武器は棍棒。撲殺系いっぱん羊飼いの俺、スキルXitterで超越者たちと相互フォローになってしまい「力が欲しいか?」とウザ絡みされる

うーぱー

文字の大きさ
11 / 86
第2章:騎士学校編

2-4. うざガキが絡んでくる

しおりを挟む
 騎士学校の校門をくぐり、父さんが受付の人に話しかけて何かしらの手続きをした。
 その後、俺は父さんと別れて、ひとりで校庭らしき場所へ向かう。

 小学校低学年くらいから高校生くらいまで、200人くらいいるだろうか。俺は12歳だったので、真ん中より少し下くらいの気がする。

 周囲の話を聞く限り、年齢ごとにクラスが別れるわけではなく、今年合格した者は全員同じ学年になるらしい。小学校や中学校のような義務教育よりも、大学に近いのかもしれない。
 訓練を積んで数回目の試験に挑む者もいるようだ。

 俺みたいにキョロキョロしているやつが初めてのお受験で、余裕たっぷりにどっしりしているやつがベテランか?
 いや、まあベテランになるほど受験している時点で才能がないということだ。それなのに、必死さの反動からくる不安がないのは、どうかと思うぞ……。普通は「これだけ頑張ったのに合格しなかったらどうしよう」と不安になるものだろ?

 ひそひそ。

 ひそひそ。

 ……なんか俺の方を見てひそひそ言っているやつがいる?

「おいおい。あそこ見ろよ。随分とみすぼらしい格好のやつがいるぞ」

「伝統あるパレンミラ騎士学校が狭き門だと知らないらしい」

「腰に木の棒を吊り下げているが、まさかアレで試験を受けるつもりか」

 ふむ。
 どうやら貧乏人の俺を噂しているようだ。
 俺は外見は子供でも精神的には大人だからな。お前らガキが何を言おうと気にしない。

 15歳くらいの、丸かいてフォイッて感じのでデコ少年が、同年代の取り巻きふたりを従えて、俺の前を塞ぐように立つ。

 中学校3年生が、小学校6年生を取り囲むような構図になったぞ。
 まあ、別に怖くはない。俺はこいつらよりでかいサイズの熊やモンスターと戦っても負けないし(勝てるとは言ってない。父さんが助けに来るまで負けずに戦えるの意)。

「君。ここが聖騎士ルファウス様が理事長を務めるパレンミラ騎士学校と知って、受験に来ているのかい?」

 相手をするつもりがないので無視する。
 すると、デコ少年の取り巻きAがわざわざ腰を曲げて俺にニヤニヤ顔を向けてくる。

「おいおい。騎士学校があまりにも立派でビビってんのか?」

 よく分かったな。

 俺は今まで『ガチの』中世の村人として生きてきたので、いきなりこんな『近世ファンタジー』の世界に来て、ちょっとビビってる。

 校舎はやけに綺麗だし、塔に時計があるし、窓にガラスがはまっているし、教師らしき人はスーツみたいな立派な服を着ているし、明らかに山村の田舎者が通う学校ではない。

 俺は母さんお手製の羊毛の庶民服を着ているが、絡んできた連中は胸にボタンがついた絹のシャツを着ている。ボタンが着いた服なんて、村長以外に初めてみたぞ! おしゃれしやがって!

 ちらっ。

 靴もなんか高そうだな!
 俺が羊の皮を編んだ簡素な靴で、コッペパンみたいな形状をしているのに、こいつらのはなんて言うか足首部分にシュッとした折り返しがあって、近代的なで材のように見える。しかも、新しい。ボロボロで泥だらけの俺の靴と違って、つぎはぎがない。

「へへっ! ビビッてやがる。こっち見ろよ」

 お前らの靴を見ていただけだが、怖くて俯いたと勘違いされたようだ。
 そういうことにしておくか。

「そうだ。俺はビビってる。放っておいてくれ……」

 俺は小声で言うと、振り返ってガキたちに背を向けた。
 しかしクソガキどもは俺の正面に回りこんでくる。

「ここは貴族や上級市民の子息が通う学校なんだ。知らないのかな?」

「お前みたいな貧乏人が来ていいところじゃねえんだよ」

「俺もそう思う」

 素直に肯定した。
 特待生に選ばれれば授業料が免除されるそうだが、もし中途半端な成績で合格してしまったら金がない。

 うちは裕福とは言えないが山村では平均的な生活をしているので、貧乏だとは思わない。だが、絡んできた連中の身なりから察するに、彼らが俺を貧乏人だと思うのは、ごくまっとうな感性だ。俺は、この学校に通うのは不釣りあいだ。

 入学の歳にこいつらと同じ水準の衣服や靴を用意しろと言われたら、俺の両親は困るだろう。教科書とか魔法の杖とか剣まで用意しろと言われたら、それこそ村中からお金を集めなければならないだろう。
 田舎の山村から騎士学校合格者が出たら名誉なことだとかいう理由で村人がお金を出してくれたら、その期待の大きさに気まずくて、俺はゲロ吐くぞ。

「場違いな貧乏人だって自覚があるなら帰れよ。お前みたいな冷やかし受験は目障りなんだよ!」

「自分がどの程度通用するか分かったら帰るよ」

「ちっ。貧乏人が」

「ふう。いるんだよね。毎年、君みたいな冷やかし。いいかい。教えてあげよう。僕のレベルは7だ。ファイヤーボールを使えるし、ゴブリンを倒したことだってある。君のレベルはいくつだい?」

「一度も測定したことがないから分からない」

「試験を合格するには、ひとりでゴブリンを1体倒せるくらいの強さが必要ということだよ。名門パレンミラ騎士学校を受験するんだから、1対1でゴブリンを倒したことくらいあるだろ?」

「ない。いつも父さんと一緒だから、ひとりでモンスターと戦ったことはない」

「ぷっ」とデコ少年がふきだすと、残りのふたりがゲラゲラと笑う。

 デコ少年は目に涙を浮かべ、腹を押さえて、心底愉快そうに笑う。

「君。それじゃあ合格は無理だ。帰りなよ。ぷぷぷっ。ひとりでゴブリンを倒せるようになってから来なよ。ほら。お礼はどうした? 田舎者はお礼を言えないのか? 教えてくれてありがとうって言ってみなよ」

 誤解させてしまったか。
 ゴブリンとの1対1の経験を聞かれたから、ないって答えたが、俺は父さんとふたりでゴブリン20体の群れを撃退したことがあるし、『放牧中ではなく、羊を護る必要がないという状況下でなら』ひとりでブレードウルフという推奨討伐レベル10のモンスターを倒したこともある。

 もちろん、父さんがサポートしてくれたし、俺の訓練という面も大きかったが……。それでも、ゴブリンなら3体くらい同時に相手しても倒せる気がする。

「あー。/
 :言うかどうか一瞬だけ迷う。
 あまり俺に絡まない方がいいぞ?」

「は? 君は随分と生意気な口をきくね」

「調子に乗ってんじゃねえぞテメエ」

 俺はわずかに立ち位置をずらし、両手を体の後ろで組んで、直立不動姿勢をとる。

「さっきからお前達の話を聞いていると――」

「お前とか言ってんじゃねえよ。テメエ!」

「生意気だな!」

「まあまあふたりとも。田舎者が勇気を振り絞って何かを言おうとしているんだ。聞いてあげようじゃないか」

 デコ少年の余裕たっぷり上から目線が、逆に可愛く見えてくるなあ。

 俺は微笑むのを我慢し、普段の落ち着いた口調で続ける。

「お前達は既に複数回、受験を受けているようだな? つまり、何度も落ちている」

 グッ!

 丸かいてフォイッて感じのでデコ少年が胸ぐらをつかんできた。

「君はどうやら、この学校の格式を理解できていないようだ」


────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻あんこく魔王
くるか?
ぶんなぐるか?
────────────────────
■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
わーい!
ぶちのめすぞ! ぶちのめすぞ!
────────────────────
■自分
おいおい。相手はガキだぞ。
俺がこの程度の挑発に乗るはずがないだろ
────────────────────


 俺はデコ少年の手を振り払うことなく、言いたいことを続ける。

「お前はこの学校の合格基準はレベル5と言った。けど、お前はレベル7なんだろ? 基準を超えているのに落ちている。能力以外に問題があるんだろ? ほら。周りを見ろ。教師らしき人間が何人かいる。今、こうして俺に絡んでいる様子も、王国騎士にふさわしいかどうか、評価されているんじゃないのか?」

「……ッ!」

 デコ少年は慌てた様子で俺の胸ぐらを話した。

 デコ少年は俺をにらむと、口元を歪めて何か言いたそうにするが、やめた。

「……行くぞ」

 クソガキたちは俺に背を向け去って行く。

 俺は真ん中の背中に向かって、試験官に聞こえないくらいの小声で言う。

「受験連続失敗中のデコッぱちはお礼を言えないのか? 教えてくれてありがとうって言ってみなよ」

「……ッ!」

 デコっぱちは振り返り、真っ赤な顔でにらんできた。

 まだ俺とトークがしたいらしい。しょうがないな。

「お前が言ってきたことを言い返しただけなのに、怒るなよ。バ~カ。ほら、これで満足か? こういう返事が欲しかったんだろ?」

 デコっぱちはプルプル震えながら、去って行った。


────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻あんこく魔王
アレル。お前、このガキにムカついてただろ?
────────────────────
■自分
ムカツイテナイヨ
────────────────────
■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
こんなのやだやだ。
ぶちのめして! ぶちのめして!
────────────────────
■自分
安心しろ。すぐにぶちのめすから
────────────────────
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~

たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。 辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。 壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。 その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。 ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...