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10話
しおりを挟む───……ついに、ついにこの時が来てしまった。
「……ふ、二人っきりで泊るのっていつ振りかな」
「んー……たぶん中学ん時じゃない?」
「あれ、そんな前だっけ。よく覚えてたね」
「お前が忘れっぽいだけだって」
そう。もう何年も前の話だ。あれから幼馴染としてずっと仲良くしてきたけれど、恋人として付き合うことになったのはほんの数か月前の事だった。付き合いだした当初は手を繋ぐだけでもお互い顔を真っ赤にしていたというのに今ではこの有様だ。人間の適応力ってすごいなぁとつくづく思う。
せっかく今日は彼が来てるというのにまた緊張してきてしまった。こんなんで大丈夫なのかな。
「スキあり」
「ふぇ!?なひすりゅの」
考え込んでいたら隙だらけだったようで、突然タツマが僕のほっぺたを片方つまんできた。悪戯っぽい笑顔を返されると怒る気にもなれない。
「へへ、言ったろ?そういう空気になったらでいいからって。まずはいつも通りでいいんだよ」
「……あ、りがひょ……」
励ましの言葉と眩しい顔を向けられながら、今度は両方のほっぺたを摘ままれ、ふにふにと弄ばれる。子供っぽい戯れに恥ずかしくなりつつも、肩の荷はお陰様で少しだけ降りた。
恋人同士になってから初めて過ごす二人きりの夜。この機会を逃すまいと思えども、一人で突っ走っても仕方ない。お互いリラックスして過ごす延長線で、あわよくば──でいいんだ。
きっとこれからも二人の時間は作れるだろうから。焦る必要はない。
「じゃあさ、まずは久々にゲームの協力プレイしようぜ!最近ソロと野良ばっかだったからリアルタイムちょーやりたい」
「いいね!やろやろ」
「お前最近、ログインすらサボってただろ~~訛ってない?」
「え!そうだっけ………あ、ほんとだログボ途切れてる~~~」
僕としたことが、彼とフレンドになっているソーシャルゲームのログインを忘れていた。最近の記憶はすっかり彼の事か、オナニーに夢中だった事ばかりで頭の中が忙しかった気はするが、本当にうっかりすぎる。毎日彼のログインや、レベルが上がってるのを確認するのが楽しみで、日課だったのに。
「最近忙しかったから……はは、ごめんごめん」
「いいよ、じゃあまずはリハビリ兼ねてやろーぜ!俺もまだアイテム集めあるからさ、まずはそっから行こうか」
「うん!わかった」
そうして僕たちは久しぶりに夢中になって協力ゲームプレイに勤しんだ。まるで中学生の頃みたいに戻ったみたいに、あっという間に楽しい時間は過ぎてゆき、気付けばすっかり夜だった。
「あ、やっば!夕飯まだじゃん、そろそろ切り上げるか」
「うわ、もうこんな時間か。夕飯、さっくり軽いものでいいかな」
「俺も手伝うってー何かしてないとまだ周回やっちゃいそう」
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