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未来へと歩む道
17、反省する事何回目
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「わかってるじゃないか」
「容赦ないなあ。お、かなり持ってんな」
「全部貰うぞクソガキ、前見て歩け」
男達は満足したようで、俺を転がし二、三回思いっきり蹴りを入れてくれて何処かに行った。
くそう。クソだ。前もあったぞコレ。
腹が痛い。殴られた顔も痛い。丸まって蹲っていても誰も助けてくれやしない。面倒は皆嫌いだからな。わかるよ。
それでもフィルは俺を拾ってくれた。
俺の心を占めるのはフィル。
またジワジワ涙が出て来たのがわかった。
俺らしくない。
フィルが追々教えてくれるなら待てばいいじゃないか。一人で鬱屈して変な事考えるからこうなるんだ。なんでも話せばいいじゃないか。フィルを困らせたっていいじゃないか。答えを待つべきなんだ。
甘やかされ甘えて気が大きくなってたんだ。好き合っても他人だ。何もかもは分かち合えないのを忘れてないか?
嗚咽が聞こえた。
俺、泣いてるよ。
ははっ、チクショウ。
帰って謝ろう。
仲良くしたい。
抱きつきたい。
キスしたい。
今世の俺は執事でフィルの恋人だって自分で道を選んだんだ。
「……いっ」
ゆっくり身体を起こして激痛が走った。肋骨かな。ヒビでも入ったかな。ポタポタと滴るのは鼻血だ。もう直ぐ止まるはず。
シャツに赤いシミを作り、蹴られ転がり土まみれになっていた。髪も前に後ろにボサボサになってたのもわかった。
それでも頭に浮かぶのはフィルがラウダさんにキスしたところだった。
だって二人の雰囲気が知り合いや友達じゃないのが俺にだってわかる。エウリル夫人とはまた違う、昔付き合ってたとかそんな近しい関係に見えた。
考えなくていい。
フィルに聞けばいい。
それだけだ。
なのに涙と嗚咽は止まらなかった。
俺、重症。
『主の手綱を握るのも執事ですぞ』
バルの声が聞こえた気がした。俺にできる?
フィルにいいように掌で遊ばれてるのが俺。
無理じゃないかな。俺にちゃんとできる?
道行く人は俺を遠巻きに見ては通り過ぎる。
俺もは気にせず泣き続けた。
座り込んで、ぐしょぐしょに泣き枯れ疲れた頃だった。呆然と座り込んでいたレオに駆け寄るのは騒ぎを聞きつけた巡回騎士なのか、二人の男が走ってきた。
「えぇー!レオ君!?どしたの、大丈夫?」
「えっ、雪月花!?」
目の前に座り込んで名前を呼んだのはニルだった。南部副官執事って言っていたのを思い出す。ここは南部の主要地区。冷静にここにニルがいるのも不思議じゃないと考えたのが可笑しくて、ふにゃりと力なく微笑んだ。
顔は泣き過ぎ殴られ目も瞼も頬も赤く腫れ、鼻血は乾燥し、髪も服も泥塗れのレオ。弱々しく笑ったのが痛々しかった。
「大公は?」
「……ぅ」
名前を聞くとまた悲しくなって来るのが不思議だった。ジワジワ滲む涙をぐっと堪えた。
「えーと、ほら立てる?手当てするから番所いこか、レオ君、引っ張るよー」
「……っぐ」
手を引かれ立とうと前屈して激痛が走り絶句した。息が詰まるとはこの事だ。
「肋骨やったんじゃないか?」
「まじすかー。レオ君おぶるよ。いいかい?番所まで頑張れ。医術師いるから行こ?」
顔を心配そうに覗き込むニルに頷き、痛む胸を息を止め我慢して背に乗った。
「揺れるけど我慢してねー」
「五分くらいだ。頑張れ」
揺れる背中に、激痛に、睡眠不足に温かい背中に疲れたレオは限界だった。プツリと意識がそこで途絶えた。
明るい。眩しい。
・・・何だっけ。
ゆっくりと開眼したレオは経緯を少しずつ思い出し、それは小さな溜息に変わる。
ここは軍部の番所で医務室かな。俺、どのくらい寝たのかな。怪我は治療してくれてるよね。フィルに迷惑かけちゃダメだ。シューも怒られたかな。早く帰らないと。
レオはベッドから飛び起きた。
ガタンッ
「……ぁれ?」
鈍痛に動きが止まり立ち眩みに座り込んだ。
痛い。痛むんだけど。医術師いるって言ってなかった?
「……ぅ」
どこもかしこも疼く痛みだった。それでも気持ちは軽くなっていた。ウダウダ悩んでいたのがアホらしい程だ。ヒロイン面で病んでるのは辞めだ。嫉妬した。反省した。終わり。切り替えるに限る。
「……次だ次」
「レオ君起きたんだ!ダメだよ寝てなきゃ。高熱が出たんだからさー、ほらベッドにね」
ニルはへたり込んだレオを起こし、ベッドに戻した。
「熱」
「そうだよ丸一日寝てた。ところで大公は?居場所掴めないんだけど何処にいるんだ?この地区に知り合いいる?」
「丸一日?え、あの」
よく知らない。メルダさんアンフィルの何?一族は名や姿を変え、表に出てるか裏で隠遁してるかの二極。メルダさんはどっち?
家の場所もわからない。説明しようがない。そして丸一日寝てたって事は、完全自爆。
「……連絡取れない」
「マジで?!」
「地区にはいます」
「えー、それじゃわからないよ」
「……ごめんなさい」
「責めてないよ、どーすっかなあ」
これ怒られるよなあ。でもフィルがいけないんだ。隠し事するしメルダさんと仲良くするし、責任転嫁でもなんでもいいよ!
俺、悪くないもんね!
「……ール、さん」
「え?」
「軍関係って言ってた。ノールさん」
「ノール・ハザヴェイ?」
「多分それです」
「それとか言わない。南部長官だよ。上司」
「……えぇ」
「容赦ないなあ。お、かなり持ってんな」
「全部貰うぞクソガキ、前見て歩け」
男達は満足したようで、俺を転がし二、三回思いっきり蹴りを入れてくれて何処かに行った。
くそう。クソだ。前もあったぞコレ。
腹が痛い。殴られた顔も痛い。丸まって蹲っていても誰も助けてくれやしない。面倒は皆嫌いだからな。わかるよ。
それでもフィルは俺を拾ってくれた。
俺の心を占めるのはフィル。
またジワジワ涙が出て来たのがわかった。
俺らしくない。
フィルが追々教えてくれるなら待てばいいじゃないか。一人で鬱屈して変な事考えるからこうなるんだ。なんでも話せばいいじゃないか。フィルを困らせたっていいじゃないか。答えを待つべきなんだ。
甘やかされ甘えて気が大きくなってたんだ。好き合っても他人だ。何もかもは分かち合えないのを忘れてないか?
嗚咽が聞こえた。
俺、泣いてるよ。
ははっ、チクショウ。
帰って謝ろう。
仲良くしたい。
抱きつきたい。
キスしたい。
今世の俺は執事でフィルの恋人だって自分で道を選んだんだ。
「……いっ」
ゆっくり身体を起こして激痛が走った。肋骨かな。ヒビでも入ったかな。ポタポタと滴るのは鼻血だ。もう直ぐ止まるはず。
シャツに赤いシミを作り、蹴られ転がり土まみれになっていた。髪も前に後ろにボサボサになってたのもわかった。
それでも頭に浮かぶのはフィルがラウダさんにキスしたところだった。
だって二人の雰囲気が知り合いや友達じゃないのが俺にだってわかる。エウリル夫人とはまた違う、昔付き合ってたとかそんな近しい関係に見えた。
考えなくていい。
フィルに聞けばいい。
それだけだ。
なのに涙と嗚咽は止まらなかった。
俺、重症。
『主の手綱を握るのも執事ですぞ』
バルの声が聞こえた気がした。俺にできる?
フィルにいいように掌で遊ばれてるのが俺。
無理じゃないかな。俺にちゃんとできる?
道行く人は俺を遠巻きに見ては通り過ぎる。
俺もは気にせず泣き続けた。
座り込んで、ぐしょぐしょに泣き枯れ疲れた頃だった。呆然と座り込んでいたレオに駆け寄るのは騒ぎを聞きつけた巡回騎士なのか、二人の男が走ってきた。
「えぇー!レオ君!?どしたの、大丈夫?」
「えっ、雪月花!?」
目の前に座り込んで名前を呼んだのはニルだった。南部副官執事って言っていたのを思い出す。ここは南部の主要地区。冷静にここにニルがいるのも不思議じゃないと考えたのが可笑しくて、ふにゃりと力なく微笑んだ。
顔は泣き過ぎ殴られ目も瞼も頬も赤く腫れ、鼻血は乾燥し、髪も服も泥塗れのレオ。弱々しく笑ったのが痛々しかった。
「大公は?」
「……ぅ」
名前を聞くとまた悲しくなって来るのが不思議だった。ジワジワ滲む涙をぐっと堪えた。
「えーと、ほら立てる?手当てするから番所いこか、レオ君、引っ張るよー」
「……っぐ」
手を引かれ立とうと前屈して激痛が走り絶句した。息が詰まるとはこの事だ。
「肋骨やったんじゃないか?」
「まじすかー。レオ君おぶるよ。いいかい?番所まで頑張れ。医術師いるから行こ?」
顔を心配そうに覗き込むニルに頷き、痛む胸を息を止め我慢して背に乗った。
「揺れるけど我慢してねー」
「五分くらいだ。頑張れ」
揺れる背中に、激痛に、睡眠不足に温かい背中に疲れたレオは限界だった。プツリと意識がそこで途絶えた。
明るい。眩しい。
・・・何だっけ。
ゆっくりと開眼したレオは経緯を少しずつ思い出し、それは小さな溜息に変わる。
ここは軍部の番所で医務室かな。俺、どのくらい寝たのかな。怪我は治療してくれてるよね。フィルに迷惑かけちゃダメだ。シューも怒られたかな。早く帰らないと。
レオはベッドから飛び起きた。
ガタンッ
「……ぁれ?」
鈍痛に動きが止まり立ち眩みに座り込んだ。
痛い。痛むんだけど。医術師いるって言ってなかった?
「……ぅ」
どこもかしこも疼く痛みだった。それでも気持ちは軽くなっていた。ウダウダ悩んでいたのがアホらしい程だ。ヒロイン面で病んでるのは辞めだ。嫉妬した。反省した。終わり。切り替えるに限る。
「……次だ次」
「レオ君起きたんだ!ダメだよ寝てなきゃ。高熱が出たんだからさー、ほらベッドにね」
ニルはへたり込んだレオを起こし、ベッドに戻した。
「熱」
「そうだよ丸一日寝てた。ところで大公は?居場所掴めないんだけど何処にいるんだ?この地区に知り合いいる?」
「丸一日?え、あの」
よく知らない。メルダさんアンフィルの何?一族は名や姿を変え、表に出てるか裏で隠遁してるかの二極。メルダさんはどっち?
家の場所もわからない。説明しようがない。そして丸一日寝てたって事は、完全自爆。
「……連絡取れない」
「マジで?!」
「地区にはいます」
「えー、それじゃわからないよ」
「……ごめんなさい」
「責めてないよ、どーすっかなあ」
これ怒られるよなあ。でもフィルがいけないんだ。隠し事するしメルダさんと仲良くするし、責任転嫁でもなんでもいいよ!
俺、悪くないもんね!
「……ール、さん」
「え?」
「軍関係って言ってた。ノールさん」
「ノール・ハザヴェイ?」
「多分それです」
「それとか言わない。南部長官だよ。上司」
「……えぇ」
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