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第1章:カス住民ぶちのめし編
1-6. 北へ進む
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俺は町を出て北へ進む。
道なき荒れ地を歩いてしばらくすると、隠れる場所もないからレストを呼んで並ぶ。
「お前の鼻が頼りだ。メイの匂いを追ってくれ」
「クルルル……」
なお、メイの匂いを追えといっても、別にあいつが臭いから追いやすいというわけではない。レストの鼻が優秀なのだ。
とりあえず目的地は同じなので、目指すは北の最果て、魔王城。
だが、レストの進行方向がやや西に逸れている。
つまり、聖女パーティーもやや西に逸れているということだ。
「あいつら、俺がいなくなって、早速方向感覚を失ってやがる。しっかりしろ。メイ」
真昼の影が北を指し示すのは地球と同じだ。だが、朝は太陽が東にあるから、影は西に向く。時間帯によって微調整が必要なのだが、羊飼いとしてはまだ初級レベルのメイは、上手く調整できていないようだ。
「あいつ、昨日時点でさっきの町の影の向きを確かめていたか? 昨日のうちに時間経過で影がどれだけ動くか把握しておいて、今朝の太陽の位置や影の長さを観察しておけば、たとえ精確性は低くとも、正解に近いものは導けるはずだが……」
まあ、無理だろうな。
俺も父さんから教わったが、身につけるのに苦労した。実践あるのみだ。
夜になれば北極星的なのを目印にできるが、それも正しく読みとれるか怪しい。
「まあ、魔王城に近づけばサリナが魔王の放つ魔力的な何かを感知してくれるだろう」
最果ての町から北に続く街道は存在しない。
人間の国と、魔族の国に国交は存在しないため、道を作る必要がないからだ。
俺は草の生えない荒れ地を北へ向かう。太陽に背を向け、冒険を妨げようとするかのような風に向かって進み続ける。
レストの足に迷いはない。メイの匂いを追えている。風が強いから匂いはその場にとどまらないだろうが、風上から匂いを運んできている。レストはメイの位置を正しく把握しているようだ。
しばらくして、まだ1時間は経っていないが俺は立ち止まる。疲労した状態でモンスターと遭遇しないように、俺は定期的に休憩をとることにしている。
「少し休憩するか」
「クゥル!」
「ウォータークリエイト」
俺は腰を落とすと手をお椀にして、水をためる。
レストがペロペロと舌先で掬って飲む。
俺は荷物袋の中から、カサカサの干し肉を取りだす。
干し肉がゆっくりと水を吸収し、戻っていく。
「はっ! はっ! はっ!」
レストが尻尾を元気よく振り、瞳をキラキラさせて見つめてくる。
こんな可愛い態度を取られると、俺の心まで温かくなってくる。
「ほら。食べろ」
「クルッ!」
レストは干し肉をガツガツと食べる。
俺は自分用の干し肉とフリーズドライ野菜を乾パンに挟み、食事の準備をする。
数分で肉が完全に戻るわけではないが、まあ、ただの干し肉を食うよりかは美味い。
「休憩終了。さあ、行くぞ」
「クルル」
俺たちは歩きだす。
「『Xitter』オープン!」
歩きスマホだが、荒野にぶつかる人はいないから問題ない。
────────────────────
■自分
さっきは助かった。
やはり、人間側と魔物側で人身売買みたいなことをしていた
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
礼は要らん。
で、だ。何度でも問おう。
アレルよ。我のものになれ
────────────────────
■自分
そういう言い方はよくない。
素直に、ぼっちは寂しいから友達になってくださいって言え
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
くくくっ……
────────────────────
■自分
?
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
いつまでも我に友がいないと思うか?
────────────────────
■自分
俺からの連絡に即レスようなお前に友がいるのか?
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
お前だ!
────────────────────
■自分
!!!
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
我とお前が、友だ!
────────────────────
■自分
お前……
…
……
………
照れさすなよ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
お前にはこういう言葉の方が効くだろwww
────────────────────
■自分
はいはい。お前、顔真っ赤だぞ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
!
な、なぜ、そんなことが分かる!
お前に我の顔は見えぬはず!
────────────────────
■自分
声も、めっちゃ慌ててる
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
適当を言うな!
声も分からないだろう!
────────────────────
■自分
それはそう。
なにはともあれ、あと1週間くらいで魔王城に到着する予定だ。
また連絡する
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
ああ
────────────────────
俺は魔王とのメッセージ交換を終えた。
しばらく歩いた俺は、緩やかな丘の頂点付近にさしかかったところで、立ち止まる。姿を遮るような岩や木々がないため、かつての仲間たちが振り返ってしまえばこちらの姿が見つかってしまうかもしれない。
「レスト。休憩しよう」
「クル!」
俺は地面に座る。
レストが隣に伏せたので、俺はその脇腹をクッション代わりにして寝転がる。
「会話を盗み聞きすることになるのは気が引けるが、あいつらが解決困難な窮地に陥っているなら助けないといけないし……。『Xitter』オープン」
────────────────────
■メイ@山村育ちの野生児
お兄ちゃんと離ればなれで、
悲しすぎて胸が張り裂けそうだよぉ~
────────────────────
■サリナ@多重多属性の魔法使い
ん……。
私も悲しい……
────────────────────
■ソフィア@聖剣の聖女
あら?
おふたりとも張り裂けるほどの大きさはありませんわよね?
ご存じかしら。
旅の間、アレル様が何度も私の胸をちらちらと見ていたことを
────────────────────
やめろ。
デマを流すな。
ぶちのめすぞ。
────────────────────
■メイ@山村育ちの野生児
……真の聖女はソフィアさんですよ。
聖剣を使えるんですし。
だから私は聖女ではないので、お兄ちゃんと結婚できます!
────────────────────
■ソフィア@聖剣の聖女
実妹なのに婚約者を名乗れる心の強さを持ったメイさんと、複数属性の魔法を使えるサリナさんが真の聖女ですわ。
地中にアンデッドの気配、複数
────────────────────
■サリナ@多重多属性の魔法使い
違う……。
所詮、私は、森に住む、悪しき魔女……。
ホーリーフィールド……。
周辺のアンデッドは浄化した
────────────────────
……魔族が支配する領域、通称『魔界』に現れる強力なモンスターを、会話の片手間に処理するなよ。
道なき荒れ地を歩いてしばらくすると、隠れる場所もないからレストを呼んで並ぶ。
「お前の鼻が頼りだ。メイの匂いを追ってくれ」
「クルルル……」
なお、メイの匂いを追えといっても、別にあいつが臭いから追いやすいというわけではない。レストの鼻が優秀なのだ。
とりあえず目的地は同じなので、目指すは北の最果て、魔王城。
だが、レストの進行方向がやや西に逸れている。
つまり、聖女パーティーもやや西に逸れているということだ。
「あいつら、俺がいなくなって、早速方向感覚を失ってやがる。しっかりしろ。メイ」
真昼の影が北を指し示すのは地球と同じだ。だが、朝は太陽が東にあるから、影は西に向く。時間帯によって微調整が必要なのだが、羊飼いとしてはまだ初級レベルのメイは、上手く調整できていないようだ。
「あいつ、昨日時点でさっきの町の影の向きを確かめていたか? 昨日のうちに時間経過で影がどれだけ動くか把握しておいて、今朝の太陽の位置や影の長さを観察しておけば、たとえ精確性は低くとも、正解に近いものは導けるはずだが……」
まあ、無理だろうな。
俺も父さんから教わったが、身につけるのに苦労した。実践あるのみだ。
夜になれば北極星的なのを目印にできるが、それも正しく読みとれるか怪しい。
「まあ、魔王城に近づけばサリナが魔王の放つ魔力的な何かを感知してくれるだろう」
最果ての町から北に続く街道は存在しない。
人間の国と、魔族の国に国交は存在しないため、道を作る必要がないからだ。
俺は草の生えない荒れ地を北へ向かう。太陽に背を向け、冒険を妨げようとするかのような風に向かって進み続ける。
レストの足に迷いはない。メイの匂いを追えている。風が強いから匂いはその場にとどまらないだろうが、風上から匂いを運んできている。レストはメイの位置を正しく把握しているようだ。
しばらくして、まだ1時間は経っていないが俺は立ち止まる。疲労した状態でモンスターと遭遇しないように、俺は定期的に休憩をとることにしている。
「少し休憩するか」
「クゥル!」
「ウォータークリエイト」
俺は腰を落とすと手をお椀にして、水をためる。
レストがペロペロと舌先で掬って飲む。
俺は荷物袋の中から、カサカサの干し肉を取りだす。
干し肉がゆっくりと水を吸収し、戻っていく。
「はっ! はっ! はっ!」
レストが尻尾を元気よく振り、瞳をキラキラさせて見つめてくる。
こんな可愛い態度を取られると、俺の心まで温かくなってくる。
「ほら。食べろ」
「クルッ!」
レストは干し肉をガツガツと食べる。
俺は自分用の干し肉とフリーズドライ野菜を乾パンに挟み、食事の準備をする。
数分で肉が完全に戻るわけではないが、まあ、ただの干し肉を食うよりかは美味い。
「休憩終了。さあ、行くぞ」
「クルル」
俺たちは歩きだす。
「『Xitter』オープン!」
歩きスマホだが、荒野にぶつかる人はいないから問題ない。
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■自分
さっきは助かった。
やはり、人間側と魔物側で人身売買みたいなことをしていた
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
礼は要らん。
で、だ。何度でも問おう。
アレルよ。我のものになれ
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■自分
そういう言い方はよくない。
素直に、ぼっちは寂しいから友達になってくださいって言え
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
くくくっ……
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■自分
?
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
いつまでも我に友がいないと思うか?
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■自分
俺からの連絡に即レスようなお前に友がいるのか?
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
お前だ!
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■自分
!!!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
我とお前が、友だ!
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■自分
お前……
…
……
………
照れさすなよ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
お前にはこういう言葉の方が効くだろwww
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■自分
はいはい。お前、顔真っ赤だぞ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
!
な、なぜ、そんなことが分かる!
お前に我の顔は見えぬはず!
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■自分
声も、めっちゃ慌ててる
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
適当を言うな!
声も分からないだろう!
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■自分
それはそう。
なにはともあれ、あと1週間くらいで魔王城に到着する予定だ。
また連絡する
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
ああ
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俺は魔王とのメッセージ交換を終えた。
しばらく歩いた俺は、緩やかな丘の頂点付近にさしかかったところで、立ち止まる。姿を遮るような岩や木々がないため、かつての仲間たちが振り返ってしまえばこちらの姿が見つかってしまうかもしれない。
「レスト。休憩しよう」
「クル!」
俺は地面に座る。
レストが隣に伏せたので、俺はその脇腹をクッション代わりにして寝転がる。
「会話を盗み聞きすることになるのは気が引けるが、あいつらが解決困難な窮地に陥っているなら助けないといけないし……。『Xitter』オープン」
────────────────────
■メイ@山村育ちの野生児
お兄ちゃんと離ればなれで、
悲しすぎて胸が張り裂けそうだよぉ~
────────────────────
■サリナ@多重多属性の魔法使い
ん……。
私も悲しい……
────────────────────
■ソフィア@聖剣の聖女
あら?
おふたりとも張り裂けるほどの大きさはありませんわよね?
ご存じかしら。
旅の間、アレル様が何度も私の胸をちらちらと見ていたことを
────────────────────
やめろ。
デマを流すな。
ぶちのめすぞ。
────────────────────
■メイ@山村育ちの野生児
……真の聖女はソフィアさんですよ。
聖剣を使えるんですし。
だから私は聖女ではないので、お兄ちゃんと結婚できます!
────────────────────
■ソフィア@聖剣の聖女
実妹なのに婚約者を名乗れる心の強さを持ったメイさんと、複数属性の魔法を使えるサリナさんが真の聖女ですわ。
地中にアンデッドの気配、複数
────────────────────
■サリナ@多重多属性の魔法使い
違う……。
所詮、私は、森に住む、悪しき魔女……。
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