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第11章:汚職役人ざまぁ編
11-1. 森の街道を通過しようとしたら妨害された
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「ん?」
俺たちが森に近づくと、森の入り口の脇にあった小屋から人が出てきて、道の中央に立つ。
いったいなんだろうと思いながら俺は歩き続けた。
道を遮るのは動物の毛皮を編んだ服を着る男だ。毛皮の帽子をかぶっており、同じように毛皮の靴を履いており、一般庶民に比べると身なりが良い。
まあ、母さんの手編み羊毛の服を着ている俺の方が、贅沢な格好をしているがな。
俺は彼をよけるために道の端による。
すると男は手にしていた長い棒を傾けて俺の進路を遮った。
なんだろうと思っていると、男は小汚いニヤニヤ顔を俺に向ける。
「ここを通りたければ通行料として1000ゴールドを払いな」
1000ゴールドは金貨10枚、つまり10万円に相当する大金だ。払えるはずがない。
「通行料? そんな話は聞いてない。来るときには何も言われなかったぞ」
「当たり前だ。出ていくときに必要なんだからな」
本当か?
田舎者から金を騙しとろうとしていないか?
森を切り開いて道路を作ったのだから、たしかに、金や労力はかかっている。料金を取るのは妥当の気はするが……。
「通行料のない迂回路はあるか?」
「さあな。どこまで続くか分からないが森の端まで行けば道はあるんじゃないか?」
「そうか。……金がない。出直すよ」
俺たちはいったん森の入り口から離れた。嫌らしいことに、男は道路を遮ったまま俺たちの方を見ている。俺たちが走り抜けないか監視しているのだろう。
仕方なく俺たちは、遠矢の射程ほど離れた。
俺たちは顔を寄せあって内緒話をする。
「羊飼いとして旅した経験から言うと、街道や橋で通行料を取ること自体はある。ただ、1000ゴールドは高すぎる。それに不自然な点がある。それはあの小屋だ。あまりにも貧弱すぎる。この道を仮に毎日1000人が利用したとする。通行料は100万ゴールド集まる。俺が野盗だったら、あの小屋を襲撃する。逆に考えれば、毎日100万ゴールドの収益を稼ぐような道なら、出入り口に堅牢な塔を築く」
「つまり私たちが田舎者だから、森林管理人が小遣い稼ぎのために騙そうとしている?」
年長者のソフィアはさすがに他のふたりより、こういう話題への反応が良い。
「そういうことだ。ちょうどいいところに騎馬が来た。どうなるか様子を見よう」
都の方から騎馬が3騎やってくると、止まることなく森に入っていった。道を塞いでいたはずの男は、かなり手前の時点でさっさと脇に移動していた。
「通行料を払った様子がない。都市の騎士を相手に詐欺はできないだろう。騎士は特例で通行料が要らないのかもしれないが……。かなり怪しい。仮に国王の指示で通行料を取っているなら、金を持っている騎士から取りたいはずだ」
「ですが、抗議したとしても、事前に金を受け取っているとか、騎士は特別だとか言われますわ」
「ああ。困ったな。金は払えない。かといって、森の中を進んで迷ったり、追っ手を掛けられても面倒だしな……」
道を強引に突破して、邪魔されるようなら殴り倒すか?
魔王討伐の旅を妨げるのは、国家への裏切りだ。遠慮する必要はない。
逆ギレして反撃してくる可能性があるから、俺が夜中にひとりで行くか。
「仕方ない。夜になったら通行することにして、ここでスキルの練習をしよう」
「あっ。お兄ちゃん。街の方から馬車が来たよ。あれに乗せてもらえないかな?」
「駄目だ。遠くからでも分かる。アレは貴族の馬車だ。乗せてもらえないに決まってるだろ。……いや、待て。急ごう。あの馬車より先に森の入り口に戻るぞ!」
俺は仲間たちを急かすために、真っ先に駆けだす。少し進んだら振り返り「急げ、急げ」と声を掛ける。
俺は何度も振り返りながらゆっくりめに走ったが、サリナが歩くような遅さで取り残されていた。
仕方ない……。
「俺ひとりで行く。お前達はばらけないように一緒に歩いてきてくれ」
俺は3人を置き去りにして走った。
俺の速さに面食らったのか、森林管理人らしき男たちが慌てて路上に戻り、棒を構えた。
俺は彼らの前で立ち止まる。
「通してくれ」
「はあはあ……。つ、通行料を払えと言っただろう……。はあはあ……」
「貴族の馬車が来るぞ。あいつからも金を取るのか? このまま道に立ち塞がるつもりか?」
「ひひひっ。貴族様は無料で通行さ。はあはあ……。国に多大な貢献を果たしてくださっているからな。はあはあ……」
「なるほど。その言いよう。俺みたいな庶民の足下を見て小遣い稼ぎをしているということでいいな?」
「人聞きの悪いことを言うなよ。ひひひっ。ほれ。どけよ。貴族様の馬車を止めたら死刑だぞ」
俺は背後に車輪が轍をなぞる音を聞きながら男をにらむ。
男は視線を俺の背後に向けて、顔に焦りを浮かべる。
「おい。いいから、退けよ! 馬車が来る。お前、どこの田舎もんだ! あの紋章が分からないのか! 獅子の紋章が許された大貴族だぞ!」
男の目的は俺への通行妨害ではなく、貴族の通行を邪魔する俺の排除へと変わった。
俺の肩を掴んで押しのけようとしてくる。
もうひとりの男も俺の肩を掴み、ふたりがかりになった。
しかし、俺はその場にふんばり、とどまる。
「おい、退けよ! 田舎者!」
「くっそ……! 動かねえ! 見た目より重いぞ! なんだこいつ! くそっ!」
男はいったんさがると棒を振り、俺の肩を殴ってきた。避けようと思えば避けられたが、あえて直撃を喰らう。
「退け! 貴族の馬車を遮るなんて、何を考えているんだ!!」
ふたりめの男が腕を掴んできたところで、俺は引っ張られる方向を無視してわざと地面に仰向けに倒れた。
汚職役人め、覚悟しろよ。お前らをハメてやる。
俺たちが森に近づくと、森の入り口の脇にあった小屋から人が出てきて、道の中央に立つ。
いったいなんだろうと思いながら俺は歩き続けた。
道を遮るのは動物の毛皮を編んだ服を着る男だ。毛皮の帽子をかぶっており、同じように毛皮の靴を履いており、一般庶民に比べると身なりが良い。
まあ、母さんの手編み羊毛の服を着ている俺の方が、贅沢な格好をしているがな。
俺は彼をよけるために道の端による。
すると男は手にしていた長い棒を傾けて俺の進路を遮った。
なんだろうと思っていると、男は小汚いニヤニヤ顔を俺に向ける。
「ここを通りたければ通行料として1000ゴールドを払いな」
1000ゴールドは金貨10枚、つまり10万円に相当する大金だ。払えるはずがない。
「通行料? そんな話は聞いてない。来るときには何も言われなかったぞ」
「当たり前だ。出ていくときに必要なんだからな」
本当か?
田舎者から金を騙しとろうとしていないか?
森を切り開いて道路を作ったのだから、たしかに、金や労力はかかっている。料金を取るのは妥当の気はするが……。
「通行料のない迂回路はあるか?」
「さあな。どこまで続くか分からないが森の端まで行けば道はあるんじゃないか?」
「そうか。……金がない。出直すよ」
俺たちはいったん森の入り口から離れた。嫌らしいことに、男は道路を遮ったまま俺たちの方を見ている。俺たちが走り抜けないか監視しているのだろう。
仕方なく俺たちは、遠矢の射程ほど離れた。
俺たちは顔を寄せあって内緒話をする。
「羊飼いとして旅した経験から言うと、街道や橋で通行料を取ること自体はある。ただ、1000ゴールドは高すぎる。それに不自然な点がある。それはあの小屋だ。あまりにも貧弱すぎる。この道を仮に毎日1000人が利用したとする。通行料は100万ゴールド集まる。俺が野盗だったら、あの小屋を襲撃する。逆に考えれば、毎日100万ゴールドの収益を稼ぐような道なら、出入り口に堅牢な塔を築く」
「つまり私たちが田舎者だから、森林管理人が小遣い稼ぎのために騙そうとしている?」
年長者のソフィアはさすがに他のふたりより、こういう話題への反応が良い。
「そういうことだ。ちょうどいいところに騎馬が来た。どうなるか様子を見よう」
都の方から騎馬が3騎やってくると、止まることなく森に入っていった。道を塞いでいたはずの男は、かなり手前の時点でさっさと脇に移動していた。
「通行料を払った様子がない。都市の騎士を相手に詐欺はできないだろう。騎士は特例で通行料が要らないのかもしれないが……。かなり怪しい。仮に国王の指示で通行料を取っているなら、金を持っている騎士から取りたいはずだ」
「ですが、抗議したとしても、事前に金を受け取っているとか、騎士は特別だとか言われますわ」
「ああ。困ったな。金は払えない。かといって、森の中を進んで迷ったり、追っ手を掛けられても面倒だしな……」
道を強引に突破して、邪魔されるようなら殴り倒すか?
魔王討伐の旅を妨げるのは、国家への裏切りだ。遠慮する必要はない。
逆ギレして反撃してくる可能性があるから、俺が夜中にひとりで行くか。
「仕方ない。夜になったら通行することにして、ここでスキルの練習をしよう」
「あっ。お兄ちゃん。街の方から馬車が来たよ。あれに乗せてもらえないかな?」
「駄目だ。遠くからでも分かる。アレは貴族の馬車だ。乗せてもらえないに決まってるだろ。……いや、待て。急ごう。あの馬車より先に森の入り口に戻るぞ!」
俺は仲間たちを急かすために、真っ先に駆けだす。少し進んだら振り返り「急げ、急げ」と声を掛ける。
俺は何度も振り返りながらゆっくりめに走ったが、サリナが歩くような遅さで取り残されていた。
仕方ない……。
「俺ひとりで行く。お前達はばらけないように一緒に歩いてきてくれ」
俺は3人を置き去りにして走った。
俺の速さに面食らったのか、森林管理人らしき男たちが慌てて路上に戻り、棒を構えた。
俺は彼らの前で立ち止まる。
「通してくれ」
「はあはあ……。つ、通行料を払えと言っただろう……。はあはあ……」
「貴族の馬車が来るぞ。あいつからも金を取るのか? このまま道に立ち塞がるつもりか?」
「ひひひっ。貴族様は無料で通行さ。はあはあ……。国に多大な貢献を果たしてくださっているからな。はあはあ……」
「なるほど。その言いよう。俺みたいな庶民の足下を見て小遣い稼ぎをしているということでいいな?」
「人聞きの悪いことを言うなよ。ひひひっ。ほれ。どけよ。貴族様の馬車を止めたら死刑だぞ」
俺は背後に車輪が轍をなぞる音を聞きながら男をにらむ。
男は視線を俺の背後に向けて、顔に焦りを浮かべる。
「おい。いいから、退けよ! 馬車が来る。お前、どこの田舎もんだ! あの紋章が分からないのか! 獅子の紋章が許された大貴族だぞ!」
男の目的は俺への通行妨害ではなく、貴族の通行を邪魔する俺の排除へと変わった。
俺の肩を掴んで押しのけようとしてくる。
もうひとりの男も俺の肩を掴み、ふたりがかりになった。
しかし、俺はその場にふんばり、とどまる。
「おい、退けよ! 田舎者!」
「くっそ……! 動かねえ! 見た目より重いぞ! なんだこいつ! くそっ!」
男はいったんさがると棒を振り、俺の肩を殴ってきた。避けようと思えば避けられたが、あえて直撃を喰らう。
「退け! 貴族の馬車を遮るなんて、何を考えているんだ!!」
ふたりめの男が腕を掴んできたところで、俺は引っ張られる方向を無視してわざと地面に仰向けに倒れた。
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