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未来へと歩む道
19、腹の立つ生き物
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「……もう、いいです」
「食が細いからチビなんだろ、食え」
「違います。もう無理デス」
レオはノールの横でフォーク片手にその手がプルプル震えていた。
ドアノブを持って固まっていたら、物凄い音を出して腹が鳴った。そりゃ丸一日寝てたら腹も空腹になる。ノールは大爆笑だった。そしてノールに腕を掴まれ有毒ダンジョンを鼻をつまんで脱出し、軍の食堂に連れて来られたのだ。
テーブルの上のディッシュには肉肉しい塊のステーキ、パン、野菜なんかひと匙だ。
見ただけで胸焼けする量を食い切れるわけがないと、胃袋限界でプルプルしていた。
「こ、これ食べませんか」
「俺のもどうぞ!」
「また増えたな、ははは!」
レオは差し出される皿と持ってくる武官たちをキッと睨んで押し返す。
「要りません」
軍服の上着を借りても裾は太腿半ばまであり袖も余り過ぎた。ズボンは簡易半ズボンだ。レオの容姿とその服装で、食堂に入った途端武官たちはどよめき、彼シャツとはまた違う可愛さで男心を燻らせた。
ノールがコレは男だと釘をさしても肉の周りにデザートが増殖し続けた。
ニルとその友人から雪月花の君だとバレているのだ。
「二割も減ってない。デザートは食えるか。これ食えたら帰っていいぞ」
「半分で」
「ああ?ただのフルーツだろ、全部だ」
「無理デス」
何言ってんだ。どうみても盛合せ二人分だ。食えるかよ。明らかに残るだろ。勿体無い。
レオは適当にひとつフォークにブッ刺して、肘をつきニヤけて自分を眺めるノールの口元に持って行った。
「何だ。食えって?」
「……ん」
「貰うか」
ノールは驚きつつ食いついた。顔は可愛いレオだ。上目に見られて断る訳もなかった。
次は食べた事がなかったのか、ひと口齧って口に合わないような微妙な顔をして、それをノールに突き出した。
「……食い掛けだろ」
「この味嫌い。残すの勿体無いデス」
ほれほれとフォークをゆらゆらさせるレオ。無意識に小首を傾げる姿は『た・べ・て?』と言ってるようにしか見えなかった。
近くに座る武官たちは身悶えた。ノールも、これはアンフィルが参るのも解るような気がしてきていた。
ざわざわと騒めく食堂。長官とレオの異色の組み合わせに皆集中していた。
仕方ないと果物に食いつこうとしたノールの前からそれが消えた。
「?」
「あ」
レオの腕を掴み、フォークを咥えたのはアンフィルだった。直ぐに嚥下し、レオの横で屈んで頬にキスを落とす。
「帰るぞ」
「……うん」
「おい、アンフィル」
「保護に礼を言う」
有無を言わさぬ雰囲気でレオをぐいぐい引き連れて行くアンフィルは、誰もそれを止める事は出来なかった。その必要も無かった。
レオはチラリと視線をノールにやりバイバイと小さく手を振った。
ゴンッ
「長官?!」
「えっ」
ノールはテーブルに突っ伏した。
あれは駄目だ。わかった。生意気なだけじゃない。無意識に行動が可愛い小動物の様なやつだ。あれで男なのか。腹立つ生き物だな!
アンフィルの険しい目は本気で俺を殺しかねないヤバイやつだ。汽車のキスは大丈夫だったよな?何が違う。
・・・レオか。
レオが自分から何かすると嫉妬してるのか?
おいおいマジか。やり難いな!俺もやり方変えねーと、とばっちり食うぞコレ。
ノールはテーブルの上に残る食べ物ハーレムに溜息をついた。
食堂を後にしたアンフィルはレオを無言で引き連れていた。
帰るってどこに?
メルダさんの家?
帝都?
聞きたいことが沢山ある。フィルが何も言わないならそれでもいいと諦めもついて来た。側に居れたらそれでいい。執事でいれたら、それでいいんだ。
「迎え来てくれて有難う。ごめんなさい」
口に出すと簡単だ。何を言うか選ぶのが大変だと思った。
フィルが無言で立ち止まる。右側にあるドアに肩で押し開け入るようだ。腕を掴まれたレオはついて行くしかない。
「……った」
ドアが閉まった途端両腕をきつく掴まれ、壁に押し付けられた。見えるのは目の前のフィル。
「腹が立つ。お前は思い通りにいかない」
言われた意味が全く理解不能なレオはきょとんとした顔で瞬きしてフィルを見上げた。
「俺を困らせるばかりのお前は何なんだ。農民だろうが頭がいい。大人顔負けの冷静さと順応性。言えばキリがない。レオ、お前は何者だ。この大陸の人間なのか?俺は、お前がつかめない。底が見えない。正直時々恐ろしい」
「……ぇ」
なに?俺、否定されてる?
真顔で急に何言ってんの?
レオは一気に不安に包まれた。弱っていたメンタルが侵食され目が涙で滲む。
「レオのような人間は初めてだ。俺の心を掻き乱すのはレオだけだ。腹が立つ上に可愛くて愛おしい。俺のレオ。俺の執事。側から離れるな。俺の側で生きればいい」
お、俺、何て言えばいい?
反応に困ったレオは、真顔のアンフィルに向かい、ぽかーんと口を開けて固まっていた。
フッと微笑を浮かべるのはいつもの柔和なフィルだった。
「レオ。変な顔だな」
「……ふぁっ?」
「ははっ、怪我は直して貰ったな?俺もそろそろ腹を括るか。城跡に行くぞ」
「え?」
ぜ、全然わかんないんだけど??
アンフィルはレオの混乱を余所に優しく抱き締めた後、再び腕を引き城跡に向かい歩き始めた。
「食が細いからチビなんだろ、食え」
「違います。もう無理デス」
レオはノールの横でフォーク片手にその手がプルプル震えていた。
ドアノブを持って固まっていたら、物凄い音を出して腹が鳴った。そりゃ丸一日寝てたら腹も空腹になる。ノールは大爆笑だった。そしてノールに腕を掴まれ有毒ダンジョンを鼻をつまんで脱出し、軍の食堂に連れて来られたのだ。
テーブルの上のディッシュには肉肉しい塊のステーキ、パン、野菜なんかひと匙だ。
見ただけで胸焼けする量を食い切れるわけがないと、胃袋限界でプルプルしていた。
「こ、これ食べませんか」
「俺のもどうぞ!」
「また増えたな、ははは!」
レオは差し出される皿と持ってくる武官たちをキッと睨んで押し返す。
「要りません」
軍服の上着を借りても裾は太腿半ばまであり袖も余り過ぎた。ズボンは簡易半ズボンだ。レオの容姿とその服装で、食堂に入った途端武官たちはどよめき、彼シャツとはまた違う可愛さで男心を燻らせた。
ノールがコレは男だと釘をさしても肉の周りにデザートが増殖し続けた。
ニルとその友人から雪月花の君だとバレているのだ。
「二割も減ってない。デザートは食えるか。これ食えたら帰っていいぞ」
「半分で」
「ああ?ただのフルーツだろ、全部だ」
「無理デス」
何言ってんだ。どうみても盛合せ二人分だ。食えるかよ。明らかに残るだろ。勿体無い。
レオは適当にひとつフォークにブッ刺して、肘をつきニヤけて自分を眺めるノールの口元に持って行った。
「何だ。食えって?」
「……ん」
「貰うか」
ノールは驚きつつ食いついた。顔は可愛いレオだ。上目に見られて断る訳もなかった。
次は食べた事がなかったのか、ひと口齧って口に合わないような微妙な顔をして、それをノールに突き出した。
「……食い掛けだろ」
「この味嫌い。残すの勿体無いデス」
ほれほれとフォークをゆらゆらさせるレオ。無意識に小首を傾げる姿は『た・べ・て?』と言ってるようにしか見えなかった。
近くに座る武官たちは身悶えた。ノールも、これはアンフィルが参るのも解るような気がしてきていた。
ざわざわと騒めく食堂。長官とレオの異色の組み合わせに皆集中していた。
仕方ないと果物に食いつこうとしたノールの前からそれが消えた。
「?」
「あ」
レオの腕を掴み、フォークを咥えたのはアンフィルだった。直ぐに嚥下し、レオの横で屈んで頬にキスを落とす。
「帰るぞ」
「……うん」
「おい、アンフィル」
「保護に礼を言う」
有無を言わさぬ雰囲気でレオをぐいぐい引き連れて行くアンフィルは、誰もそれを止める事は出来なかった。その必要も無かった。
レオはチラリと視線をノールにやりバイバイと小さく手を振った。
ゴンッ
「長官?!」
「えっ」
ノールはテーブルに突っ伏した。
あれは駄目だ。わかった。生意気なだけじゃない。無意識に行動が可愛い小動物の様なやつだ。あれで男なのか。腹立つ生き物だな!
アンフィルの険しい目は本気で俺を殺しかねないヤバイやつだ。汽車のキスは大丈夫だったよな?何が違う。
・・・レオか。
レオが自分から何かすると嫉妬してるのか?
おいおいマジか。やり難いな!俺もやり方変えねーと、とばっちり食うぞコレ。
ノールはテーブルの上に残る食べ物ハーレムに溜息をついた。
食堂を後にしたアンフィルはレオを無言で引き連れていた。
帰るってどこに?
メルダさんの家?
帝都?
聞きたいことが沢山ある。フィルが何も言わないならそれでもいいと諦めもついて来た。側に居れたらそれでいい。執事でいれたら、それでいいんだ。
「迎え来てくれて有難う。ごめんなさい」
口に出すと簡単だ。何を言うか選ぶのが大変だと思った。
フィルが無言で立ち止まる。右側にあるドアに肩で押し開け入るようだ。腕を掴まれたレオはついて行くしかない。
「……った」
ドアが閉まった途端両腕をきつく掴まれ、壁に押し付けられた。見えるのは目の前のフィル。
「腹が立つ。お前は思い通りにいかない」
言われた意味が全く理解不能なレオはきょとんとした顔で瞬きしてフィルを見上げた。
「俺を困らせるばかりのお前は何なんだ。農民だろうが頭がいい。大人顔負けの冷静さと順応性。言えばキリがない。レオ、お前は何者だ。この大陸の人間なのか?俺は、お前がつかめない。底が見えない。正直時々恐ろしい」
「……ぇ」
なに?俺、否定されてる?
真顔で急に何言ってんの?
レオは一気に不安に包まれた。弱っていたメンタルが侵食され目が涙で滲む。
「レオのような人間は初めてだ。俺の心を掻き乱すのはレオだけだ。腹が立つ上に可愛くて愛おしい。俺のレオ。俺の執事。側から離れるな。俺の側で生きればいい」
お、俺、何て言えばいい?
反応に困ったレオは、真顔のアンフィルに向かい、ぽかーんと口を開けて固まっていた。
フッと微笑を浮かべるのはいつもの柔和なフィルだった。
「レオ。変な顔だな」
「……ふぁっ?」
「ははっ、怪我は直して貰ったな?俺もそろそろ腹を括るか。城跡に行くぞ」
「え?」
ぜ、全然わかんないんだけど??
アンフィルはレオの混乱を余所に優しく抱き締めた後、再び腕を引き城跡に向かい歩き始めた。
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