俺はいつも拾われている

つちやながる

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未来へと歩む道

18、帰る場所

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「あ。イタい子だ」
「レオ君の事っすかー?」
「口を開けば見た目とギャップの残念な子って意味だ。で、何故ここに居る」

ニルは掻い摘んでレオが絡まれてボコられたと説明した。

「おいおい、ノーマークなのに何でそうトラブル巻き込まれるんだ」
「……知りません」
「ノーマーク?またわかんない事を。長官、大公に迎え頼んで下さいよ。レオ君宿泊場所覚えてないって。任せていいですか」
「迷子か。迷子なのか?」

ニヤニヤして俺を見るなよフリーダム長官。
もう反省したし進みたいし素直になるし。

「迷子デス」
「ぶはっ、はははっ!」

吹きやがった。笑い飛ばしやがった。

知ってる?ヒロイン面やめたけど今、復活前の抜け殻でスポンジメンタルなんだよ。スカスカで奥まで染み込む侵食型ハートなんだ。

笑われただけなのにジワリと涙が滲む。

「ニルさん」
「身体痛むのか?術師呼ぼうか」
「大丈夫です。色々ありがとう」
「どういたしまして。早く大公のトコに帰りなよー?」

弱ってる時これくらいの優しさが丁度いい。顔がよくたって万人に好かれるわけじゃない事くらい知ってる。
ニルは仕事に戻ると部屋を出た。残るはよくわからないノール長官。

「で?」
「地図下さい」
「ああ?」
「自分で帰ります。執事が主に迎えに来て貰うなんてダメな事です」
「恋人なんだろ」
「……今いる所で執事と紹介されたし、」
「お前ら面倒くせえな」

ノールは左手を前に拳を作り、ゆっくりと広げると山で見た青い小鳥が現れた。どんな術構成か知らないけどフィルに連絡が行くのは明白だった。

「待って!」

レオはベッドから飛び起きた。小鳥を捕まえようとしても手をすり抜け、壁をすうっと通り抜け飛び去っていった。

ノールを振り返ると肩を竦めていた。

「……おっさん」
「ああ?!」
「待って、って言ったんだけど!」
「知るか!俺はお前の子守じゃねえ!」

立ち眩みも無い。全身関節痛もだいぶマシな気がする。迎えに来て貰うなんてとんでも無い。それこそ貴族社会であり得ない事だ。

「いいです帰ります。お世話になりました」

ノールが入って来たドアを開け、薄暗い石壁の廊下の左右を見て、むあっとした生暖かい臭気を吸った。

「?」

レオは思わず後退してドアを閉めた。

「どうした。帰るんじゃないのか」
「……な、なんでこの部屋と空気が」
「医務室だからな。適温にする術も使うし、落ち着く部屋にするのが普通だろ。廊下は窓が無いし空気が淀む。北より気温高いし奥は武具倉庫だから余計に臭うんだろ」
「え、えぇ」
「帰れ帰れ」

シッシッと手で追い払うノール。
レオはドアの前で立ち尽くした。

ヤバイ。ヤバイよ廊下。あの臭い知ってる。例えるなら臭いの染み込んだ剣道着。すえた汗だくの服、蒸れた靴の中の臭いだよ!こ、これはキツイ。口呼吸でいく?俺いける?

最早レオには目前のドアが、有毒ダンジョンの入り口でしかなかった。

「……出口は右?左デスカ?」
「右だなあ。その恰好でいくのか?」

土と血で汚れた服を脱がされたレオは、簡素な一枚布の貫頭衣になっていた。薄いワンピースみたいなものだ。

ドアノブを握ったまま動かないレオにノールは苦笑した。



「落ち着きなさいよ」
「わかってる」

メルダは窓の外を眺めては部屋の中を徘徊するアンフィルを冷ややかな視線で追う。

「座ってお茶でも飲めば?」
「いや、いい」

二人で行動すると決めてたのが裏目に出た。レオは聡い。よく思案するし頑固だ。まさかこの旅に疑問を持つとは思わなかった。
休暇と体の心配をしての旅だと言ったのに、始祖まで逆算するとかあれは何なんだ。
疑問をぶつけてくるレオはしつこい。今回はまた予想外だった。

答えはある。

あるが、アレがどう思うか。
・・・怒るな。いや、予想不可能だ。
有耶無耶にしてレオの生きる時間に俺が一緒につき添えればいい。それでいいと思った。
確かに変化を知った時は、レオの人としての一生を自分が壊したと。せめてどうなるか知っておいた方がいいと考えた。
メルダの答えは今の気持ちそのものだ。どうなるかわからない。不確か。もうそれで良かった。

あれは俺から離れられない。何もかも話せる友も作らせてない。俺とバルがいれば良い。

勝手だと傲慢だと罵られようと、レオをもう手放す気は微塵も無い。あれは俺のだ。囲いの中で、俺の側で生きればいい。

わざと距離を作り一人にして寂しさを感じれば、大人しく甘えてくるだろうと思った。
最近子供っぽさが抜け落ち着いてきた所為か突拍子も無い事をやってのける性格を忘れていた。目を離すとコレだ。

まさかの行方不明。

旧帝都は広い。地区と呼ばれて地下もある。ノールに連絡を入れたが上手く見つかるか。

「アンフィル、来たわ」

部屋の壁から飛び込んで来たのは青い小鳥。魔力形成された鳥は、目的地に着くと霧散して古語を空に描き消えていく。純血種だけが使える術だった。

「怪我して一日寝てたのね」
「本部か。行ってくる」
「アンフィル、従僕如き人をやるか、軍部に依頼すればいいでしょうに」
「あれは俺の執事だ。自分で行く」
「……そう。着替えくらい持っていけば?」
「そうか。そうだな」

メルダはかつて無いほど落ち着きの無いアンフィルを見送った。

産まれた時から知っている。気位が高く誰も寄せ付けず周りを見下し、大戦も疑問も持たずに手を血で染めたアンフィル。

可愛い執事を側に置いた噂は聞いていた。
久し振りに会ったアンフィルは柔らかく、人らしく穏やかに変わっていた。
ちらちらと優しい視線を送るのに執事と紹介して、こんなに心配しておいてまだ執事だと言う。

「……わかりやすい子ね」



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