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親
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「っ、…………ユキ…………」
寝ていたユキがこちらに目を向けた。リチャードは先程カイトが立ち上がった時からこちらを伺っていた。
「……彼、を、…………助けて、良いか?」
ユキ達は理解できずに顔を見合わせ、不思議そうにこちらを見つめた。
「?…………カイトはその人助けたいの?」
彼女の言葉に迷いなく頷いた。
見てみない振りが出来るほど、あの子はもうカイトにとって他人ではなくなっていた。
「……ははっ、……したい事は何でもするべきだよ。助けたいなら助ける。助けたく無いなら助けない!…………せっかくトリップしたんだよ?……楽しまなければ勿体無いじゃん?」
彼女の言葉には嘘偽りがなかった。したい事をする。したい事が出来る。それは、きっと彼女がこの世界に来て一番実感している事なのだろう。
「……手を貸して欲しい」
素直に出た言葉に、ユキは嬉しそうに立ち上がり、図書館の出口の方に向かった。
「あ、…………ごめん、誰を助ければ良いんだっけ?」
リチャードが少し笑ったのが微笑ましかったが、カイトは深々とため息を吐いてしまった。
「忌み子!?…………まさかそんな風習があったなんて…………」
時間がもったいない為、教会に向かう途中で説明をした。時間が勿体無い。距離にして歩いて数十分もしない時間がもどかしい。
走って着いた教会では、先程まで開いていた扉が閉じていた
。
ユキは走ていたスピードを落とさずそのまま地面を蹴った。高く飛び上がり、そのまま扉に飛び蹴りを落とした。
「ごめんくださぁぁあい!!…………あれ?いないや」
小首を傾げる彼女は非常に可愛らしいが、やっている事は器物破損だ。これで何も無かったら彼女はどうするのだろうか。
「はぁ、……入って直ぐに居るわけ無いだろ?」
騒ぎに聞きつけて中から人が出てきた。朝は神父しか居なかったのに、現在は、恐らく街の住民、警備員、様々な人がいた。警戒したように睨まれる中、赤児を渡した神父を発見した。
ユキが笑いながら刀を手で回していた。明らかに刺激している彼女を横目に前に出た。
「あぁ、扉を壊してしまってすみません。修理代は出します。ここに来たのは、俺がここに置いた子供、その子を引き取りたいと思いまして……」
そう言って神父に微笑むと、彼は顔を歪めて周りに攻撃する様に叫んだ。どうやら渡す気は無さそうだ。
カイトはリチャードの手を取り、神父達が出できた方へと歩き出した。
前に出た瞬間武器を持ち出した人達が襲いかかってきたが、カイト達にその凶器が届く前に、吹っ飛ばされていた。
襲いかかられた時、一瞬リチャードがびくつき目を閉じた。その様子に思わず苦笑し、早く慣れてもらえる様に祈った。きっと心臓に悪いだろう。
「安心してよ。君達には絶対指一本触れさせない。あははっ!慣れだよ、慣れ!」
そう言いながらも素手で相手の足を掴んで投げていた。最初に弄っていた刀は腰に差したまま一切抜く様子は無かった。
「が、頑張るよ……」
苦笑しつつ、しっかり前を向いた。彼女がいれば、絶対に恐れる必要は何も無い。
視界の端で神父が奥の部屋に駆け込んだのが見えた。その後を追い、扉を開けた瞬間にカイトは頭が真っ白になった。
あたりは薄暗かった。
子供を探した。神父は壁際に逃げて怯えている。
教壇の上に居た。白く、動かない手が、目に焼きついた。彼のいる教壇が、赤く染まっていた。動かない。
リチャード、恐らくリチャードに、背中を押された。しっかりしろと。
走って教壇に近づいた。震える手で彼の手を握る。酷く、冷たかった。
嘘だ。
嫌だ。
嘘だ。
手に雫が落ちた。頬を伝う何かを感じた。
カイトは確かに涙を流していた。
最後に流した涙がいつだったか覚えていない。そんな自分が、流れる涙を止められないでいた。
隣から神父の声がした。
「何故ここに来た!?それを置きに来たのだろう!?何故戻ってきた!?」
直ぐにユキが神父の口を塞いだ。塞いだ、と言うより気絶させた。
何故、来たのか。
何故か。
それは。
俺は、確かにこの子に、情が湧いていた。愛情。
俺はこの子の、
「……………………っ、…………父親に、……父親に、なりたかったっ」
何がいけなかったのか、そんなの分かり切っている。
自分の感情に素直になれず、あの時、神父に渡した時、確かに感じた違和感を、見過ごした。
全て、遅かった。
もう子供は、この世に居ない。
何もかも、遅かった。
「っ、ごめん、ごめん、…………俺の、せいだな……っ」
罪悪感で胸が苦しい。自己嫌悪で吐きそうだ。足に力が入らない。涙が止められない。辛い。苦しい。辛い。
謝り、手に力を込めた瞬間。
ほんの僅か、もしかしたら勘違いなのかと、自身の妄想なのかと、そう思うほどの小さな力で。
確かに手を握り返された気がした。
寝ていたユキがこちらに目を向けた。リチャードは先程カイトが立ち上がった時からこちらを伺っていた。
「……彼、を、…………助けて、良いか?」
ユキ達は理解できずに顔を見合わせ、不思議そうにこちらを見つめた。
「?…………カイトはその人助けたいの?」
彼女の言葉に迷いなく頷いた。
見てみない振りが出来るほど、あの子はもうカイトにとって他人ではなくなっていた。
「……ははっ、……したい事は何でもするべきだよ。助けたいなら助ける。助けたく無いなら助けない!…………せっかくトリップしたんだよ?……楽しまなければ勿体無いじゃん?」
彼女の言葉には嘘偽りがなかった。したい事をする。したい事が出来る。それは、きっと彼女がこの世界に来て一番実感している事なのだろう。
「……手を貸して欲しい」
素直に出た言葉に、ユキは嬉しそうに立ち上がり、図書館の出口の方に向かった。
「あ、…………ごめん、誰を助ければ良いんだっけ?」
リチャードが少し笑ったのが微笑ましかったが、カイトは深々とため息を吐いてしまった。
「忌み子!?…………まさかそんな風習があったなんて…………」
時間がもったいない為、教会に向かう途中で説明をした。時間が勿体無い。距離にして歩いて数十分もしない時間がもどかしい。
走って着いた教会では、先程まで開いていた扉が閉じていた
。
ユキは走ていたスピードを落とさずそのまま地面を蹴った。高く飛び上がり、そのまま扉に飛び蹴りを落とした。
「ごめんくださぁぁあい!!…………あれ?いないや」
小首を傾げる彼女は非常に可愛らしいが、やっている事は器物破損だ。これで何も無かったら彼女はどうするのだろうか。
「はぁ、……入って直ぐに居るわけ無いだろ?」
騒ぎに聞きつけて中から人が出てきた。朝は神父しか居なかったのに、現在は、恐らく街の住民、警備員、様々な人がいた。警戒したように睨まれる中、赤児を渡した神父を発見した。
ユキが笑いながら刀を手で回していた。明らかに刺激している彼女を横目に前に出た。
「あぁ、扉を壊してしまってすみません。修理代は出します。ここに来たのは、俺がここに置いた子供、その子を引き取りたいと思いまして……」
そう言って神父に微笑むと、彼は顔を歪めて周りに攻撃する様に叫んだ。どうやら渡す気は無さそうだ。
カイトはリチャードの手を取り、神父達が出できた方へと歩き出した。
前に出た瞬間武器を持ち出した人達が襲いかかってきたが、カイト達にその凶器が届く前に、吹っ飛ばされていた。
襲いかかられた時、一瞬リチャードがびくつき目を閉じた。その様子に思わず苦笑し、早く慣れてもらえる様に祈った。きっと心臓に悪いだろう。
「安心してよ。君達には絶対指一本触れさせない。あははっ!慣れだよ、慣れ!」
そう言いながらも素手で相手の足を掴んで投げていた。最初に弄っていた刀は腰に差したまま一切抜く様子は無かった。
「が、頑張るよ……」
苦笑しつつ、しっかり前を向いた。彼女がいれば、絶対に恐れる必要は何も無い。
視界の端で神父が奥の部屋に駆け込んだのが見えた。その後を追い、扉を開けた瞬間にカイトは頭が真っ白になった。
あたりは薄暗かった。
子供を探した。神父は壁際に逃げて怯えている。
教壇の上に居た。白く、動かない手が、目に焼きついた。彼のいる教壇が、赤く染まっていた。動かない。
リチャード、恐らくリチャードに、背中を押された。しっかりしろと。
走って教壇に近づいた。震える手で彼の手を握る。酷く、冷たかった。
嘘だ。
嫌だ。
嘘だ。
手に雫が落ちた。頬を伝う何かを感じた。
カイトは確かに涙を流していた。
最後に流した涙がいつだったか覚えていない。そんな自分が、流れる涙を止められないでいた。
隣から神父の声がした。
「何故ここに来た!?それを置きに来たのだろう!?何故戻ってきた!?」
直ぐにユキが神父の口を塞いだ。塞いだ、と言うより気絶させた。
何故、来たのか。
何故か。
それは。
俺は、確かにこの子に、情が湧いていた。愛情。
俺はこの子の、
「……………………っ、…………父親に、……父親に、なりたかったっ」
何がいけなかったのか、そんなの分かり切っている。
自分の感情に素直になれず、あの時、神父に渡した時、確かに感じた違和感を、見過ごした。
全て、遅かった。
もう子供は、この世に居ない。
何もかも、遅かった。
「っ、ごめん、ごめん、…………俺の、せいだな……っ」
罪悪感で胸が苦しい。自己嫌悪で吐きそうだ。足に力が入らない。涙が止められない。辛い。苦しい。辛い。
謝り、手に力を込めた瞬間。
ほんの僅か、もしかしたら勘違いなのかと、自身の妄想なのかと、そう思うほどの小さな力で。
確かに手を握り返された気がした。
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