親友と異世界トリップ

瀬尾

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力試し

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 本や新聞で見た彼の情報だと、歳は三十四、歴代将軍の中で一番とまで言われている程の実力者で、将軍になったのは五年前の隣国との戦争で前将軍が死んでから、身長はリチャードよりさらに頭一個高い。がっしりした体格に、着込まれた鎧い、服の隙間から見える肌には数多くの傷が見える。

 鋭い眼光でカイトとユキを睨みつけていた。

 直ぐに目線は外れ、リチャードの前に跪いた。

 「ご無事で何よりです!偵察に行かせた部下が死亡し、消息が掴めず、心配しておりました。……あなた様に苦労を掛けさせてしまった様で、私は自分が不甲斐ないです!!…………無事で居てくれて、本当に……」

 そう言って言葉を震わす彼に、リチャードは手を差し伸べた。

 「頭を上げろ。……今回の事は兄上が一枚上手だった。特に誰かを責めるつもりはない。……私はこうして無事だしな」

 「有り難き幸せ!……して、そちらの下民について説明して頂けますか?」

 そう言って再びこちらを睨みつける彼に、ユキは笑っているが、恐らく切れている。彼女は非常に短気なのだ。

 「口を慎め。彼らは私を助け、此処に連れてきてくれた人達だ。……そして、私の直属の僕だ」

 「なっ!?こんな汚らしい庶民を直属の僕!?…………考え直して下さい!こんな細腕で何が出来るって言うんですか!?」

 「いっ、」

 声を荒げカイトの腕を掴み上げた。捻り上げられるようにして掴まれた腕が痛み、転びかけた瞬間、ユリウスを庇うようにして抱え込んだ。

 衝撃は来なかった。見ると、ユキが左手でカイトを支えていた。右手には刀を持ち、刃をアレクサンダーの首に当てていた。瞳には暗い影を落とし、静かに彼を見据えていた。

 「カイトに触んなよゴリラ、殺すぞ」

 彼女は今までカイトが傷ついても動揺していなかった。何もそれはトリップする前からではない。この世界でカイトが治癒の魔法を使える様になってから、気にしなくなっただけなのだ。

 一瞬で傷が治るため、安心していたのだ。

 それもリチャードに叱られてからは考え直したのだ。

 久し振りの感覚に思わずカイトは溜め息を吐いた。

「な!?……貴様は女子に庇われても何も感じないのか!?貧弱な!」

 一瞬ユキの動きに驚いていたが、それよりもカイトが庇われているのが気に食わなかったのだろう、なおも食いかかる。

 ユキが本気で殺そうとしたのが肌で分かった。

 「待て!ユキ!」

 「アレクサンダーもその辺にしろ!」

 早まるな、そう彼女に言った。

 「っ、…………」

 一瞬アレクサンダーを睨んでから、ユキは大人しくカイトの後ろに下がった。

 「彼等の事を非難することは許さない。他の者にも言っておけ。二人は今後常に私と行動する事になる」

 彼の言葉に絶句し、何かを言いたそうに口を震わせ、カイトを睨みつけた。先程から彼は女であるユキに見向きもしない。日本で言う男尊女卑の様な感じがする。

 「…………じゃあ、勝負するか?」

 そう言うと、アレクサンダーは見下した様にカイトを見つめて薄く笑った。直ぐ様リチャードに演習場での決闘の許可を取った。

 リチャードは溜め息を吐いたが、そのまま、演習場に向かうカイト達に続いた。彼の心労は増えてしまったが、これが一番手っ取り早いのだ。

 演習場についた、アレクサンダーが演習場の真ん中ら辺からこちらを見つめてきた。早く来いと言わんばかりに視線を送る。

 彼の目線はカイトなのだが、もちろん戦うのはユキだ。

 「な!?貴様が戦うのではないのか!?」

 「はぁ?バカじゃないの?カイトが戦うわけないじゃん」

 馬鹿にした様にアレクを見つめる彼女の顔は中々に歪められていた。

 流石にこれは頭にきたのかユキに向かって歩き出した。

 「女だと思って我慢してやってたが、もう限界だ。まずは貴様から痛めつけてやるっ!!」

 言っていることはただの悪党だが、動きは確かに彼の実力を表していた。

 辺りにはいつの間にか多くの兵士が集まっていた。

 勝負は一瞬で着いた。

 彼との距離がまだある中で、ユキが動いたのだ。

 一蹴りでアレクの目の前に移動し、刀を振り上げた。彼は一瞬驚愕で目を見開いたが、流石将軍とでも言おうか、ユキの一撃目を防いだ。だがそれだけだ。ユキが薄く笑い、彼の後ろに回り、膝に軽く蹴りを入れ、バランスを崩させる。
 
 崩した瞬間前に移動し、彼の腕を取り柔道で言う一本背負いで彼を投げた。

 最後に胸の上に勢いよく乗り上げ、彼の首に再び刀を添えた。ユキがアレクを覗き込み、その髪が彼の頬に掛かる。

 「なめんなよ、クソが」

 彼はユキを見上げ、顔を強張らせた。
 
 彼女の瞳の奥に、その微笑みに、纏う空気に、確かに怯えた。

 この世界で最強とも言われていた武人の一人であるはずのアレクサンダーは、彼の抱いたその感情は、確かに恐怖だった。
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