武器は棍棒。撲殺系いっぱん羊飼いの俺、スキルXitterで超越者たちと相互フォローになってしまい「力が欲しいか?」とウザ絡みされる

うーぱー

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第8章:不審者ぶちのめし編

8-1. 旅は順調に進み、いよいよ王都目前に着く

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 俺たちが生まれ育った村から王都までは二週間ほどかかった。
 途中なん度かモンスターと遭遇したが、すべて騎士たちが撃退してくれた。
 そんなに強いなら、魔王もお前たちが倒してくれよと内心で思ったが、言わない。
 多分、みんなLv30は超えている。わざわざ言いふらしはしていないから、実際の数値は分からないが……。

 特に草原に出てからは騎馬無双だった。
 トラックのような巨体の四足獣タイプモンスターに、騎馬が全力疾走して槍を突き刺すのは大迫力だった。馬の走力を加えた槍はモンスターの胸に深々と突き刺さり、その突進を止めた。槍が帯電していたから、何かしらの魔法付与攻撃だったのだろう。
 槍によって開いた傷口を従騎士達の遠距離魔法が抉り、モンスターは半死になって動きを弱めた。
 その後は、実戦訓練に当てられるらしく、弱ったモンスターと従者達が戦った。騎士は高みの見物だ。

「メイ。見ろ。野生の狼と同じことをしている。狼も、親が獲物を弱らせてから、子供に狩りの練習をさせるぞ。同じように、鳥も雛に生きた餌を与えることがある。いつか役に立つかもしれない。覚えておけ」

「うん」

 何度か見ていて分かったが、騎士は近接戦闘を担当し、従騎士が中距離と遠距離を担当していた。そもそも騎士は近接武器しか持っていなかった。

 先日のガストンさんの口ぶりから察するに彼は狩りも得意、つまり、弓を使えるはずだ。なのに、なぜ、使わないのだろう。

 道中でガストンさんに聞いてたら『槍や剣で正々堂々と戦う』ことが騎士には求められると教えてくれた。
 彼は岩石を作り出すスキルで遠距離攻撃ができるそうだが、一対多で自分が不利な状況、もしくは仲間や民を守るときにしか使わないそうだ。

 それと、敵が神速系のスキルの使い手や、速度の速い雷属性の魔法使いだったら、弓から剣への武器交換が致命的な隙になる可能性があると教えてくれた。

 また、従者の教育がなかったとしても騎士はモンスターにトドメを刺さないらしい。

 なに言ってんのかさっぱりな価値観だったが、騎士が最後まで戦うのは相手が『名誉ある騎士』の場合のみらしい。
 モンスターを殺すと騎士の名誉が損なわれるから、従者にとどめを刺させるそうだ。
 騎士同士の戦闘ではスキルも魔法も使わないらしい。使えば、騎士の名誉を汚した卑怯者になるらしい。

 高貴な騎士同士の決闘しかしたくないから、魔王討伐の旅に出ないとか、言わないよな?

 ……まさかとは思うけど、人類の有能な騎士がスキルを使わないから、魔族との戦いが何百年も続いていると言わないよな?
 騎士の代わりにメイみたいな庶民が、聖女候補として担ぎ上げられるなんて言わないよな?

 さすがに怖くて聞けなかった。

 何はともあれ俺たちは練度の高い隊に護衛されていたので、誰ひとり怪我することはなかった。

 旅で少しだけ自信がついたことがある。
 それは、馬上で遠くまで見渡せる騎士たちよりも俺とレストの方が遙かに早く、モンスターの接近に気づけたことだ。

 レストが「なんかあっちが気になる」といった感じでそわそわするときがある。レスト自身、確かな確証は得られていないのかもしれない。

 そういったときは俺が、岩や木の陰や砂の下を目で警戒する。そうすると、砂が掘り返したように変色していたり、枝葉の隙間から獣の表皮が見えたり、視覚情報の違和感で敵の存在を見抜けた。

 視覚で気づけなかったり死角になっていたりして接近を許してしまったモンスターは、レストが誰よりも早くその臭いに気づいた。

 父さんに教えこまれた俺とレストによる連携警戒技能は、熟練の騎士にすら上回るものだった。

 ソフィアも俺たちに次いで洞察力に優れており、メイやサリナと談笑中でも、警戒中の騎士と変わらぬタイミングでモンスターや野生動物の存在に気づいた。
 騎士が護衛してくれたからソフィアの弓の腕前を戦闘で披露することはなかったが、食糧を得るための狩りになると、飛ぶ鳥の翼を貫いた。
 これは騎士も『聖女候補でなければ、射手の一隊を任せたい』と賞賛した。

 初めての長旅となるメイ、ソフィア、サリナには荒れた道の移動は大変だった。メイとソフィアには数時間かけて山道を隣村まで歩く体力はあったが、移動し続ける日々を繰り返す体力はなかったし、すぐに足の指の皮がむけた。

 ソフィアは数日間森に潜むことはあっても、歩き続ける訳ではなく待ち続けるので、歩く体力が意外となかった。俺は毎日、雑念を払って彼女の太ももを中心に脚をマッサージするしかなかった。

 傷口にばい菌が入らないように、俺は頻繁に足の指を水で洗い、揉んだ。

 サリナは一日の大半を俺の背中で過ごした。おかげで俺の脚力はかなり鍛えられたと思う。

 深く広大な森の中にひらかれた道を抜け、なだらかな起伏の麦畑を超え、ついに王都にたどりつく――。
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