親友と異世界トリップ

瀬尾

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 「……マジで、鬱陶、しいっ!てか、きもいぃぃぃぃ!!!」

 今ユキは魔物と戦っていた。もう街が見えているのに未だに辿り着けないでいる。

 ここまで来るのにかけた数日で襲ってきた魔物の数は数え切れなかった。この世界では魔物の牙や爪は武器の素材になる為、その街その街のギルドで換金出来るのだ。その為、襲ってきた魔物を倒しては牙等を回収してきた。

 残念ながら魔物は牙や爪があるものばかりでは無い。

 大きく分けて魔物は三タイプいる。動物型、昆虫型、異形型。

 動物型はその名の通り動物の姿に良く似ているもの、昆虫型もそ名の通り昆虫の姿に良く似ている。問題は異形型だが、異形型は所謂、スライム等の形がはっきりしないもの、あるいは動物型、昆虫型の二つに当て嵌まらない姿のものだ。

 現在対峙しているのは、昆虫型だ。

 この昆虫型にユキは大変苦労している。何とかリチャードやカイト達の所へは行かせない様に頑張っているが、ユキは涙目で震えている。

 「無理無理無理無理!死ぬ!いや、死ねない!でも死ぬぅぅ!!いやぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁ!!!!」

 かなり本気の絶叫にリチャードは心配そうに眺めていた。その足元には女の子がしがみついている。

 その様子に更にユキの目に涙が溢れそうになった。本気でユキが限界に近づいている。

 カイトは深々と溜め息を吐いた。腕に抱いた赤児をリチャードに託す。少し抵抗したが、ここは譲れない。

 どちらにしろこの魔物が出て来た時点で分かりきった結果だった。

 彼女は昆虫型の魔物には触れられないのだ。本来は近づくこともままならない。それ程虫が苦手なのだ。本人曰く、唯の昆虫ですらままならないのに、巨大化したものなど死んでも触りたく無いそうだ。

 本来なら昆虫型は極めて数が多い少ない為、滅多に出会わないのだが。

 「ユキ、下がってろ。俺が行く」

 「あぁぁぁぁぁあぁぁありがとう!!!!!!」

 最後のありがとうは既にカイトの後ろから聞こえていた。

 再び重い溜め息を吐きながら一応持っていた剣を抜く。

 「戦闘は担当して無いんだがな……」

 息を吐きながら腰を落とす。
 
 この昆虫型は毛の生えた巨大な芋虫のようなものだ。毛は尖っており、毒が有りそうだ。動き自体はそんなに早くは無いため、何とかなりそうだ。

 カイトは一気に突っ込んだ。

 魔物はカイトの接近に気づき、奇声を上げた。一瞬で毛がぶわっと広がり、倍の長さにまでなった。初めての反応に対処しきれず、毛が肩に突き刺さる。

 後ろではリチャードが叫声を上げ、ユキは声援を送っていた。

 カイトは肩を気にせず剣を横に払った。

 顔に魔物の体液が掛かる。緑色のそれに顔を歪めた。

 「うぇ、きもちわりぃ」

 魔物はそのまま事切れた。

 カイトは肩に手をやり自身を見下ろした。服はもう使い物になりそうに無い。

 「大丈夫か!?服を脱げ!傷を見してみろ!」
 
 リチャードが、手が汚れるのも気にせずに触ろうとしてきたため慌てて避ける。

 自身の傷はもう既に治してある。

 「近くに池あったじゃん、洗えば?」

 先程の様子から一気に元どおりに戻ったユキが、カイトの着替えの服を持ってけろっと立っていた。一瞬イラッとしたが、我慢し、軽く返事をした後池へと向かった。

 リチャードが酷く険しい顔をしていたのが気がかりだ。

 体を洗い、着替えて彼等の元に帰ると待っていたのはリチャードからの平手打ちだった。

 「……なぜ、なぜ避けなかった?……避けられたのだろう?……なぜ、なぜ治せるからと、傷を作る!?」

 どうやら心を読まれた様だ。確かに、避けられる程度だったし、治せるから多少怪我をしても平気だと思っている。だが何故彼がそこまで怒っているのか分からない。

 何も言えずに黙っていると、リチャードが泣きそうな顔をした。

 「……私が怪我をした。君に治して貰えると思い、魔物の牙をその身に受けた」

 カイトは顔を歪めた。彼の言いたい事は分かった。確かにリチャードの前でやるのは軽率だったが、正直な所、力もなく、スピードもない。一般的な冒険者程度しか力のないカイトには、ユキのような闘い方が出来ない。

 「分かった、これ以降は二度とやらない……」

 「分かってくれて良かったよ。……ユキ、君もカイトが大事ならもう少し気に掛けてくれ」

 「うん、……ごめん、居なくならないなら、いっかて、思ってた」

 ユキもカイトもリチャードの言葉には耳を傾ける。

 二人して落ち込んで彼の前で項垂れる。その様子に苦笑した彼は、そのまま再び口を開けた。

 「……でも、護ってくれてありがとう」

 何とかもち直った二人はようやく街へと歩みを進めた。街が見えてからの方が濃い時間だった。

 街の入り口に着き、門番にギルドカードを見せた。問題なく街に入り、ギルドへの道のりを尋ねた。

 門からそう遠くない場所にギルドはあった。

 街は前のところより大きいだけあって、ギルドもとても立派なものだった。
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