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ご主人様
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「……、そうですか。俺はカイト、そこにいるのはユキと言います。…………一つ聞いてもいいですか?」
ユキは少し不思議そうにこちらを見ていた。恐らく彼女は王子の名前何て知らないのだろう。
彼、リチャードは少し表情を硬くし、こちらを真っ直ぐ見つめた。
「あなたが言った名前を知らない程俺は世間知らずじゃないし、あなたがその名の人物だと言う証拠が何一つない今、俺はあなたを信じることができないです。何より、なぜあなたが俺たちにその名を明かしたか理解できない以上、出来れば今直ぐにでもここを出ていって頂きたい」
ユキは小さく声を上げてカイトを見つめたが、今はそれどころではない。カイトの表情を見て何かを察した彼女は静かにその場を見ることに徹したようだ。
非常に不本意そうな顔をしているが。
「……確かに、君の言う通りだ。……残念ながら、証拠は何も無い。見ての通り、何も持ち合わせていない。信じてくれと言うことしか、出来ない……」
彼はそのまま俯いて手を握りしめた。ユキが責めるようにカイトを見た。実は、彼が本物のリチャードである事はある程度予想出来ていた。
数日前、ここら辺に来ていたという王子が襲撃に遭い。行方不明になっていることは人伝に聞いていたし、彼の服装もそこら辺の貴族でも買えない様なものである事は見れば分かる。
何より、髪を染める技術のないこの世界で、王族や、その親戚でしかお目にかかれない様な金髪は何より彼の身分を証明していた。
正直、髪が証拠の様な物なのだが本人はいまいち自身の価値を分かっていない様に思える。
ふと彼の料理を置いている布団の端に雫が落ちた。ぎょっとし、同時にユキがカイトを蹴った。軽く蹴っているのだろうが呆気なく尻餅をつく形になった。
「ごめんね!カイト凄い意地悪だったよね!泣かないで!何の話してたのかよく分かんないけど私は信じるから!!」
顔を両手で挟んで上げさせ、涙を拭う。泣き顔をみたら物凄い罪悪感が襲ってきた。鼻を鳴らしてされるがままになっている彼が異様に母性本能を擽る。
「っ、本当に、申し訳ない……。料理のお金すら持っていないんだ……。いつか必ず返すからっ、……食べたら出て行」
「まってまってまって!ダメだよそんな綺麗な顔で辺りを彷徨っちゃまた変なのに捕まっちゃう!!ねぇ!カイト!!さっきからずっと黙ってないで何とか言ってよ!!!」
一先ず、彼が無害なのはよく分かったし、理由は何であれ、どうやらだいぶ消耗している様だし、何よりユキがカイトを殴り倒す勢いだったため、カイトは観念し、ため息を吐いた。
「すみません。……正直なところ、あなたがリチャード王子なのは予想が付いてたんです。……金髪なんて、この国じゃ王族の証ですよ?」
「え、…あっ、」
今気づいたとばかりに自身の髪に手をつく様はだいぶ可愛らしいが、命に関わる様な情報だ。少し抜けてるのか、囲われて育ったのか。
「王子?え、王族!?あぁ、どうりでこんなに綺麗なんだね」
納得した様にユキはリチャードの髪を撫でた。金髪で、胸の辺りまで伸びた髪は本当に神秘的な輝きを持っている。多少汚れてこれなら洗ったら相当綺麗だろう。
彼は少し恥ずかしそうにしているが、嫌がらない。
「一つ聞いてもいいですか?……どうして見ず知らずの俺たちに名前を教えたんですか?……もし俺たちがあなたを傷つける様な人物だったらと考えませんでした?」
リチャードは考え込んで、ユキを見つめ、カイトを見つめた。
「……俺は、君の様に魔法が使る。……人の心が読める魔法だ」
だから君達がいい人か悪い人か何てすぐ分かった。そう続けた彼の目には強い意志があった。
「全ては見れないし、一日に何度も使える様なものじゃない、私は君達の戦っている姿、それにほんの少しの日常しか見ていない、が、気持ちのいいものじゃ無いだろう?申し訳ない……」
「……助けて頂いた身で勝手なのは分かっている。……力を、力を貸して欲しい、んだ……」
そのままリチャードは黙り込んでしまった。厄介事の匂いしかしないし、王族など、本来はあまり関わりたくない人種だ。
が、残念ながら彼への答えは初めから一つしかなかった。相変わらずさっきからユキがこちらを睨んでいた。しかもさり気なくリチャードを抱き締めていた。
溜め息を吐いたら、一瞬彼がびくついた。ユキの視線が更に厳しくなった。これでも身を削る思いで受け答えしていたのだが。
「悪いな、正直君がどこまで俺達の中を見たのか知らないが、俺達はとっくに君に引っ付いて行くことを決めていた」
ユキが小さくガッツポーズをした。混乱したリチャードがカイト達を交互に見つめる。
「もぅ、カイトが思った以上に意地悪だからイライラしちゃった。……ごめんね、リチャード。実はあなたが私達の前に倒れた時、私達あなたに魅せられちゃって……」
今でも鮮明に覚えている。彼の様な輝きを放つ人にはもう一生出会わない確信がある。
ユキは優しく彼の手を取り、その甲に口付けた。
「正直こう言うのは性に合わないが、……俺たちの主になってみないか?」
「……ご主人様を全力で護る騎士ってかっこいいよね!!」
ユキは少し不思議そうにこちらを見ていた。恐らく彼女は王子の名前何て知らないのだろう。
彼、リチャードは少し表情を硬くし、こちらを真っ直ぐ見つめた。
「あなたが言った名前を知らない程俺は世間知らずじゃないし、あなたがその名の人物だと言う証拠が何一つない今、俺はあなたを信じることができないです。何より、なぜあなたが俺たちにその名を明かしたか理解できない以上、出来れば今直ぐにでもここを出ていって頂きたい」
ユキは小さく声を上げてカイトを見つめたが、今はそれどころではない。カイトの表情を見て何かを察した彼女は静かにその場を見ることに徹したようだ。
非常に不本意そうな顔をしているが。
「……確かに、君の言う通りだ。……残念ながら、証拠は何も無い。見ての通り、何も持ち合わせていない。信じてくれと言うことしか、出来ない……」
彼はそのまま俯いて手を握りしめた。ユキが責めるようにカイトを見た。実は、彼が本物のリチャードである事はある程度予想出来ていた。
数日前、ここら辺に来ていたという王子が襲撃に遭い。行方不明になっていることは人伝に聞いていたし、彼の服装もそこら辺の貴族でも買えない様なものである事は見れば分かる。
何より、髪を染める技術のないこの世界で、王族や、その親戚でしかお目にかかれない様な金髪は何より彼の身分を証明していた。
正直、髪が証拠の様な物なのだが本人はいまいち自身の価値を分かっていない様に思える。
ふと彼の料理を置いている布団の端に雫が落ちた。ぎょっとし、同時にユキがカイトを蹴った。軽く蹴っているのだろうが呆気なく尻餅をつく形になった。
「ごめんね!カイト凄い意地悪だったよね!泣かないで!何の話してたのかよく分かんないけど私は信じるから!!」
顔を両手で挟んで上げさせ、涙を拭う。泣き顔をみたら物凄い罪悪感が襲ってきた。鼻を鳴らしてされるがままになっている彼が異様に母性本能を擽る。
「っ、本当に、申し訳ない……。料理のお金すら持っていないんだ……。いつか必ず返すからっ、……食べたら出て行」
「まってまってまって!ダメだよそんな綺麗な顔で辺りを彷徨っちゃまた変なのに捕まっちゃう!!ねぇ!カイト!!さっきからずっと黙ってないで何とか言ってよ!!!」
一先ず、彼が無害なのはよく分かったし、理由は何であれ、どうやらだいぶ消耗している様だし、何よりユキがカイトを殴り倒す勢いだったため、カイトは観念し、ため息を吐いた。
「すみません。……正直なところ、あなたがリチャード王子なのは予想が付いてたんです。……金髪なんて、この国じゃ王族の証ですよ?」
「え、…あっ、」
今気づいたとばかりに自身の髪に手をつく様はだいぶ可愛らしいが、命に関わる様な情報だ。少し抜けてるのか、囲われて育ったのか。
「王子?え、王族!?あぁ、どうりでこんなに綺麗なんだね」
納得した様にユキはリチャードの髪を撫でた。金髪で、胸の辺りまで伸びた髪は本当に神秘的な輝きを持っている。多少汚れてこれなら洗ったら相当綺麗だろう。
彼は少し恥ずかしそうにしているが、嫌がらない。
「一つ聞いてもいいですか?……どうして見ず知らずの俺たちに名前を教えたんですか?……もし俺たちがあなたを傷つける様な人物だったらと考えませんでした?」
リチャードは考え込んで、ユキを見つめ、カイトを見つめた。
「……俺は、君の様に魔法が使る。……人の心が読める魔法だ」
だから君達がいい人か悪い人か何てすぐ分かった。そう続けた彼の目には強い意志があった。
「全ては見れないし、一日に何度も使える様なものじゃない、私は君達の戦っている姿、それにほんの少しの日常しか見ていない、が、気持ちのいいものじゃ無いだろう?申し訳ない……」
「……助けて頂いた身で勝手なのは分かっている。……力を、力を貸して欲しい、んだ……」
そのままリチャードは黙り込んでしまった。厄介事の匂いしかしないし、王族など、本来はあまり関わりたくない人種だ。
が、残念ながら彼への答えは初めから一つしかなかった。相変わらずさっきからユキがこちらを睨んでいた。しかもさり気なくリチャードを抱き締めていた。
溜め息を吐いたら、一瞬彼がびくついた。ユキの視線が更に厳しくなった。これでも身を削る思いで受け答えしていたのだが。
「悪いな、正直君がどこまで俺達の中を見たのか知らないが、俺達はとっくに君に引っ付いて行くことを決めていた」
ユキが小さくガッツポーズをした。混乱したリチャードがカイト達を交互に見つめる。
「もぅ、カイトが思った以上に意地悪だからイライラしちゃった。……ごめんね、リチャード。実はあなたが私達の前に倒れた時、私達あなたに魅せられちゃって……」
今でも鮮明に覚えている。彼の様な輝きを放つ人にはもう一生出会わない確信がある。
ユキは優しく彼の手を取り、その甲に口付けた。
「正直こう言うのは性に合わないが、……俺たちの主になってみないか?」
「……ご主人様を全力で護る騎士ってかっこいいよね!!」
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