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未来へと歩む道
10、思慮深いこと
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「これエグい」
「拗ねるのはやめたのか」
鉄道の旅を再開して個室で読書をしてる俺。
ノールさんと回収に行ったと言う、魔人族の娯楽小説は血と戦争に愛と憎しみの奥様向け肉欲劇場だった。途中なのに我慢出来ず感想を声に出す。
フィルに久し振りに容赦無く、しかも元妻のいる屋敷であんあん言わされたのは流石になけなしの自尊心が傷ついた。拗ねるのも当然だ。
俺がプンスコしてたってフィルには面白く楽しい事らしく観察する様に見てくる。機嫌取りのキスとか謝ってくれてもいいのに、機嫌が直る過程を楽しんでいる時がある。そういうとこは嫌いだ。
自分はいつまでも根に持つタイプじゃない。
どっかで切り替えないと疲れるだけだから。
「帝国と名が付く所は基本殺戮の歴史だろ」
「そんな感じってわかるけど」
実際皇帝が己は神の如き象徴として各地を支配し占領目的の戦争を始めるのが大体セオリーだもんね。フィルも殺戮参戦したのかとか聞かない。そんな何百年もの過去は別に必要ない。
それを聞くなら俺だって転生しまくって、魔物やら子供やらに生まれよくわからない世界に飛んでるのを全部説明しなきゃいけない気になる。
お互いが好きで想いが通じてたって総て知らなくていい。人は秘密を持つものだろ。それで付き合ってたってバランスが保てると俺は思ってる。
大陸は平和だ。現帝国に皇帝はいるけど遺制を存続させる為の地位で実質王政になっているので、役目も王と変わらない。
娯楽小説とは言え、この国の過去がベースでそうだったと思えば少しゾッとする気持ちもある。
フィルはそんな時代を生きてきた。それでも今、この時代に、この世界に俺もいて一緒の時を過ごしてる。過ごしてる行ける。執事として、恋人として側に入れる事が嬉しいと思う。これは幸せなんだよな。
「拗ねてるのがいいんだけどな」
「変」
「だよな」
「わかってるならワザと怒らせるとか無し」
「そんな回りくどい事して無い。偶々そうなるんだ」
「たまたま?」
ああもう。この人は俺を嬉しく楽しく、そしてイラつかせる。鼻で笑われると想像できたから、本に視線を戻し続きを読む事にした。
「レオ、俺をもっと構え」
「読書シマス」
ほらね。くくっと、楽しそうに笑うんだ。
旧帝都前でまた駅に降り立った。少し集落があるようだけど緑多き田舎には変わらない。フィルは懐かしそうに遠くを見ていた。
「ここは戦時中多くの魔人族が住んでた。当時は同族だろうが支配領土拡大の為に血を流した。犠牲は甚大だ。残った純血種だは強大な魔力持ち故に苦悩した。同胞同士での殺戮の歴史に嫌気がさした。姿を変え隠れて行く者ばかりだった。どこに行ったのか生きているのかもわからなくなった。当然異種族と子を授かる者が増えたんだろうな。俺の様に表舞台に名を出すのは数える程だ。気が付けば戦争だったんだ。だから一族の事、本能の事を殆ど知らずに生きてきたが何も困らなかった。これからもそうだと思ってた」
フィルの過去?一族の歴史の事?
「レオ、俺はお前に逢えて良かったよ」
「知ってる」
「この間の俺の真似か」
「……うん」
「おいで」
横に並び立つと、上着の襟首を掴まれた。何かと思いフィルを見上げる。
「この辺りから気温が上がる。上着は脱いでおいた方がいい。純血種に滅多に会えない理由はわかったか?」
「……うん?」
ラルフ総監がフィルが孤独だと言っていたのか少しわかった気がした。戦争だけでなく同胞が何処にいったのか生死もわからないって悲しくも寂しい事だよね。
「過去は過去だ。ただそれを礎に前に進む事も出来るし、振り返り……まあ色々だな」
フィルはレオの頭にキスを落とした。
「俺は知らない過去を話してくれたのが嬉しい。年数が桁違い過ぎるし知らなくていいから他は聞かない。話したくなったら聞くよ」
「ははっ。これだからレオには敵わない」
「変なこと言った?」
「いや」
フィルはレオを抱き寄せ、暫く緑の景色を眺め、青草の匂いがする風にあたっていた。
「こ、こんな山道って、聞いてないし!」
「地形は変わるもんだな」
「休憩希望シマス」
「体力ないな」
息も絶え絶え訴えてもフィルの足取りは軽くて、かれこれ一時間も坂道を登るって体力訓練か何かデスカ?
教会というか神殿というか、昔ながらの雨乞いや人々が祈りを捧げていた場所があるらしい。古い壁画や文字が残る展望台でもあり、資料として残るそこに向かっているわけだ。
ゴーストタウンと化した地区は整備をしないから、石段も崩れ草木ものび放題で足場が辛くて疲労感が倍になる。
「フィル、昔って噛んで眷族になるって言ってたよね。俺そうなるのはそれでいいんだ」
「……まあ、それは聞いた」
・・・今、何か逡巡して無かった?
フィルのこの顔って、含みある時だってもう知ってるんだけど何かある?何か企んでる?
「俺の執事」発言から始まり、ネタばらしは最後だと言わんばかりにフィルも周りの人達も割と人を躍らせて楽しむ悪癖がある。
「……何だその顔は」
「どんな顔デスカ」
「俺を叱る前の顔だ」
「わかってるじゃないですか」
「まだ怒られる事を何もして無いが」
「まだ!?」
沈黙。そしてフィルの苦笑。
俺、深読みし過ぎ何だろうか。
フラッグさんとノールさんは同じ世代だと聞いた。噛むのは好ましい相手にそうなる衝動的行動の様に言っていた。物語で言ういわゆる眷属化。でもそれは一族同士の話らしい。
「レオ、身体の変化を心配してるんだ。それを調べる旅だろ?」
「……意味と理由知りたい、収穫無しって違和感あったんだけど」
「……お前は聡いが、考え過ぎは良く無い。休憩終わりだ。まだ半分だぞ」
今、片眉上がったよね。誤魔化した?
「レオ、聞いてるか。まだ、半分だ」
「え、……ぅええ」
慌てて先を行くフィルを追いかけた。
「拗ねるのはやめたのか」
鉄道の旅を再開して個室で読書をしてる俺。
ノールさんと回収に行ったと言う、魔人族の娯楽小説は血と戦争に愛と憎しみの奥様向け肉欲劇場だった。途中なのに我慢出来ず感想を声に出す。
フィルに久し振りに容赦無く、しかも元妻のいる屋敷であんあん言わされたのは流石になけなしの自尊心が傷ついた。拗ねるのも当然だ。
俺がプンスコしてたってフィルには面白く楽しい事らしく観察する様に見てくる。機嫌取りのキスとか謝ってくれてもいいのに、機嫌が直る過程を楽しんでいる時がある。そういうとこは嫌いだ。
自分はいつまでも根に持つタイプじゃない。
どっかで切り替えないと疲れるだけだから。
「帝国と名が付く所は基本殺戮の歴史だろ」
「そんな感じってわかるけど」
実際皇帝が己は神の如き象徴として各地を支配し占領目的の戦争を始めるのが大体セオリーだもんね。フィルも殺戮参戦したのかとか聞かない。そんな何百年もの過去は別に必要ない。
それを聞くなら俺だって転生しまくって、魔物やら子供やらに生まれよくわからない世界に飛んでるのを全部説明しなきゃいけない気になる。
お互いが好きで想いが通じてたって総て知らなくていい。人は秘密を持つものだろ。それで付き合ってたってバランスが保てると俺は思ってる。
大陸は平和だ。現帝国に皇帝はいるけど遺制を存続させる為の地位で実質王政になっているので、役目も王と変わらない。
娯楽小説とは言え、この国の過去がベースでそうだったと思えば少しゾッとする気持ちもある。
フィルはそんな時代を生きてきた。それでも今、この時代に、この世界に俺もいて一緒の時を過ごしてる。過ごしてる行ける。執事として、恋人として側に入れる事が嬉しいと思う。これは幸せなんだよな。
「拗ねてるのがいいんだけどな」
「変」
「だよな」
「わかってるならワザと怒らせるとか無し」
「そんな回りくどい事して無い。偶々そうなるんだ」
「たまたま?」
ああもう。この人は俺を嬉しく楽しく、そしてイラつかせる。鼻で笑われると想像できたから、本に視線を戻し続きを読む事にした。
「レオ、俺をもっと構え」
「読書シマス」
ほらね。くくっと、楽しそうに笑うんだ。
旧帝都前でまた駅に降り立った。少し集落があるようだけど緑多き田舎には変わらない。フィルは懐かしそうに遠くを見ていた。
「ここは戦時中多くの魔人族が住んでた。当時は同族だろうが支配領土拡大の為に血を流した。犠牲は甚大だ。残った純血種だは強大な魔力持ち故に苦悩した。同胞同士での殺戮の歴史に嫌気がさした。姿を変え隠れて行く者ばかりだった。どこに行ったのか生きているのかもわからなくなった。当然異種族と子を授かる者が増えたんだろうな。俺の様に表舞台に名を出すのは数える程だ。気が付けば戦争だったんだ。だから一族の事、本能の事を殆ど知らずに生きてきたが何も困らなかった。これからもそうだと思ってた」
フィルの過去?一族の歴史の事?
「レオ、俺はお前に逢えて良かったよ」
「知ってる」
「この間の俺の真似か」
「……うん」
「おいで」
横に並び立つと、上着の襟首を掴まれた。何かと思いフィルを見上げる。
「この辺りから気温が上がる。上着は脱いでおいた方がいい。純血種に滅多に会えない理由はわかったか?」
「……うん?」
ラルフ総監がフィルが孤独だと言っていたのか少しわかった気がした。戦争だけでなく同胞が何処にいったのか生死もわからないって悲しくも寂しい事だよね。
「過去は過去だ。ただそれを礎に前に進む事も出来るし、振り返り……まあ色々だな」
フィルはレオの頭にキスを落とした。
「俺は知らない過去を話してくれたのが嬉しい。年数が桁違い過ぎるし知らなくていいから他は聞かない。話したくなったら聞くよ」
「ははっ。これだからレオには敵わない」
「変なこと言った?」
「いや」
フィルはレオを抱き寄せ、暫く緑の景色を眺め、青草の匂いがする風にあたっていた。
「こ、こんな山道って、聞いてないし!」
「地形は変わるもんだな」
「休憩希望シマス」
「体力ないな」
息も絶え絶え訴えてもフィルの足取りは軽くて、かれこれ一時間も坂道を登るって体力訓練か何かデスカ?
教会というか神殿というか、昔ながらの雨乞いや人々が祈りを捧げていた場所があるらしい。古い壁画や文字が残る展望台でもあり、資料として残るそこに向かっているわけだ。
ゴーストタウンと化した地区は整備をしないから、石段も崩れ草木ものび放題で足場が辛くて疲労感が倍になる。
「フィル、昔って噛んで眷族になるって言ってたよね。俺そうなるのはそれでいいんだ」
「……まあ、それは聞いた」
・・・今、何か逡巡して無かった?
フィルのこの顔って、含みある時だってもう知ってるんだけど何かある?何か企んでる?
「俺の執事」発言から始まり、ネタばらしは最後だと言わんばかりにフィルも周りの人達も割と人を躍らせて楽しむ悪癖がある。
「……何だその顔は」
「どんな顔デスカ」
「俺を叱る前の顔だ」
「わかってるじゃないですか」
「まだ怒られる事を何もして無いが」
「まだ!?」
沈黙。そしてフィルの苦笑。
俺、深読みし過ぎ何だろうか。
フラッグさんとノールさんは同じ世代だと聞いた。噛むのは好ましい相手にそうなる衝動的行動の様に言っていた。物語で言ういわゆる眷属化。でもそれは一族同士の話らしい。
「レオ、身体の変化を心配してるんだ。それを調べる旅だろ?」
「……意味と理由知りたい、収穫無しって違和感あったんだけど」
「……お前は聡いが、考え過ぎは良く無い。休憩終わりだ。まだ半分だぞ」
今、片眉上がったよね。誤魔化した?
「レオ、聞いてるか。まだ、半分だ」
「え、……ぅええ」
慌てて先を行くフィルを追いかけた。
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