俺はいつも拾われている

つちやながる

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これが俺の生きる道

3 俺の人生は暇潰し

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 一階の応接間に大鏡があった。この世界でくすみの無い鏡は高額商品だ。農民だった俺は見る機会が無かった。十七歳にして初めて如実に自分を見た。だから今さっき初対面。

「えぇぇ」

 両手を鏡に近づき食いついた後、ガクッと膝が崩れて座り込む。
 まじか、まじか、まじで…。
 過去最高にヤバい。俺がヤバい。
 衝撃の余り姿勢は土下座になった。握り拳はプルプルと震える。
 床に懺悔するが如く小さく呟いた。

「俺が美少年…」

 過去の転生はずっと男だった。異世界の価値観に揉まれ同性婚も普通にあった。俺も正直した事ある。回数を経て色々拘らなくなったけどな。容姿に関しては平均だった気がする。

 今世のブロンドの髪は伸び自分で見えていた。目の色は親に聞いてた。成長不足も童顔なのも村の人から言われてた。でも鏡で見たのは、睫毛が多く長いくっきり二重。大きめの水色っぽい虹彩で丸みのある目。眉も嫌味無く程良い丸顔。鼻も口も丁度良い。痩せ細ってるが整っている。

「ルースがフリフリ服を買ってくるわけだ」
 
 レオは顔をあげ改めて鏡面と向き合った。
 似合う。今日のロングシャツも襟と袖口がヒラフリだ。腰には網細工ベルト。ふさふさ何かの尾のファーが二個飾りで付く。動くと揺れて可愛いじゃないか。恐ろしく似合う王子だ。
 しかも童顔って言えない。これは普通に見ためが子供だ。将来が楽しみな美人な子供だ。村で街で皆が優しかったわけだ。可愛いって言うのは身長と童顔を馬鹿にしてんだと思ってた。
 脱力して、うつ伏せに崩れ落ちた。土下座美少年だ。

「この顔やばいだろ」
 
 可愛い。俺が可愛すぎる。ああ今までよく無事だった。今、二人の危険人物が脳裏に浮かんだ。……どうしよう。
 くっそ、クソだ。これはやっぱり溺愛転生パターンなのか。前世的にいままで普通に嫁もらった恋愛結婚が三回位だったか。少ない。少なすぎる。俺に一度くらいラノベ的ハーレムは無いのか。いや待て、美少年なんだ。成長したら違くないか?まだ生きてるし先があるじゃないか。回避すれば何とかなるんじゃないか。そうだ。俺がハーレム…ふふふふ。
 レオは拳で床をドンドン叩いて、土下座のまま、めくるめく妄想の世界へ旅立った。



「レオ、大丈夫か」

 蹲った不思議な姿勢のレオを見た。声をかけると驚いたのかビクッと跳ねた。様子がおかしいというバルモンクの報せで応接間に来たのだが。

「レオ、どうした。ルース呼ぶか?」

 側に行き腰を落とし呼びかけた。レオはゆっくり体を起こす。顔が赤い。微妙に涙目だな。熱でもあるのかと額に手をあてた。

「体調悪いのか?」
「だ、大丈夫、です!」

 プイって顔を背けられた。何だこの態度。昨日までと違う。本当に様子がおかしい。

「歩いて疲れたとか?部屋で休むか?」

 手を握り立たせた。まだ顔を背けるレオ。疲れてる感じでも無いな。歩き出すと抵抗せず付いて来た。手を繋いでも文句も言わないとは。何かあったか。鏡で?

「鏡の前でどうした。痩せ細った自分に驚いたか」

 レオはそういう事にしておこうと思った。美少年っぷりに驚いたとは言えない。

「…そう、デス」
「食べて肉が付いたら戻る。大分良くなったんだ」
「…う、うん 」
「レオは元気になっただろ。もう少しだ」
「そ、そうだね」

 素直だ。フィルはレオの顔を見た。少し俯き加減で軽く笑っていた。何だレオ。本当に変だ。もしかしてこれが素なのか。可愛い。口にすれば怒りそうだ。
 フィルは嬉しそうに手を離さずレオ専用にした客室に向かった。

「はは。この人形達はルースか」

 部屋のぬいぐるみを見てフィルが驚いた。

「好きなのか?」
「可愛いとは思う。趣味じゃない。好きじゃない」
「ルースに嫌って言えばいい。ほら座って」

 レオは、新しく増えたベロアソファーに腰を落とす。

「あの人、俺の話聞いてない」
「レオが気に入ったんだ。最初は猫かわいがりするからな。少しすれば冷静になる。我慢してくれ」
 
フィルはルースが小動物が好きで可愛がることを知っていた。敢えて言わなかった。会話してると普段のレオに戻ってきた。少し残念に思っていた。

「…はぁ」
「いつもと変わらないな。大丈夫だな」
「…だから大丈夫って」

 なんだ。普通に心配してくれたのか。久々動揺しただけだ。死ににかけの俺を連れて帰るバカなやつ。過保護だし鬱陶しい。でも時々優しいとは思う。あとは少し変態だ。フィルを見た。

「言いたい事は言えばいい。遠慮するな」
「…治療費食費は返せません」
「はは。そこか。ルースも道楽でやってる。金品不要。心配ない」
「…労働返済義務無いのか」
「無い。元気になるまで居たらいい」

 頭をぽんぽんされた。俺はまだフィルを見てる。まじで無償か。バカつーか金銭感覚が違うな。でも色々助けられてるのは事実。そういえば一度もお礼言って無い事を思い出す。

「拾ってくれてありがとう」
「どういたしまして。お陰で毎日いい暇潰しになってるよ」

 いい笑顔だった。やっぱ暇潰しなのか。お礼言って損した。

「…前言撤回」



 
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