武器は棍棒。撲殺系いっぱん羊飼いの俺、スキルXitterで超越者たちと相互フォローになってしまい「力が欲しいか?」とウザ絡みされる

うーぱー

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第8章:不審者ぶちのめし編

8-2. レストとはいったん別行動

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 平地のど真ん中という立地は、モンスターや魔王が存在する世界ではあまりにも無防備なように思える。だが、中世ヨーロッパ最大規模の都市パリも平地にあったのだから、何かしらの理由があるのだろう。
 気候や地形の影響で、このあたりには弱いモンスターしか生息していないから、王都を平地に作れたのかもしれない。

 ただ、これは俺の回想だから、後から知った情報を挿入できるのだが、やはり、地形的要因だったらしい。
 5000年前の王都周辺は海底だった。海底は雨風の影響を受けないため、地上のような複雑な地形にはならず、平坦になる。その平坦な海底に海洋生物の死骸が山積して、長い時を経て石になった。その上に砂が積もり、また死骸が積もる。こうして地層を形成する。
 そして、5000年という時を経て海が低くなり、浅瀬だった場所が陸地になる。つまり、この地は足下を掘ると、石が出てくる。

 これは見方を変えると、逆説的ではあるが『平地に都市を建造した』のではなく『平地だから都市を建造できるほどの大量の石が地下に存在していた』ことになる。数千年前の海底だからこそ、王都は巨大に成長できたのだ。

 何はともあれ、初見の王都は、壁を背にした、ちょっと大規模な村のように見えた。壁の向こうに先端が尖った塔が何本か見える。

 騎馬が1騎、街道を外れて、隊の最後尾の俺が追いつくのを待っていた。
 村で村長を公開裁判で断罪してくれた騎士、アーサーさんだ。

「アレル君。少しいいだろうか」

「はい。なんでしょう」

「レストだが、この辺りで待機させることはできるだろうか」

「え? 何故ですか……?」

「君は冒険者登録をしていないし、レストも使役モンスターとして登録していない。だとすると、王都には入れない。私は冒険者側のルールには詳しくないが、違法モンスターを取り締まる側の規則は分かる。私はレストに危険がないことを知っているが、立場上、城門をくぐったら登録証を提げていないレストを討たねばならない。どうする? 道中で立ち寄った街と同じように、君も一緒にこの辺りで待っているか?」

「うーん……」

 メイが立ち止まり心細そうな視線を送ってくる。

 一方のレストはお座りをして欠伸をしている。慣れない土地に旅してきたのに気楽だ。

「レスト。この森で、ひとりでお留守番できるか?」

「クルルゥ」

「大丈夫。寂しくない。早ければ今日。遅くとも明日には戻ってくる」

 俺は言いながら、自分の推測が正しいか確かめるためにアーサーさんに視線を向ける。

 彼は頷く。

「ああ。スキル授与の儀式は、鐘がひとつかふたつ鳴る間に済む」

 俺はレストに向き直る。

「な。待っていてくれ」

「クルルゥ」

「そっか。じゃあ、お留守番な」

「クル!」

「すまないな。アレル君。そうだ。これを君にあげよう。レストにつけてあげるといい」

 アーサーさんは腰に巻いてあった鎖を外して、僕にさしだす。

「首に巻いてあげるといい。そうすれば、仮にレストが人に見つかったとしても、飼い慣らされた個体だと分かるだろう」

「ありがとうございます」

 ということで、レストには都の周囲に広がる畑のさらに外側に広がる森で待ってもらうことにした。

 俺たちはレストを森に残して進んだ。

 近づいて分かったが、村と思っていたのは、城壁の中に土地を買えなかった者や旅人などが壁の外に建てた小屋に過ぎなかった。本当の都市は壁の向こうにあるようだ。

「メイ、ソフィア、サリナ。3人とも、これを首に巻いてくれ」

 俺は家から持ってきた羊毛のスカーフを3人に配る。
 3人は俺が首に巻くのを見てから、真似して同じようにした。

「いいか。これは都市にいる間は外さないでくれ。都市では、服以外に何もつけていないと『貧しくて困っているから、服以外の物を売った』と思われる」

 貧乏人と間違われるだけならいいが、娼婦と間違われて変な男に言い寄られる危険もある。大きい都市を歩くときは身なりを整える必要があるのだ。
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