親友と異世界トリップ

瀬尾

文字の大きさ
3 / 28

ご主人様

しおりを挟む
 「……、そうですか。俺はカイト、そこにいるのはユキと言います。…………一つ聞いてもいいですか?」

 ユキは少し不思議そうにこちらを見ていた。恐らく彼女は王子の名前何て知らないのだろう。

 彼、リチャードは少し表情を硬くし、こちらを真っ直ぐ見つめた。

 「あなたが言った名前を知らない程俺は世間知らずじゃないし、あなたがその名の人物だと言う証拠が何一つない今、俺はあなたを信じることができないです。何より、なぜあなたが俺たちにその名を明かしたか理解できない以上、出来れば今直ぐにでもここを出ていって頂きたい」

 ユキは小さく声を上げてカイトを見つめたが、今はそれどころではない。カイトの表情を見て何かを察した彼女は静かにその場を見ることに徹したようだ。

 非常に不本意そうな顔をしているが。

 「……確かに、君の言う通りだ。……残念ながら、証拠は何も無い。見ての通り、何も持ち合わせていない。信じてくれと言うことしか、出来ない……」

 彼はそのまま俯いて手を握りしめた。ユキが責めるようにカイトを見た。実は、彼が本物のリチャードである事はある程度予想出来ていた。

 数日前、ここら辺に来ていたという王子が襲撃に遭い。行方不明になっていることは人伝に聞いていたし、彼の服装もそこら辺の貴族でも買えない様なものである事は見れば分かる。

 何より、髪を染める技術のないこの世界で、王族や、その親戚でしかお目にかかれない様な金髪は何より彼の身分を証明していた。

 正直、髪が証拠の様な物なのだが本人はいまいち自身の価値を分かっていない様に思える。

 ふと彼の料理を置いている布団の端に雫が落ちた。ぎょっとし、同時にユキがカイトを蹴った。軽く蹴っているのだろうが呆気なく尻餅をつく形になった。

 「ごめんね!カイト凄い意地悪だったよね!泣かないで!何の話してたのかよく分かんないけど私は信じるから!!」

 顔を両手で挟んで上げさせ、涙を拭う。泣き顔をみたら物凄い罪悪感が襲ってきた。鼻を鳴らしてされるがままになっている彼が異様に母性本能を擽る。

 「っ、本当に、申し訳ない……。料理のお金すら持っていないんだ……。いつか必ず返すからっ、……食べたら出て行」

 「まってまってまって!ダメだよそんな綺麗な顔で辺りを彷徨っちゃまた変なのに捕まっちゃう!!ねぇ!カイト!!さっきからずっと黙ってないで何とか言ってよ!!!」

 一先ず、彼が無害なのはよく分かったし、理由は何であれ、どうやらだいぶ消耗している様だし、何よりユキがカイトを殴り倒す勢いだったため、カイトは観念し、ため息を吐いた。

 「すみません。……正直なところ、あなたがリチャード王子なのは予想が付いてたんです。……金髪なんて、この国じゃ王族の証ですよ?」

 「え、…あっ、」

 今気づいたとばかりに自身の髪に手をつく様はだいぶ可愛らしいが、命に関わる様な情報だ。少し抜けてるのか、囲われて育ったのか。

 「王子?え、王族!?あぁ、どうりでこんなに綺麗なんだね」

 納得した様にユキはリチャードの髪を撫でた。金髪で、胸の辺りまで伸びた髪は本当に神秘的な輝きを持っている。多少汚れてこれなら洗ったら相当綺麗だろう。

 彼は少し恥ずかしそうにしているが、嫌がらない。

 「一つ聞いてもいいですか?……どうして見ず知らずの俺たちに名前を教えたんですか?……もし俺たちがあなたを傷つける様な人物だったらと考えませんでした?」

 リチャードは考え込んで、ユキを見つめ、カイトを見つめた。

 「……俺は、君の様に魔法が使る。……人の心が読める魔法だ」

 だから君達がいい人か悪い人か何てすぐ分かった。そう続けた彼の目には強い意志があった。

 「全ては見れないし、一日に何度も使える様なものじゃない、私は君達の戦っている姿、それにほんの少しの日常しか見ていない、が、気持ちのいいものじゃ無いだろう?申し訳ない……」

 「……助けて頂いた身で勝手なのは分かっている。……力を、力を貸して欲しい、んだ……」

 そのままリチャードは黙り込んでしまった。厄介事の匂いしかしないし、王族など、本来はあまり関わりたくない人種だ。

 が、残念ながら彼への答えは初めから一つしかなかった。相変わらずさっきからユキがこちらを睨んでいた。しかもさり気なくリチャードを抱き締めていた。

 溜め息を吐いたら、一瞬彼がびくついた。ユキの視線が更に厳しくなった。これでも身を削る思いで受け答えしていたのだが。

 「悪いな、正直君がどこまで俺達の中を見たのか知らないが、俺達はとっくに君に引っ付いて行くことを決めていた」

 ユキが小さくガッツポーズをした。混乱したリチャードがカイト達を交互に見つめる。

 「もぅ、カイトが思った以上に意地悪だからイライラしちゃった。……ごめんね、リチャード。実はあなたが私達の前に倒れた時、私達あなたに魅せられちゃって……」

 今でも鮮明に覚えている。彼の様な輝きを放つ人にはもう一生出会わない確信がある。

 ユキは優しく彼の手を取り、その甲に口付けた。

 「正直こう言うのは性に合わないが、……俺たちの主になってみないか?」

 
 「……ご主人様を全力で護る騎士ってかっこいいよね!!」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処理中です...