スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する

うーぱー

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1話でやります。追放、転生、ざまぁ

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「アーサー・ザマーサレルクーズのスキルは……。『レベル1固定』!」

 白い服を着た神官が目を見開き、ツバを飛ばしながら叫んだ。

「なんという無能スキルだ!」

 背後で怒声がしたから振り返ると、父さんが顔を真っ赤にしていた。

「貴様のような無能は不要! お前を追放する!」

「うっ……!」

 こうしてアーサー・ザマーサレルクーズは、追放されたショックで死んだ。

 そして、俺がこのタイミングで、この体に転生した。

「二度と家名を名乗ることは許さぬ! 我がザマーサレルクーズ家はお前の弟イーサーが継ぐ!」

「ふふっ。この家は、スキル『レベル上限開放』を授かった僕が継ぐよ」

 父親の隣に少年がいる。14歳くらい。一重まぶたで、お坊ちゃまカット。牛丼屋で悪戯してSNS炎上してそうな顔つきだ。
 そいつは「くっくっくっ」と笑いながら俺に近づいてくる。

 少年は俺の肩にポンと手を置く。

「さよなら、兄さん。もう食事にネズミを入れたり靴に針を刺したりできないなんて残念だよ」

 転生直後の俺は軽く混乱中だが、どうやら俺の肉体は、この親子に随分と酷い目に遭わされていたようだ。こいつらとはもう二度と会わないかもしれないし、一発かますのは今しかないだろう。

「喰らえっ! リバーブロー!」

 ドスッ!

 俺は弟らしき少年の脇腹にパンチした。肝臓の上から叩き大ダメージを与えるパンチだ。不用意に近づくやつが悪い。神官や父からは見えないように、角度には配慮した。

「う、ぐ……」

「舐めてんのか、テメエ? 俺をいじめていただと?」

「ア、アーサー? き、気でも狂ったか?」

「黙れ!」

 ドスッ!

 へへっ。どうだ。
 まだこんなもんじゃないぞ。
 俺は弟に抱きついて密着する。

「イーサー!(ドスッ!) 俺との!(ドスッ!) 別れを惜しんでくれるのか!(ドスッ!) 弟よ!(ドスッ!) ありがとう!(ドスッ!) 家のことは任せた!(ドスッ!)」

「うっ、ううっ、ぐふっ……」

 ガクッ。

 イーサーは脱力した。
 俺が離れると、イーサーは床に膝をつく。

「ア、アーサー……。お、お前っ……」

「泣き崩れるなんて! なんて愛情深いんだ! さようなら!」

 俺はイーサーたちに背を向け、全力で出口の方へ駆けだした。

「おい。イーサー。どうした? ひいっ! 白目をむいて口から泡を噴いている!」

「くっそ。もう気づかれた!」

「我が息子になんて酷いことを! 悪魔が取り憑いたとしか思えん! 衛兵! そいつを捕まえろ!」

 ダダダッ!

「アーサー様! とまりなさい!」

 革の鎧を着た兵士が俺の前に立ち塞がり、腕を広げた。

 ヤバい。捕まったら腹パンされてしまう。

 俺は兵士の顔に向けて手をかざす。

「ステータスオープン!」

 ピカッ!

 よし。異世界転生お約束のやつが出た!

 ステータスウインドウのフレームが兵士の目に直撃する。

「うっ! まぶしいっ!」

 兵士がひるんだので、俺は素早く横を通り過ぎる。

 ドアを開けて外に出ると、通路を全力で走る。

 くそっ。建物の構造が分からな――。いや、分かる。
 前世の記憶が少しずつ新たな魂に馴染んでくる。

 俺はザマーサレルクーズ家の礼拝堂を飛びだした。金持ち貴族なので、敷地内の礼拝堂に司教を招いてスキル授与儀式を行っていたのだ。

 礼拝堂のすぐ近くにある馬小屋に向かう。
 馬の世話をしていた男が俺に気づく。

「あれ。アーサーぼっちゃん。そんなに急いで――」

「ステータスオープン!」

「目が! 目が~~っ!」

 俺は馬の世話係が目を押さえて苦しんでいる間に、ぼう(馬が入っているところ)の扉を次々と開けていく。
 俺は馬の尻を叩く。

「うーっ! ずきゅんっ、どきゅんっ、走りだせっ! ふっふーっ!」

 大声で追いたてると、馬がうま娘のごとき勢いで一斉に走りだした。
 外で使用人らしき者たちが騒ぎ始める。

「頼んだぞ。馬たち。しっかり暴れてくれ」

 家族や使用人の注意は庭に向いているはず。俺は屋敷の中に入る。

 理想を言うなら現金を盗みたいが、さすがに厳重に管理されているだろう。俺は父の執務室に向かい、ポケットに宝石を詰めこんだ。

「売れば生活には困らないだろう」

 俺は窓に近づく。
 ガラスに反射して、おそらく黒色の短髪の少年が映る。平凡な顔立ちだ。弟とは似ていなくて軽く安堵した。

 窓枠に足をかけてから身を乗りだすと、外側から窓ガラスを蹴り割り、破片を室内に落とす。

「クソ父が馬鹿じゃなかったら、外から侵入した盗人の犯行だと思いこむはずだ。あとは……勇気!」

 俺は地面に飛び降りる。

 接地さん膝曲げちん体を倒すこっ
 
 ぶっつけ本番だが、俺はリズムよく衝撃を逃がして、着地に成功。

 立ち上がり、外壁の正門に向かう。
 門番が俺に気づく。

「アーサーぼっちゃん。いったい何があったんですか。この騒ぎは――」

「ステータスオープン!」

「うわああっ! 目が! 目が~~っ!」

 俺は正門を出た。

 先ずは家の周りに広がる森に潜む。
 門番が追いかけてくるかもしれないので、やり過ごすためだ。

 路地脇に巨木を見つけたので、太い枝にのぼって寝転がる。

 俺は遠くへ逃げたい。だからこそ敢えてここに隠れる。
 ほら。案の定、元父親に俺の捜索を命令されたであろう使用人たちが屋敷を出て、森の中を走っていく。

「……ふう。慌ただしい転生だったぜ……。まだ混乱しているから、色々と記憶を整理したいところだが……。先ずは、正しく使おう。ステータスオープン!」

 名前:アーサー
 職業:無職
 年齢:15
 レベル:19
 HP:124
 MP:25 
 攻撃力:86
 防御力:33
 すばやさ:28
 スキル:レベル1固定 / 対象のレベルを1に固定する

「数値はまあ、こんなものか。レベルが19あるということは、俺のスキルは常時発動タイプではないな。……ん?」

 ぐらっ……。

 体が微かに揺れた。不安定な枝の上だからかと思ったが、違う。地震だ。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

 真下からの突き上げるような振動は急速に強くなってくる。

 ボコオッ!

「ヤバい! これが、モンスターホールか!」

 この世界にはモンスターホールと呼ばれるものがある。
 地面に突然、穴が開いて、中からモンスターが出てくるのだ。そのため、モンスターはていじゅう土獣どじゅうとも呼ばれている。
 って、それどころではない。

 かなり大きいモンスターホールが、俺の下に開こうとしている。木が傾いてきた。視界が低くなった。違う。周囲の土が真下の穴にのみこまれているんだ。

 俺は枝をつかんで必死に移動する。どんどん傾いていく。

「ヤバい! でかい!」

 穴の大きさは、モンスターの強さに比例すると言われている。巨木をのみこむようなサイズのモンスターホールからは、街を壊滅させられるほど強力なモンスターが出てくるはずだ。

「うおおおおおっ!」

 俺は傾く枝を登り切ると、ほぼ真横に倒れつつある木の幹の上を走り、なんとか大地に跳びおりた。

「危なかった……。あっ……」

 周囲が、影に包まれた。
 背後の高い位置から「ぶふーっ! ぶふーっ!」と奇妙な風音がし、悪臭が漂ってくる。

 恐る恐る振り返ると、全長10メートルはあろうかという牛頭巨人ミノタウロスが立っていた。

「ミッ、牛頭巨人ミノタウロス!」

「ぶふーっ! ぶもももも!」

 案の定、牛頭巨人ミノタウロスは目の前のごちそう、つまり俺に向かって手を伸ばしてくる。

「くっ……!」

 どうする。俺が転生した肉体アーサーは魔法が使えるが、それはしっかりと魔力を集中したら、たき火ができる程度の火だ。

 いや、どうするもなにも、こうするしかない!
 上手くいくという確信がある。というか、行ってくれないと困る。

「これが俺様のスキル使用デビューだ。目撃者はいないかもしれないが、格好つけさせてもらう! 見ろ! 不遇スキルが実は有能パターン!」

 俺は左手を開いて口元を隠すように覆い、軽く仰け反りながら、右手人差し指で牛頭巨人ミノタウロスの顔を指さす。

「スキル『レベル1固定』発動! 牛頭巨人ミノタウロスのレベルを1に固定!」

 少なくとも、見た目は何も起こっていない……!

 ガンッ!

 俺は牛頭巨人ミノタウロスの巨大な拳にぶん殴られた。

「痛ってえっ!」

 俺は足が浮き、後ろに1メートルほどふっとばされた。

 だが――。

「思ったとおり! 死ぬようなダメージではない! こいつ、レベル1になってる! でかいからパンチが重いだけだ!」

 ぶんっ……!

 ぶんっ……!

 牛頭巨人ミノタウロスが巨腕を振ってくる。
 さすがにレベル1でも、素の体格が違いすぎるから、あまり攻撃をくらうわけにはいかないな。

「ふむ……。いくらレベル1でも牛頭巨人ミノタウロスには勝てなさそうだ。……ッ!」

 不吉な物音がしたので俺は牛頭巨人ミノタウロスから視線を外し、モンスターホールの方を見る。穴の縁に巨大な手がかけられ、ずいっと、新たな牛頭巨人ミノタウロスの上半身がせり出てきた。

「他にも出てくる……! さっさと逃げるか」

(駄目だ……!)

「くっ……。幻聴か? 違う。この肉体の意思? 森の中には使用人がいる。こんなのが暴れたら犠牲者が出るかもしれない。だが、俺はもうザマーサレルクーズの長男じゃない。使用人など……!」

(駄目だ……! 僕の体をあげたんだ! 対価を払ってくれ! みんなを護ってくれ!)

「ちいっ。アーサー! お前はお人好しか! そんなんだから弱さにつけ込まれて弟にいじめられ、父から追放されるんだぞ!」

 心の声はなくなった。

 だが……。

「くそっ。見捨てたら目覚めが悪いか!」

 俺は屋敷の敷地を包む外壁の側に移動した。牛頭巨人ミノタウロスが遅い足取りでついてくる。

「来い! こっちだ! 牛やろう! スキル解除!」

「ぶもーっ!」

 レベルが元に戻った牛頭巨人ミノタウロスは急加速し、すさまじい勢いで走ってくる。

 タイミングを見計らって……今!

「スキル『レベル1固定』発動! 牛頭巨人ミノタウロスのレベルを1に固定! おらああっ!」

 激突の寸前、俺はレベル1牛頭巨人ミノタウロスのすねに、肩から体当たりをした。

「痛ってえ! 体重差でかすぎ!」

「ぶもーっ!」

 ドスーンッ!

 俺につまずいた牛頭巨人ミノタウロスは壁の向こう、つまり、ザマーサレルクーズ家の敷地内に転倒した。

「肩が外れたらどうするんだよ。全部で5体。俺の肩は2つしかないんだぞ!」

 新たな牛頭巨人ミノタウロスが突進してくる。
 俺は攻略パターンの分かったアクションゲームのように同じことを繰り返した。

「お、終わった。はあはあ……。疲れた……。スキルの使用で体力を消耗するかどうか分からないし、解除するか……」

 俺は屋敷に放りこんだ5体のスキルを解除した。

 ドカーン!
 ガガーン!
 ベキベキベキ!

 背後から破壊音が聞こえてきた。

「ミッ、牛頭巨人ミノタウロスだと?! イ、イーサー! なんとかしろ!」

「ふふふっ。任せてください父上! スキル『レベル上限開放』発動! はっはっはっ! これで僕のレベル上限は200! 伝説の勇者の倍だぎゃあああああああああああっ!」

「くっ、くそっ! モンスターども! そいつを食っていろ! ワシはその隙に逃げぎゃああああああああああっ!」

 ドカーン! ドカーン!
 ズガガーン!

 どこかで聞いたような声と騒音が聞こえてくる。

「まあ、追放された俺には関係ないか。モンスターホールも打ち止めみたいだし、もう行くか」

 俺はその場を離れ、森の中の路地を進む。
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