47 / 86
第8章:不審者ぶちのめし編
8-2. レストとはいったん別行動
しおりを挟む
平地のど真ん中という立地は、モンスターや魔王が存在する世界ではあまりにも無防備なように思える。だが、中世ヨーロッパ最大規模の都市パリも平地にあったのだから、何かしらの理由があるのだろう。
気候や地形の影響で、このあたりには弱いモンスターしか生息していないから、王都を平地に作れたのかもしれない。
ただ、これは俺の回想だから、後から知った情報を挿入できるのだが、やはり、地形的要因だったらしい。
5000年前の王都周辺は海底だった。海底は雨風の影響を受けないため、地上のような複雑な地形にはならず、平坦になる。その平坦な海底に海洋生物の死骸が山積して、長い時を経て石になった。その上に砂が積もり、また死骸が積もる。こうして地層を形成する。
そして、5000年という時を経て海が低くなり、浅瀬だった場所が陸地になる。つまり、この地は足下を掘ると、石が出てくる。
これは見方を変えると、逆説的ではあるが『平地に都市を建造した』のではなく『平地だから都市を建造できるほどの大量の石が地下に存在していた』ことになる。数千年前の海底だからこそ、王都は巨大に成長できたのだ。
何はともあれ、初見の王都は、壁を背にした、ちょっと大規模な村のように見えた。壁の向こうに先端が尖った塔が何本か見える。
騎馬が1騎、街道を外れて、隊の最後尾の俺が追いつくのを待っていた。
村で村長を公開裁判で断罪してくれた騎士、アーサーさんだ。
「アレル君。少しいいだろうか」
「はい。なんでしょう」
「レストだが、この辺りで待機させることはできるだろうか」
「え? 何故ですか……?」
「君は冒険者登録をしていないし、レストも使役モンスターとして登録していない。だとすると、王都には入れない。私は冒険者側のルールには詳しくないが、違法モンスターを取り締まる側の規則は分かる。私はレストに危険がないことを知っているが、立場上、城門をくぐったら登録証を提げていないレストを討たねばならない。どうする? 道中で立ち寄った街と同じように、君も一緒にこの辺りで待っているか?」
「うーん……」
メイが立ち止まり心細そうな視線を送ってくる。
一方のレストはお座りをして欠伸をしている。慣れない土地に旅してきたのに気楽だ。
「レスト。この森で、ひとりでお留守番できるか?」
「クルルゥ」
「大丈夫。寂しくない。早ければ今日。遅くとも明日には戻ってくる」
俺は言いながら、自分の推測が正しいか確かめるためにアーサーさんに視線を向ける。
彼は頷く。
「ああ。スキル授与の儀式は、鐘がひとつかふたつ鳴る間に済む」
俺はレストに向き直る。
「な。待っていてくれ」
「クルルゥ」
「そっか。じゃあ、お留守番な」
「クル!」
「すまないな。アレル君。そうだ。これを君にあげよう。レストにつけてあげるといい」
アーサーさんは腰に巻いてあった鎖を外して、僕にさしだす。
「首に巻いてあげるといい。そうすれば、仮にレストが人に見つかったとしても、飼い慣らされた個体だと分かるだろう」
「ありがとうございます」
ということで、レストには都の周囲に広がる畑のさらに外側に広がる森で待ってもらうことにした。
俺たちはレストを森に残して進んだ。
近づいて分かったが、村と思っていたのは、城壁の中に土地を買えなかった者や旅人などが壁の外に建てた小屋に過ぎなかった。本当の都市は壁の向こうにあるようだ。
「メイ、ソフィア、サリナ。3人とも、これを首に巻いてくれ」
俺は家から持ってきた羊毛のスカーフを3人に配る。
3人は俺が首に巻くのを見てから、真似して同じようにした。
「いいか。これは都市にいる間は外さないでくれ。都市では、服以外に何もつけていないと『貧しくて困っているから、服以外の物を売った』と思われる」
貧乏人と間違われるだけならいいが、娼婦と間違われて変な男に言い寄られる危険もある。大きい都市を歩くときは身なりを整える必要があるのだ。
気候や地形の影響で、このあたりには弱いモンスターしか生息していないから、王都を平地に作れたのかもしれない。
ただ、これは俺の回想だから、後から知った情報を挿入できるのだが、やはり、地形的要因だったらしい。
5000年前の王都周辺は海底だった。海底は雨風の影響を受けないため、地上のような複雑な地形にはならず、平坦になる。その平坦な海底に海洋生物の死骸が山積して、長い時を経て石になった。その上に砂が積もり、また死骸が積もる。こうして地層を形成する。
そして、5000年という時を経て海が低くなり、浅瀬だった場所が陸地になる。つまり、この地は足下を掘ると、石が出てくる。
これは見方を変えると、逆説的ではあるが『平地に都市を建造した』のではなく『平地だから都市を建造できるほどの大量の石が地下に存在していた』ことになる。数千年前の海底だからこそ、王都は巨大に成長できたのだ。
何はともあれ、初見の王都は、壁を背にした、ちょっと大規模な村のように見えた。壁の向こうに先端が尖った塔が何本か見える。
騎馬が1騎、街道を外れて、隊の最後尾の俺が追いつくのを待っていた。
村で村長を公開裁判で断罪してくれた騎士、アーサーさんだ。
「アレル君。少しいいだろうか」
「はい。なんでしょう」
「レストだが、この辺りで待機させることはできるだろうか」
「え? 何故ですか……?」
「君は冒険者登録をしていないし、レストも使役モンスターとして登録していない。だとすると、王都には入れない。私は冒険者側のルールには詳しくないが、違法モンスターを取り締まる側の規則は分かる。私はレストに危険がないことを知っているが、立場上、城門をくぐったら登録証を提げていないレストを討たねばならない。どうする? 道中で立ち寄った街と同じように、君も一緒にこの辺りで待っているか?」
「うーん……」
メイが立ち止まり心細そうな視線を送ってくる。
一方のレストはお座りをして欠伸をしている。慣れない土地に旅してきたのに気楽だ。
「レスト。この森で、ひとりでお留守番できるか?」
「クルルゥ」
「大丈夫。寂しくない。早ければ今日。遅くとも明日には戻ってくる」
俺は言いながら、自分の推測が正しいか確かめるためにアーサーさんに視線を向ける。
彼は頷く。
「ああ。スキル授与の儀式は、鐘がひとつかふたつ鳴る間に済む」
俺はレストに向き直る。
「な。待っていてくれ」
「クルルゥ」
「そっか。じゃあ、お留守番な」
「クル!」
「すまないな。アレル君。そうだ。これを君にあげよう。レストにつけてあげるといい」
アーサーさんは腰に巻いてあった鎖を外して、僕にさしだす。
「首に巻いてあげるといい。そうすれば、仮にレストが人に見つかったとしても、飼い慣らされた個体だと分かるだろう」
「ありがとうございます」
ということで、レストには都の周囲に広がる畑のさらに外側に広がる森で待ってもらうことにした。
俺たちはレストを森に残して進んだ。
近づいて分かったが、村と思っていたのは、城壁の中に土地を買えなかった者や旅人などが壁の外に建てた小屋に過ぎなかった。本当の都市は壁の向こうにあるようだ。
「メイ、ソフィア、サリナ。3人とも、これを首に巻いてくれ」
俺は家から持ってきた羊毛のスカーフを3人に配る。
3人は俺が首に巻くのを見てから、真似して同じようにした。
「いいか。これは都市にいる間は外さないでくれ。都市では、服以外に何もつけていないと『貧しくて困っているから、服以外の物を売った』と思われる」
貧乏人と間違われるだけならいいが、娼婦と間違われて変な男に言い寄られる危険もある。大きい都市を歩くときは身なりを整える必要があるのだ。
20
あなたにおすすめの小説
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる