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淡々と夕食を終えたローズは、何ごともなかったかのように席を立つ。
「今日も美味しかったわ。料理長にお礼を伝えておいてちょうだい」
控えているメイドにこそりと囁くと、彼女が微笑んでうなずく。
兄はスープに塩気が足りないとか肉を持って来いなどと喚いており、ローズが出て行ったことにも気づいていない。
ちなみに両親は夜会に出かけて不在だ。そもそも家族揃って食卓を囲んだ記憶はない。跡取りであるグラズは別として、ローズもサリーも公爵家繁栄の駒としか見られていないので、両親からの関心は薄い。
ローズが十二歳の時、正式に王太子の婚約者となって暫くは気にかけてくれるようになった。しかしローズを羨んだサリーが癇癪を起こすようになってからは、その世話をローズに押し付け屋敷にすら寄りつかなくなった。
そして現在、十六歳になったローズが両親の代理として学業の傍ら屋敷を取り仕切っている。本来なら跡取りである一つ年上の兄がやるべきことだが「殿下の補佐で忙しい」と言って聞く耳すら持たない。
(お父様とお母様は、婚約破棄の件をご存じなのかしら? 屋敷に戻ってこないということは、王太子が聖女と浮気三昧って噂すら聞いていないのかも……いいえ、まさかね。知っていても「我慢しろ」としか言いそうにないもの)
公爵家のためだけに生きろと散々言われてきたローズは、両親からの愛情など期待していない。少なくとも両親も家のために生きるような人間ならば、公爵家の人間として仕方ないと受け入れたかもしれない。
しかし両親は公爵家の潤沢な資産で放蕩三昧。公爵家の領地運営も代官任せだ。
王家を含めこの国の大多数の貴族がこんな馬鹿げた生活を送っているのだが、それでも国が成り立っているのは「お花畑すぎるゲームシナリオ」が影響しているのではとローズは考えている。
ローズは自室ではなく妹のサリーの部屋に向かう。
部屋の前には家令のカシムが立っていて、ローズに頭を下げた。
「ローズ様、先ほどの件は……」
「明日の婚約破棄は確定と考えていいわ。殿下の腰巾着をしているお兄様が自信満々に言うのだから、余程の事がない限り決行する気よ。カシム、これまでありがとう。明日は忙しくなるけれど、終わったら自由にしていいわ」
これを、と付け加えてローズは紹介状の封書と金貨の入った革袋を渡す。
「あなたが幼い頃暮らしていた村の近くに、家令を探している子爵家をみつけたの。給料は下がってしまうけど。どうかしら?」
「十分でございますお嬢様」
祖父の代から使える家令の目尻には、涙が浮かんでいる。
「転職を希望した全員分の紹介状は書き終えてあるわ。お父様とお兄様に見つからないように、今は隠してあるの。明日の婚約破棄が確定したら出て行く前に皆に配るから伝えておいて」
「畏まりました」
「今まで私の滅茶苦茶な我が儘を聞いてくれてありがとう」
改めて礼を言い、嗚咽を漏らす家令の肩を軽く叩いてからローズは妹の部屋へと入った。
「お待ちしておりましたわ、お姉様」
先ほどのヒステリックな姿が嘘のように穏やかな微笑みで出迎えた妹を、ローズは思わず抱きしめる。
自分と同じ金色の髪に碧の瞳を持つ妹。違うのは自分はさらりとした直毛で、サリーは柔らかな巻き毛という点だ。
「薔薇の紅茶を淹れましたの。お茶菓子は私の焼いたクッキーを用意しましたわ」
「まあ、お菓子も作れるようになったのね」
「お姉様が「何があっても、一人で生きていける力を付けなさい」と躾けてくださったお陰ですわ。さ、おかけになって」
にこにこと笑う天使のような妹に促され、ローズは椅子に腰掛ける。
「お姉様が、前世の記憶があるのって言い出したときは驚きましたけど。本当に記憶の通りになりましたわね」
紅茶を淹れて自分も椅子に腰を下ろしたサリーがはあ、とため息を吐く。この世界で唯一、ローズの秘密を知っているのはサリーだけだ。
「私も正直驚いてるのよ。こんなにも記憶そのままの世界が存在するなんて……」
紅茶を一口飲んで、ローズは遠い目をする。
この世界はローズが前世でプレイした乙女ゲームの世界だ。前世では乙女ゲーム好きが高じて、学生ながらもレビューライターとして小遣い稼ぎをしていた時期もある。
そんなわけで幾つもゲームをクリアしたローズだが、一々タイトルなどは覚えていないしキャラの名前だって全て言えるはずもない。けれどこの世界のゲームシナリオだけは、悪い意味で印象に残っていたのだ。
乙女ゲームのエンディングは、基本的に数人居る中の攻略対象の一人を選んでゴールインする。そして全ての攻略が終わった時点で、所謂「逆ハー」と呼ばれる特別なエンディングルートが用意されていることが多い。
しかしこの世界は、その逆ハーが基本エンドだったのだ。
それも「みんな仲良しハッピー」というふんわりとした逆ハーではない。ヒロインの聖女は豪華な屋敷を王家から与えられ、毎夜訪れる攻略対象達とがっつり十八禁な内容を繰り広げるというトンデモシナリオのおまけ付きだ。
(これは単純に好みの問題なのだけど……私はなんかしっくりこなかったのよね)
逆ハーは好きでも嫌いでもない。でも最初からなんの苦労もなく、全員とラブラブハッピーエンドを見せられて、攻略熱が些か冷めたのは否めない。
しかし自分はヒロインではなく、彼女を虐める悪役令嬢なので断罪回避さえすればいい。と最初は考えていた。
けれど記憶が戻って十日もしないうちに、重大な事に気づく。
当たり前と言えばそうなのだが、この世界はゲームではない。
それぞれが人格を持ち、生きているのだ。
悪役令嬢として設定された自分は王太子の婚約者として恥ずかしくないマナーと教養を身につけるべく、幼い頃から多くの家庭教師が付けられていた。自由な時間などほぼ無く、趣味どころか料理や部屋に飾る花でさえ王太子が好む物しか与えられてこなかった。
これはまあ仕方ないが、教師達はまっとうな人ばかりだったので教育虐待がなかったことは救いだ。
しかし更なる問題は、その他の人々に関してだった。
「今日も美味しかったわ。料理長にお礼を伝えておいてちょうだい」
控えているメイドにこそりと囁くと、彼女が微笑んでうなずく。
兄はスープに塩気が足りないとか肉を持って来いなどと喚いており、ローズが出て行ったことにも気づいていない。
ちなみに両親は夜会に出かけて不在だ。そもそも家族揃って食卓を囲んだ記憶はない。跡取りであるグラズは別として、ローズもサリーも公爵家繁栄の駒としか見られていないので、両親からの関心は薄い。
ローズが十二歳の時、正式に王太子の婚約者となって暫くは気にかけてくれるようになった。しかしローズを羨んだサリーが癇癪を起こすようになってからは、その世話をローズに押し付け屋敷にすら寄りつかなくなった。
そして現在、十六歳になったローズが両親の代理として学業の傍ら屋敷を取り仕切っている。本来なら跡取りである一つ年上の兄がやるべきことだが「殿下の補佐で忙しい」と言って聞く耳すら持たない。
(お父様とお母様は、婚約破棄の件をご存じなのかしら? 屋敷に戻ってこないということは、王太子が聖女と浮気三昧って噂すら聞いていないのかも……いいえ、まさかね。知っていても「我慢しろ」としか言いそうにないもの)
公爵家のためだけに生きろと散々言われてきたローズは、両親からの愛情など期待していない。少なくとも両親も家のために生きるような人間ならば、公爵家の人間として仕方ないと受け入れたかもしれない。
しかし両親は公爵家の潤沢な資産で放蕩三昧。公爵家の領地運営も代官任せだ。
王家を含めこの国の大多数の貴族がこんな馬鹿げた生活を送っているのだが、それでも国が成り立っているのは「お花畑すぎるゲームシナリオ」が影響しているのではとローズは考えている。
ローズは自室ではなく妹のサリーの部屋に向かう。
部屋の前には家令のカシムが立っていて、ローズに頭を下げた。
「ローズ様、先ほどの件は……」
「明日の婚約破棄は確定と考えていいわ。殿下の腰巾着をしているお兄様が自信満々に言うのだから、余程の事がない限り決行する気よ。カシム、これまでありがとう。明日は忙しくなるけれど、終わったら自由にしていいわ」
これを、と付け加えてローズは紹介状の封書と金貨の入った革袋を渡す。
「あなたが幼い頃暮らしていた村の近くに、家令を探している子爵家をみつけたの。給料は下がってしまうけど。どうかしら?」
「十分でございますお嬢様」
祖父の代から使える家令の目尻には、涙が浮かんでいる。
「転職を希望した全員分の紹介状は書き終えてあるわ。お父様とお兄様に見つからないように、今は隠してあるの。明日の婚約破棄が確定したら出て行く前に皆に配るから伝えておいて」
「畏まりました」
「今まで私の滅茶苦茶な我が儘を聞いてくれてありがとう」
改めて礼を言い、嗚咽を漏らす家令の肩を軽く叩いてからローズは妹の部屋へと入った。
「お待ちしておりましたわ、お姉様」
先ほどのヒステリックな姿が嘘のように穏やかな微笑みで出迎えた妹を、ローズは思わず抱きしめる。
自分と同じ金色の髪に碧の瞳を持つ妹。違うのは自分はさらりとした直毛で、サリーは柔らかな巻き毛という点だ。
「薔薇の紅茶を淹れましたの。お茶菓子は私の焼いたクッキーを用意しましたわ」
「まあ、お菓子も作れるようになったのね」
「お姉様が「何があっても、一人で生きていける力を付けなさい」と躾けてくださったお陰ですわ。さ、おかけになって」
にこにこと笑う天使のような妹に促され、ローズは椅子に腰掛ける。
「お姉様が、前世の記憶があるのって言い出したときは驚きましたけど。本当に記憶の通りになりましたわね」
紅茶を淹れて自分も椅子に腰を下ろしたサリーがはあ、とため息を吐く。この世界で唯一、ローズの秘密を知っているのはサリーだけだ。
「私も正直驚いてるのよ。こんなにも記憶そのままの世界が存在するなんて……」
紅茶を一口飲んで、ローズは遠い目をする。
この世界はローズが前世でプレイした乙女ゲームの世界だ。前世では乙女ゲーム好きが高じて、学生ながらもレビューライターとして小遣い稼ぎをしていた時期もある。
そんなわけで幾つもゲームをクリアしたローズだが、一々タイトルなどは覚えていないしキャラの名前だって全て言えるはずもない。けれどこの世界のゲームシナリオだけは、悪い意味で印象に残っていたのだ。
乙女ゲームのエンディングは、基本的に数人居る中の攻略対象の一人を選んでゴールインする。そして全ての攻略が終わった時点で、所謂「逆ハー」と呼ばれる特別なエンディングルートが用意されていることが多い。
しかしこの世界は、その逆ハーが基本エンドだったのだ。
それも「みんな仲良しハッピー」というふんわりとした逆ハーではない。ヒロインの聖女は豪華な屋敷を王家から与えられ、毎夜訪れる攻略対象達とがっつり十八禁な内容を繰り広げるというトンデモシナリオのおまけ付きだ。
(これは単純に好みの問題なのだけど……私はなんかしっくりこなかったのよね)
逆ハーは好きでも嫌いでもない。でも最初からなんの苦労もなく、全員とラブラブハッピーエンドを見せられて、攻略熱が些か冷めたのは否めない。
しかし自分はヒロインではなく、彼女を虐める悪役令嬢なので断罪回避さえすればいい。と最初は考えていた。
けれど記憶が戻って十日もしないうちに、重大な事に気づく。
当たり前と言えばそうなのだが、この世界はゲームではない。
それぞれが人格を持ち、生きているのだ。
悪役令嬢として設定された自分は王太子の婚約者として恥ずかしくないマナーと教養を身につけるべく、幼い頃から多くの家庭教師が付けられていた。自由な時間などほぼ無く、趣味どころか料理や部屋に飾る花でさえ王太子が好む物しか与えられてこなかった。
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