。

 カイトは今日何度目かによる溜め息を吐くと、今まで見てきた新聞や本について思い出した。

 「で?カイト様の考えはどうなんですかぁ?」

 ふざけた様に笑い、尋ねてきたユキは、目が驚くほど冷たかった。また溜め息を吐きそうになるのを堪えて、説明を始めた。

 「新聞でも何度か見かけたんだが今の王が高齢でな、跡目争いが過激化してきている。第一王子は酷い暴君だが、第二王子は滅多に公の場に現れない。だいぶ前から国民の中で不安が高まっていた。今回の件、あぁ、ユキは聞いてたか知らないが、数日前にここら辺で休養しに来たリチャードを襲撃した話があったんだが、彼が行方不明になったにも関わらず新聞にすらならなかった。ま、暗殺でも企んだんだろう。失敗した様だが。今も血眼になってリチャードを探しているんじゃないか?第一王子は」

 だいぶ今の説明でユキも状況がわかった様だ。

 「へぇ、そうなの?リチャード」

 カイトは驚いて後ろを向いた。扉が開いて、少し髪の濡れた彼が出てきた。ユキはにっこりと微笑みながら気まずそうにしている彼を見つめていた。

 相変わらず食えないやつだと思った。正直な所、ユキはカイトより腹黒い。気の毒に思いながらこちらに来るリチャードを見つめた。

 「悪いな、勝手に話をして」

 「いや、全て本当のことだ。謝る必要はない。どうして、どうしてそこまで知っていて私に、その、協力しようとしたんだ?」

 ユキはリチャードを座らせ、タオルで髪を拭った。想像通り汚れを取った彼の髪はとても綺麗だ。

 「協力じゃなくてリチャードを私達のご主人様にしたの!別に事情なんて関係ないよ。あなたと一緒に居たかっただけ。だから私達が要らなくなっても引っ付いてるからね!」

 彼を後ろから抱き締めて言った。リチャードや第三者の目からすると朗らかにお花が舞っている様な背景に見えるのだろうが、カイトからすると死神が鎌を持ってリチャードに引っ付いている様に見える。

 「ま、じゃあ話の続きをするか。……リチャードは、どうしたい?」

 「王子様のしがらみから解き放たれて冒険する?それともお兄様に復讐する?何でも言って!叶えられるだけの力を私達は持ってるよ」

 何だかユキの言葉が悪魔の囁きに聞こえ始めたのは俺だけだろうか。

 復讐という言葉に少し身体を震わせたが、目を見ると既にしたい事が決まっている様だった。

 「危険なのは分かってる。ても、私はこの国の人々を兄上には任せられない!彼が王になればきっと多くの人々が苦しみ、亡くなる。……それを見ているだけなんて、耐えられない。いや、……私は、……この国が単に好きなんだ……。今まで育ってきたこの国が、好きだ」

 「兄上には悪いが、私も、この国が欲しい」

 彼の言葉には酷く重みがあった。ぎらぎらとこちらを向く目は確かに上に立つものの貪欲さがあった。まだまだ未熟で足りないものが多いが、其処はカイト達で補える。

 「この国、ほしいの?」

 ユキが静かに聞いた。彼女にも考えがある。

 「欲しい!君達を危険に晒すのは分かっ」

 「危険?俺達にとってはそんな危険なんかじゃ無いさ。見くびってもらっちゃ困る。君が僕にしたのはそんなやわなものじゃないよ」

 「今は見せられ無いけどねぇ。ま、安心してよ。私達がいれば世界征服だって出来るかもよ?」

 ユキは可笑しそうに笑った。

 彼女の言っていることはあながち嘘ではない。

 リチャードは一瞬目を見開き、次いで声を上げて笑った。彼の笑顔を初めて見た。まさに、まるで花が咲いた様な、そんな笑顔だ。

 「はははっ!……っ……ありがとう。頼もしいよ」
 
 
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