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「シエラ嬢が公爵家を継ぐ予定だったから、私の婚約者候補からは外されていたんだ」
学園内にある王族専用の談話室で、シエラはフランツと向き合って座っていた。
彼はロルフの言ったとおり、騎士として身を守る術を覚えた後、他国へ留学していた。帰国後は貴族や商人の家を渡り歩き、執事や庭師、時には露天商の仕事までしていたというのだから驚きだ。
「陛下がよくお許しになりましたね」
「父が最低三十の職を経験するようにと命じたんだ。護衛が付いたのは八歳まで。その後は自力で生きろと。お陰で楽しい経験ができたよ」
あははと笑うフランツに、シエラはぽかんとしてしまう。フランツはロルフと同じ金髪碧眼の美丈夫だが、豪胆な気質が見え隠れしている。
「国に戻ってからは、貴族達を観察し見定めるように言われていた。中でも弟の愚行は目に余るものがあった。愚弟に代わり謝罪する」
頭を下げたフランツにシエラは首を横に振る。
「フランツ殿下が私の境遇に情けをかけてくださったことは理解いたしました。ですが私と婚約など……公言してよろしかったのですか?」
「実を言うと、君が魔力を譲渡した日から、ずっと気になっていた。留学してからも、どこに居ても君の姿が頭から離れなかった。酷い仕打ちを受けていると知りながら、力になれなくてすまない」
「いいえ。フランツ殿下に見守って頂いていると気付いていたら、きっと私は貴方を頼ってしまったことでしょう」
魔力譲渡は自分で決めた事だ。
理不尽だけど耐えなくてはならないと、シエラはあの時覚悟していた。
もしもフランツが気にかけていると知ってしまったら、どうして自分ばかり苦しいのに助けてくれないのかと、捻くれた感情が生まれていただろう。
運命に対して、公爵令嬢らしく気高くいられたのは一人で戦うと決めたからだ。
「君に相応しい強い心を持った王になると誓おう。だから改めて、君に愛を告げる」
碧の瞳がシエラただ一人を映す。この人ならば、信じても大丈夫だと心の中で何かが告げる。
「愛しているシエラ。どうか私の妻になってほしい」
(お母様、私……気高く、そして幸せになります)
病床でも気丈に振る舞った母を思い出しながら、シエラはフランツの言葉に頬を染めて頷いた。
学園内にある王族専用の談話室で、シエラはフランツと向き合って座っていた。
彼はロルフの言ったとおり、騎士として身を守る術を覚えた後、他国へ留学していた。帰国後は貴族や商人の家を渡り歩き、執事や庭師、時には露天商の仕事までしていたというのだから驚きだ。
「陛下がよくお許しになりましたね」
「父が最低三十の職を経験するようにと命じたんだ。護衛が付いたのは八歳まで。その後は自力で生きろと。お陰で楽しい経験ができたよ」
あははと笑うフランツに、シエラはぽかんとしてしまう。フランツはロルフと同じ金髪碧眼の美丈夫だが、豪胆な気質が見え隠れしている。
「国に戻ってからは、貴族達を観察し見定めるように言われていた。中でも弟の愚行は目に余るものがあった。愚弟に代わり謝罪する」
頭を下げたフランツにシエラは首を横に振る。
「フランツ殿下が私の境遇に情けをかけてくださったことは理解いたしました。ですが私と婚約など……公言してよろしかったのですか?」
「実を言うと、君が魔力を譲渡した日から、ずっと気になっていた。留学してからも、どこに居ても君の姿が頭から離れなかった。酷い仕打ちを受けていると知りながら、力になれなくてすまない」
「いいえ。フランツ殿下に見守って頂いていると気付いていたら、きっと私は貴方を頼ってしまったことでしょう」
魔力譲渡は自分で決めた事だ。
理不尽だけど耐えなくてはならないと、シエラはあの時覚悟していた。
もしもフランツが気にかけていると知ってしまったら、どうして自分ばかり苦しいのに助けてくれないのかと、捻くれた感情が生まれていただろう。
運命に対して、公爵令嬢らしく気高くいられたのは一人で戦うと決めたからだ。
「君に相応しい強い心を持った王になると誓おう。だから改めて、君に愛を告げる」
碧の瞳がシエラただ一人を映す。この人ならば、信じても大丈夫だと心の中で何かが告げる。
「愛しているシエラ。どうか私の妻になってほしい」
(お母様、私……気高く、そして幸せになります)
病床でも気丈に振る舞った母を思い出しながら、シエラはフランツの言葉に頬を染めて頷いた。
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