俺は帰りたいんですが。

つちやながる

文字の大きさ
66 / 71
第二章 勇者召喚

にわか雨の流れ着く先

しおりを挟む
「皆さん短い間でしたがお世話になりました!私は故郷に帰ります。それではっ!」

 ミミとは国への分岐で別れる。元々の約束事だからだ。ペコリとお辞儀をして、顔を上げたミミはいい笑顔だった。

「家まで送ろう」
「えっ、そんな、いいですよっ!」

 ライバの申し出を、両手をブンブン振り全力で断るミミ。本気で嫌がってる訳でもなさそうだ。下山中、仲よく歩く二人を不思議に思っていたが。俺の不在で何かあったと想像したのは、色眼鏡じゃなかったようだ。

「何だその目は、ルー」
「別に」

 半目だ。今俺がイケメンだとしても、羨むこの目は必要だ。

「あの食いっぷりも可愛いく思えてな」
「ほほう?」
「何じゃ告白か」
「あわわわわっ!あのっ、ルーさん、トメちゃん、またいつか会いましょうっ!プーさんにもよろしくですよっ!」

 ミミは顔を真っ赤にして走り出した。マントからはみ出た尻尾はブワッと膨らんでぴーんとなったまま。
 ライバは頭を掻いて苦笑した。

「あー。それで俺は、砕けるまで押してみるつもりだ。ルー、無事帰れよ。最強の友が出来たから後は大丈夫だろ」
「……まあな」
「任せるのじゃ」
「いつかエルフの故郷に来いよ」
「ああ」
「じゃあな」

 ライバはミミを追いかけた。

「……クソだ」
「なんじゃ、羨ましいのか」
「それもあるし色々ある。俺は故郷に帰るのが先だ。道はこっちか?トメちゃんはどれ程早く走れる?」

 理由が理由だけにキラキラエルフのあっさりした別れに感傷も更に薄くなった。切り替えよう。

「魔力で何とでもなるのじゃ。して、あれはどうするつもりかの」
「何でそれ言うんだ」
「ルーは意外に冷めたトコがあるのう」
「あれは人間だろ」
「わかって聞いておるのじゃ」

 トメちゃんが怖いのか、羽鳥は頭上高く旋回していた。岩場を転がり落ちた重装騎士の鎧は凹み傷がつき、破損して外したのか部分装備になっていた。
 そしてフルフェイスはもう無い。赤茶の髪はひとつに束ね肩に付かない程で、瞳はすみれ色の成人女性だった。声がハスキーで話し方からしてもまさかの中身。頭かコメカミからなのか、血が流れて乾燥していた。

 ライバ達は気付いていなかったが、トメちゃんと俺は、離れた距離で追いかけて来るのがわかっていた。

「ケガしてるな」
「そういえば何か弾き飛ばしたかの」
「おいおい」
「我は故意じゃなし事故じゃ。何故に追尾?鳥に乗れば帰れるだろうにの」

 トメちゃんは騎士に向かい立った。まだ距離があるとはいえ何をする気だ。

「そこの人間、何用じゃ!」
「おいっ、これ以上面倒増やすな!」

 咄嗟に怒鳴ったが、トメちゃんの可愛い顔で睨まれた。頼む。マジで。絡むと面倒増えるだろ、すんなり帰りたいだけなんだ。
 トメちゃんが竜じゃなければ抱えて走って逃げる。絶対。あー、黙ります。黙ればいいんすね。半目でそっぽを向く事にした。

「我が名はルクセル!王国陸師団長の誇りと王命のもと、勇者を王の膝もとへ連れ帰るのみ!」
  「勇者、じゃと?」
「その男こそ国で召喚した勇者!少女よ、そなたひとりが連れていい者ではない!」

 トメちゃんから生温い視線をいただいた。
 んだよ。これ全部説明いる?

「なんじゃ、ルーは色々隠し事があるようじゃの」
「待て。要するにあれだ。王国は粛清を蹂躙と思い、魔国は悪、それを撃ち倒すのが、
「竜と勇者というのじゃな?物語じゃ」
「それをあれに話してやってくれ」
「ルーがやるのじゃ。知らぬ人間に親切心なぞ持たぬわ」
「なんだと」
「やるのか犬っころ」
「竜には勝てん」
「あははっ、惨めよの弱き友よ」
「こんの、バ、」
「ば?なんじゃ、言うてみよ」

 顔を見合わせ不敵に笑うトメちゃん。可愛いくせに上から目線って腹立つな。実年齢いくつだ地岩竜。もやもやしてたのに相乗効果てでカリカリした。

「おお、ルーに耳が生えたのじゃ。これは面白い姿よの!」
「なんだと!?」

 バッと両手で頭上の耳を隠すが既に遅し。離れたルクセルにも見えたようだ。あんぐりと口を開け、我に帰ると長剣を構えた。

「ゆ、勇者、貴様っ獣人か!人間じゃない者が召喚されたのか?謀ったな?!」
「違うわ!」

 ポツポツと皮膚に当たるのは水滴。口の両端をあげてニヤニヤするトメちゃんは、面白そうに俺を見た。

「召喚とはなんじゃ?」
「強制転移だ。俺は帰るって言ったぞ」
「なるほどのう」
 トメちゃんは納得したという顔でウンウン頷いた。

「何をつべこべと。とにかく貴様は城へ戻るのだ。処分は王が決める」
「違うと散々言っただろ」
「召喚されたのは貴様だ」
「あー、そうだな、はいはい」

 ・・・面倒くさい。
 誤解をとけばいいのか?説明は長くなる。
 対峙する無言の中、雨音が少しずつ強くなっていた。間を詰めてくるルクセルを見て、ため息をつく。

「さっさとせぬか。焦れったいのじゃ」

 トメちゃんがグルッと喉を鳴らすとコロコロと小石と砂礫が転がり始めた。視線はそれを見上げ、釣られてルクセルも振り向いた。

「えっ、え?!」
「おぉっ?!」

 上方からゴツゴツした大岩が数個、あり得ない速度で跳ね落ちて来ていた。俺は避けれるがルクセルは?あの装備じゃ無理だ。魔法は?考えがまとまる前に身体が動いていた。

 足場を軽く蹴り、ルクセルと岩の間に入った。

 ドッゴッ!!
「た、楯《タブラィレ》!」

 鈍い音と、ルクセルが発した魔法は同時だった。ガラガラと他に落下していく岩の音が反響していた。

「な?!貴様!」
「遅い」

 俺は大岩と魔法楯と思しき魔力の波板に挟まれた。右肩で岩を受け足場の悪さに踏ん張る。魔力を使わずとも、人化だろうと大角熊より小さい岩の力に潰されることは無い。

 更に体重を肩に乗せ止めた岩を押しずらすと、勢いを無くした岩は少しだけ滑落し停止した。

「……魔法が使えるのか。てゆか、トメちゃん何するんだ!下手したら死んでたぞ!」
「焦れったいのじゃ!次じゃルー!」
「はあ?」

 トメちゃんは拳を作り、胸の前でわくわく期待するような顔を見せた。

「か、捕縛《カープティス》!」
「え?」

 ルクセルの声に向き直る。捕縛?
 見ると自分の身体がぎゅっと締め付けられる縄がかかっていた。

「は、ははっ、捕まえたぞ!油断したな!縄は動けば締まるぞ」
「……おい、俺に助けて貰ったんだろ」
「魔法の前に貴様が来ただけだ」
「精々矢を弾く程度だろ」
「貴様が身体で受けれる程度の岩だ」
「……あ、そう」

 イラッ。

「さあ城へついて来てもらおう」

 ルクセルは、俺に巻き付く縄端へ手を伸ばしたが、スッと横にずれて避けた。

「往生際が悪いな」
「トメちゃん、これにもう一回」
「なんじゃ。リクエストかの?」

 意味が通じたトメちゃんは、グルッと喉の音を小さく鳴らした。

「やってみれば」
「えっ?ええっ!?」

 縛られた俺は顎でガラガラと迫り来る大岩を指し示した。雨音は強くなり、足元には泥水が流れ、飛沫を跳ね上げながらそれは向かってくる。

「っ楯《タブラィレ》!」

 ルクセルは長剣を斜めに構え、楯軸に使って魔法を唱えた。その声で見えたのは弱々しい魔力の波動だった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...