10 / 28
王とは
しおりを挟む
「でもねっ、リチャードが望むなら何だってするよ?その子の事も守るし親だって見つける。…………それから、……お願い、勘違いしないで、戦うのは好きだけど、…………人を殺すのが楽しいとは思ってないからね……」
どうやら彼女の気がかりはそのことの様だった。
ユキは戦う時、ほぼ常に笑っている。先程も、笑いながら山賊達と対峙していた事に気付いたのだろう。彼女のそれはもう癖の様なものだった。
リチャードが情に深い事は一緒にいれば誰でも気づく。彼に嫌われたくなくて、彼女は必死に言い訳をする。
他人事では無いカイトは何も言えずにただそれを見つめる。
不意にリチャードが困った様に笑った。その意味が分からず、困惑する。
「……確かに君たちは他人には酷く無関心だが、……私にはそうでは無い。……本来なら君たちを諭し、他人に目を向けさせるべきなのだろうけど、私は純粋に嬉しいんだよ。…………私は他人では無いのだろう?」
そう嬉しそうに笑う彼にカイト達は一瞬言葉を詰まらせ、顔を真っ赤にさせた。彼の笑顔にはそれだけの効果がある。
「あ、当たり前でしょ!?貴方に私達の全てをあげたかったから、貴方の望みを全て叶えたいと思ったから、私達は此処にいるの!」
照れて、真っ赤な顔で怒ったように詰め寄る彼女には何の威圧感の欠片も無い。リチャードもそう思ったのか苦笑して彼女を宥める。
「正直なところ、私は君たちがそのままていてくれる事を願っているんだよ。……そのままなら、永遠に私のものでいてくれるだろう?…………酷く醜い考えだと自覚はしているよ」
リチャードはそう言い、少し目を伏せた。
カイト達は、そんな事無い、彼にはそれを望んでいいだけの素質がある、そう言おうとした。
彼らが口を開けた瞬間、リチャードが顔を上げ、カイト達と目を合わせた。
「でも、言わせてもらう。……君達は私のものだ。誰にも譲るつもりは無いし、手放す気もさらさら無い。例え君達がどんな人物、人格であっても。…………私は独占欲が強いんだ。君達が誰にでも優しくしていたら、私は嫉妬で可笑しくなる」
そう言った彼の目は確かに欲に濡れていた。普段の彼との違いに、言い様のない興奮がカイト達をざわつかせた。彼は確かに、カイト達が自分のものだという自覚をしていた。
支配欲をちらつかせ、カイト達を縛りつけようとする彼の言動に、確かに彼らは優越感を感じた。
彼が、私達の王。
「…………それでいい。リチャード、君は何も変わる必要は無い。……そのままの君が、俺達の王だ。……一国の王である前に、君は俺達の王だ」
そう言って彼の前に跪き、手を取り口付けた。
ここで、カイトは初めてリチャードへの忠誠を形にした。
それに満足したリチャードは、そのまま自然に話しを変えた。
先程までの雰囲気は消え、今までの彼に戻る。
トリップする前の世界のこと、これからの道順、王都の雰囲気、次の街の事。
話疲れて眠り、翌日を迎えた。
子供も起きてきて、早速馬に乗って街へ向かう事にした。カイトが赤児を抱き、リチャードに懐いた子供が二人でユキの後ろに乗った。
何故か赤児の担当はカイトになっていたが、その子は全く手間のかからない子供だった。泣かず、喚かず、愚図らない。死んでいるのかと呼吸器を確かめようとすると目が開いており、こちらを見つめていた。
不思議と鬱陶しく感じず、自然とカイトは率先してその子の世話を焼いた。
オムツは要らなくなった布で簡易的なものを作り、食事はお粥の様なものを食べさせた。幸い乳ばなれは終えている様で、食事をきちんと取ってくれた。
一度ユキに渡そうとした時、カイトの服を握りしめ、頑なにカイトから離れなかった出来事があり、それ以来彼も満更ではない。
情が湧きそうになっている事をリチャードとユキは気付いていたが、彼自身が気づかないと意味がないと見守る事にしていた。
オムツを替える時に分かったのだが、赤児は男の子だった。因みに、五歳位の子供は女の子だ。
馬を使って進む事三日。
基本的に無表情な赤児はそのままなのだが、五歳位の女の子よく笑う様になった。
女の子はよくリチャードと遊んだ。ユキはその子に嫉妬仕掛けており、下手に近づいて彼女を傷つけてリチャードを悲しませないためにここ二、三日後ろに控えて様子を伺っていた。
赤児は相変わらず無表情だ。不思議に思ったカイトが彼を観察し始め、分かったのが、彼にはあまり感情の起伏が見受けられなかった。
カイトは嫌な予感が頭をよぎり、何故か苛立った。自分の心境の変化に驚いていたが、今はただ街に早く着く様、馬を速めた。
彼の頭の計算では後数時間で街に着く。
どうやら彼女の気がかりはそのことの様だった。
ユキは戦う時、ほぼ常に笑っている。先程も、笑いながら山賊達と対峙していた事に気付いたのだろう。彼女のそれはもう癖の様なものだった。
リチャードが情に深い事は一緒にいれば誰でも気づく。彼に嫌われたくなくて、彼女は必死に言い訳をする。
他人事では無いカイトは何も言えずにただそれを見つめる。
不意にリチャードが困った様に笑った。その意味が分からず、困惑する。
「……確かに君たちは他人には酷く無関心だが、……私にはそうでは無い。……本来なら君たちを諭し、他人に目を向けさせるべきなのだろうけど、私は純粋に嬉しいんだよ。…………私は他人では無いのだろう?」
そう嬉しそうに笑う彼にカイト達は一瞬言葉を詰まらせ、顔を真っ赤にさせた。彼の笑顔にはそれだけの効果がある。
「あ、当たり前でしょ!?貴方に私達の全てをあげたかったから、貴方の望みを全て叶えたいと思ったから、私達は此処にいるの!」
照れて、真っ赤な顔で怒ったように詰め寄る彼女には何の威圧感の欠片も無い。リチャードもそう思ったのか苦笑して彼女を宥める。
「正直なところ、私は君たちがそのままていてくれる事を願っているんだよ。……そのままなら、永遠に私のものでいてくれるだろう?…………酷く醜い考えだと自覚はしているよ」
リチャードはそう言い、少し目を伏せた。
カイト達は、そんな事無い、彼にはそれを望んでいいだけの素質がある、そう言おうとした。
彼らが口を開けた瞬間、リチャードが顔を上げ、カイト達と目を合わせた。
「でも、言わせてもらう。……君達は私のものだ。誰にも譲るつもりは無いし、手放す気もさらさら無い。例え君達がどんな人物、人格であっても。…………私は独占欲が強いんだ。君達が誰にでも優しくしていたら、私は嫉妬で可笑しくなる」
そう言った彼の目は確かに欲に濡れていた。普段の彼との違いに、言い様のない興奮がカイト達をざわつかせた。彼は確かに、カイト達が自分のものだという自覚をしていた。
支配欲をちらつかせ、カイト達を縛りつけようとする彼の言動に、確かに彼らは優越感を感じた。
彼が、私達の王。
「…………それでいい。リチャード、君は何も変わる必要は無い。……そのままの君が、俺達の王だ。……一国の王である前に、君は俺達の王だ」
そう言って彼の前に跪き、手を取り口付けた。
ここで、カイトは初めてリチャードへの忠誠を形にした。
それに満足したリチャードは、そのまま自然に話しを変えた。
先程までの雰囲気は消え、今までの彼に戻る。
トリップする前の世界のこと、これからの道順、王都の雰囲気、次の街の事。
話疲れて眠り、翌日を迎えた。
子供も起きてきて、早速馬に乗って街へ向かう事にした。カイトが赤児を抱き、リチャードに懐いた子供が二人でユキの後ろに乗った。
何故か赤児の担当はカイトになっていたが、その子は全く手間のかからない子供だった。泣かず、喚かず、愚図らない。死んでいるのかと呼吸器を確かめようとすると目が開いており、こちらを見つめていた。
不思議と鬱陶しく感じず、自然とカイトは率先してその子の世話を焼いた。
オムツは要らなくなった布で簡易的なものを作り、食事はお粥の様なものを食べさせた。幸い乳ばなれは終えている様で、食事をきちんと取ってくれた。
一度ユキに渡そうとした時、カイトの服を握りしめ、頑なにカイトから離れなかった出来事があり、それ以来彼も満更ではない。
情が湧きそうになっている事をリチャードとユキは気付いていたが、彼自身が気づかないと意味がないと見守る事にしていた。
オムツを替える時に分かったのだが、赤児は男の子だった。因みに、五歳位の子供は女の子だ。
馬を使って進む事三日。
基本的に無表情な赤児はそのままなのだが、五歳位の女の子よく笑う様になった。
女の子はよくリチャードと遊んだ。ユキはその子に嫉妬仕掛けており、下手に近づいて彼女を傷つけてリチャードを悲しませないためにここ二、三日後ろに控えて様子を伺っていた。
赤児は相変わらず無表情だ。不思議に思ったカイトが彼を観察し始め、分かったのが、彼にはあまり感情の起伏が見受けられなかった。
カイトは嫌な予感が頭をよぎり、何故か苛立った。自分の心境の変化に驚いていたが、今はただ街に早く着く様、馬を速めた。
彼の頭の計算では後数時間で街に着く。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる