6 / 84
よりそう
しおりを挟む
本当にキングスが死んだのかわからない。
だって「またな」って言って出掛けたらちゃんと帰って来てたしなあ。
アイリは、とぼとぼ帰ったし町でちゃんと暮らしているはず。
獣だし時間も日付もわからないのは、獣らしくていいかと思った時もありました。
とりあえず日数を数えることにした。
アイリがきてから約三ヶ月経った。大体。多分。
キングスの家に住み着いて長いし、荷物整理もしたいから最近は人の擬態の練習をしている。
成長して黒だけじゃなくて本当に細部まで色から毛の一本まで擬態出来るようになった。
凄いよ、この魔獣。
そしてモデルは前世の自分。ここは西洋だから日本人じゃないやつになってみた。でもなんでか股間に息子はつかなかった。魔獣として性が無いからかな。服は擬態できないようでキングスのシャツだけ借りてる。彼シャツみたいな事になってて内心苦笑した。
手鏡を見たら懐かしい顔だった。表情も変化できるよう頑張ってる。人になりたい訳じゃなく擬態の極み?自己満足?
だって他にする事がないから。
キングスの部屋はそのままにしていたけど、もう十年も経ったんだね。
散らかしたままだったから埃も凄いし整理させてもらおう。捨てはしないから。
これは日記だろうか。
紙の山の中から出て来たのは厚めの手帳。見るもんじゃないよね人の日記なんて。
それ以前にこの世界の字が読めない事に気がついた。
パラパラとめくるとセピア色の写真が挟まっているのを見つけた。写真機ある世界なんだ。これはキングスと女の人だ。若い二人が仲良く並んで笑ってる。大事にしてるという事は彼女か嫁さんかなあ。
無精髭のおっさん顔しか知らなかったから写真のキングスは若くて可愛く見えた。彼女の笑顔も素敵だった。
気に入って居間のテーブルに飾る事にした。
ゴトン
物音がした。
この家は持ち主不在だから誰が入ってもいい感じなんだけど、今は夜中だ。
魔物か獣かと音の方に確認しにいく事にした。
アイリだった。ドアの前で立ち尽くしていた。
なんか更に痩せていた。
「お前は誰だ、人の家で何をしている」
あ、今人だった。失敗したなあ。俺字も書けないし話せないからどうしよう。いきなり魔獣になったらボコボコにされそうだし。
「誰だ。ここはキングスの家だ。出て行け」
そうだ。あれが有った。おぼつかない動作でチェスト内を探す。
「聞いているのか!」
あった!ずかずかと向かって来たアイリに振りむいて突きつけた。
「は?ハンカチ?がどうした、…っこれ」
ルイが俺を包んだハンカチだった。
覚えてるかな。
暗いけど見えてる?
アイリは覚えていた。くしゃっと握り涙ぐむのが、ろうそくの光でもわかった。
「何故これを…」
俺をしっかり見たアイリ。また燃やすと言われるかも知れないけど、元の姿に戻る事にした。
拾われた時とは違うけど、真っ黒な伸びたゴムのような目だけがある影を好む獣の姿。幻影獣になった。
アイリは驚いて硬直してたけど俺をずっと見ていた。
次はアイリが泣いた日に居た中型犬の姿になった。
アイリが怖がらないように、前脚をゆっくり触手にして伸ばしてハンカチをつんつん引っ張った。
「お、おまえ、まさか、あの魔物なのか?…おっさん捨てなかったのか、は、ははは!」
アイリは笑った。
悲しい顔で笑ってへたりと座り込んだ。
「こっち来いよ魔物。言葉わかるか?」
俺は皆の悲しい切ない顔が嫌いだ。
俺は泣けないんだ。
俺は鳴けもしないんだ。
アイリに近づいて膝に頭をコツンと当てた。
そんな顔するなよ。
だって「またな」って言って出掛けたらちゃんと帰って来てたしなあ。
アイリは、とぼとぼ帰ったし町でちゃんと暮らしているはず。
獣だし時間も日付もわからないのは、獣らしくていいかと思った時もありました。
とりあえず日数を数えることにした。
アイリがきてから約三ヶ月経った。大体。多分。
キングスの家に住み着いて長いし、荷物整理もしたいから最近は人の擬態の練習をしている。
成長して黒だけじゃなくて本当に細部まで色から毛の一本まで擬態出来るようになった。
凄いよ、この魔獣。
そしてモデルは前世の自分。ここは西洋だから日本人じゃないやつになってみた。でもなんでか股間に息子はつかなかった。魔獣として性が無いからかな。服は擬態できないようでキングスのシャツだけ借りてる。彼シャツみたいな事になってて内心苦笑した。
手鏡を見たら懐かしい顔だった。表情も変化できるよう頑張ってる。人になりたい訳じゃなく擬態の極み?自己満足?
だって他にする事がないから。
キングスの部屋はそのままにしていたけど、もう十年も経ったんだね。
散らかしたままだったから埃も凄いし整理させてもらおう。捨てはしないから。
これは日記だろうか。
紙の山の中から出て来たのは厚めの手帳。見るもんじゃないよね人の日記なんて。
それ以前にこの世界の字が読めない事に気がついた。
パラパラとめくるとセピア色の写真が挟まっているのを見つけた。写真機ある世界なんだ。これはキングスと女の人だ。若い二人が仲良く並んで笑ってる。大事にしてるという事は彼女か嫁さんかなあ。
無精髭のおっさん顔しか知らなかったから写真のキングスは若くて可愛く見えた。彼女の笑顔も素敵だった。
気に入って居間のテーブルに飾る事にした。
ゴトン
物音がした。
この家は持ち主不在だから誰が入ってもいい感じなんだけど、今は夜中だ。
魔物か獣かと音の方に確認しにいく事にした。
アイリだった。ドアの前で立ち尽くしていた。
なんか更に痩せていた。
「お前は誰だ、人の家で何をしている」
あ、今人だった。失敗したなあ。俺字も書けないし話せないからどうしよう。いきなり魔獣になったらボコボコにされそうだし。
「誰だ。ここはキングスの家だ。出て行け」
そうだ。あれが有った。おぼつかない動作でチェスト内を探す。
「聞いているのか!」
あった!ずかずかと向かって来たアイリに振りむいて突きつけた。
「は?ハンカチ?がどうした、…っこれ」
ルイが俺を包んだハンカチだった。
覚えてるかな。
暗いけど見えてる?
アイリは覚えていた。くしゃっと握り涙ぐむのが、ろうそくの光でもわかった。
「何故これを…」
俺をしっかり見たアイリ。また燃やすと言われるかも知れないけど、元の姿に戻る事にした。
拾われた時とは違うけど、真っ黒な伸びたゴムのような目だけがある影を好む獣の姿。幻影獣になった。
アイリは驚いて硬直してたけど俺をずっと見ていた。
次はアイリが泣いた日に居た中型犬の姿になった。
アイリが怖がらないように、前脚をゆっくり触手にして伸ばしてハンカチをつんつん引っ張った。
「お、おまえ、まさか、あの魔物なのか?…おっさん捨てなかったのか、は、ははは!」
アイリは笑った。
悲しい顔で笑ってへたりと座り込んだ。
「こっち来いよ魔物。言葉わかるか?」
俺は皆の悲しい切ない顔が嫌いだ。
俺は泣けないんだ。
俺は鳴けもしないんだ。
アイリに近づいて膝に頭をコツンと当てた。
そんな顔するなよ。
0
あなたにおすすめの小説
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる