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第1章 少年と研究者
第1話 夢へのいざない
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ーそこは夢と現実が交錯する世界ー
科学者である〈桜吹雪〉は、人が見た夢を記録して仮想化しその世界に入り込む技術ー[夢仮想化システム](DVS)を開発した。
今までに成し得なかった夢の制御に成功した彼は世間から賞賛され、その研究への期待を背負っていた。
期待に応えるべく研究に没頭した結果、人が見たい夢を寝ているときに見ることができる[夢創造システム](DCS)を完成させる。
そうー彼が開発した2つのシステムにより「夢→現実」「現実→夢」というかつては不可能とも言われた、夢と現実の相互作用を可能にしたのだった。
偉業を成し遂げた彼はードリーム・クリエイターと言う名の会社を起業する。開発したシステムを駆使してかねてから願った”人と人との夢での繋がり”の実現へと奔走する。
2038年6月22日。桜吹雪率いるドリエイターは「夢コントローラー」を発売した。
*・゜゜・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜・*:.。..。.:*・
「さあ!待ちに待ったこの日がついに到来!本日がなんの日かご存知ありませんか?解説は私にお任せあれ!本日はドリーム・クリエイター開発の夢コンの発売日でございます!」
爆音ともいえる音量だ。
その主は電気量販店の広告用巨大スクリーンであり、その面前には学生から社会人までも勢揃いである。
スクリーンに映る人が話を続ける。
「夢コンで何ができるのか皆さん気になりますよね?そこで私が夢コンの主要機能について簡単にご説明いたします!」
“簡単に”と言いつつもかっ飛ばしているので集中しないと上手く聞き取れない。
聞き取った範囲で要約すると、
~仕様~
持ち運びが楽なように軽量設計。
タッチパネル対応。
内臓バッテリー有。
寝る前に夢コントローラーの電源を入れ電波の届く範囲の安定した場所に設置する。
~オフラインでできること~
①夢の記録
②夢の世界の再現
③夢の交換(近くにいる人に限る)
④夢コン対応のゲーム(別売)
~オンラインでできること~
⑤自分の夢の投稿
⑥投稿されている夢の受信
⑦夢コン対応ゲームのオンラインプレイ
⑧フレンド登録 など
である。夢の記録・再現・交換機能だけでなく、ゲームソフトを購入することで夢のなかで楽しむことができるという点については、勉強やバイトで忙しい学生や多忙な社会人も寝ている時間を使って娯楽を満喫できる。それが多くの人に魅力を感じさせるのだろう。
「変わらないよね」
そう僕は呟いた。
勉強には積極的に取り組んでいる方だと思う。ありふれた会話ができる友達もいる。それなりの日常を過ごしている。
しかし何かが足りないように感じる。
情熱的なもの。いや情熱的って何だ?
僕は踵を返した。そうだよ。別に変わらない。
あんな機械を使ったところで現実は現実で僕は僕だ。
何も変わらない。
(ドンッ)
人とぶつかった。
前を向いて歩かないからこうなるんだよ…
「すみません!」
ぶつかった人に頭を下げた。
そして足早に立ち去ろうとした。
「興味があるんだろう?」
その人は言った。
今のは僕に向けた言葉か?
「はい?」
振り向いてその人を見る。
若くはない。だが年老いてはいない。どちらか…と言われたら若い類に入るだろう。
身につけているのは白衣だ。研究者だろうか。
「夢コン」
付け加えるように男は僕に伝える。
ああ。なるほど。この男は気になったのか。
かつて不可能とされた夢への干渉。この世の中には捨てても捨てきれないほどの興味を抱く研究者が数多くいるだろう。そしてこの男もその一人というわけだ。
「そりゃあ気にはなりますよ?これだけ世の中を熱狂させてるんですから… でも…」
「でも?」と男がその先を求める。
「今、僕が生きているのはこの現実です。夢は想像の産物に過ぎません。」
そう答えた。
そして男は僕に問う。
「では聞こう。君はその現実に満足かい?」
僕はすぐに答えを返すことができなかった。
僕は現実に満足しているのか。いや満足していない。でも足らない部分を夢コンで充足できるのか?
「…現実に満足はしていません。じゃあ夢コンが僕を満足させてくれるのか?そうも思いません。」
素直にそう答えたつもりだが心の奥に何かが引っかかった。男はそれを見通すかのように僕に言った。
「君は諦めている。現実世界に何かが足りないと感じていながらどうせ それを見つけることは不可能だと決めつけている。」
男は持っていた鞄から四角い箱のようなものを取り出した。そして僕に手渡した。それは…夢コンだった。突然の出来事に困惑している僕に男は
「私からのプレゼントだ。もしかしたら君が探し求めているものに出会えるかもしれない。」
そう告げて立ち去ろうとした。
「ちょっと。」
僕は男を呼び止め尋ねる。
「なんで僕にくれるんですか?」
男は微笑を浮かべつつ
「己に認識できない感情があるとしよう。大抵の人はその感情を元々なかったものとし忘れ去ってしまう。でもその感情の正体に迫ろうとする人もいる。私のような研究者にとってその真の意味に近づいた者の活躍は気になるものなんだよ。」
男は再び歩き出そうとした。
僕は反射的にその研究者の男に問いかける。
「あなたは一体…何者なんですか?」
男は「ふむ」と軽く頷き
「まず君の名前を聞こう。」
と言うので、僕は
「〈星月裕也〉」
と名乗った。
男は僕に言う。
「では改めて星月裕也君。君は己に認識できない感情が存在する。その答えに近づいた暁に多くのものを得ることができるだろう。期待しているよ。」
「あ。僕の名前なんだけどね。その夢コンの取扱説明書のなかに名刺が挟んであるから。」
淡々と告げ
「では星月裕也君。またどこかで会おう。」
そう言い残して立ち去った。
*・゜゜.:**・゜゜*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゜・
玄関のドアを開けて家の中に入る。
今日は疲れた。ちょっと家電量販店の広告に気を取られたために、変な親切なのか常識はずれの内分点を取るような男から別に求めてもいない夢コンを貰わされたのだ。やっぱ寄り道するとロクなことがない。
(夢コンの取説だけ見て寝ようかな… )
僕はベットに体を預けて貰った夢コンの取説を読むことにした。昼間の巨大広告スクリーンの説明が意外に頭に入っていたため、想像していたより早く読み進めることができた。今日寝るときに使ってみようかどうか迷いながら最後の1ページを開いたときー
ヒラヒラと一枚の紙切れが舞い落ちた。
(名刺か…)
そこには筆記体のサインが記されていた。
学校で筆記体はを習っていないので書くことはできないが、読むことはできる。
そこに記されていた名を見て目を疑った。
〔SAKURA HUBUKI〕
しばらく動けなかった。なぜその場で気づかなかったのだろう。いや仮に気づいて本人に尋ねたところで自分の正体を明かしただろうか。なぜ今日の昼間にあんな場所に居たのだろう?
多くの謎について考えるには脳が疲弊しきっていた。
取説を閉じて部屋の電気を消し、目を閉じた。
男は僕に「いつか会おう」と言った。
その言葉は僕に現実味を感じさせていた。
きっと会える。どこかで再会できる。
僕は胸にそう刻み込み、意識を手放した。
*・゜゜・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゜**・゜
ある建物の屋上で夜空を見上げる二人の男がいた。
一人の男はもう一人に言う。
「いやあ。今日は星が綺麗に見えるなあ。日頃の疲れが癒されていくようだねえ、近藤君。」
近藤と呼ばれた男が苦笑を交えながら答える。
「そういうもんですか…そういえば今日のあなたはやけにご機嫌ですが…何か嬉しいことでもあったんですか?」
男は視線を夜空に仰ぎながら
「私はね。ついに手に入れたんだよ。」
と得意げに言った。
近藤は特段の反応も示さず
「何を手に入れたんです?」
と尋ねる。
それに対して男は答える。
「私と意思を共にする仲間だ。彼らによって研究は守られ、さらなる発展を遂げるだろう。」
涼しげな風を受け白衣をなびかせながら男は屋上から立ち去ろうとした。近藤は囁く。
「展開が楽しみですよ。桜吹雪さん。…ちなみに研究室にお戻りになられるのですか?」
天才科学者ー桜吹雪は右手でグッドマークを作ると無言でドアの奥へと消えた。
☆To Be Continued☆
~作品内に登場する場所・人物・機関などはすべてフィクションです~
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科学者である〈桜吹雪〉は、人が見た夢を記録して仮想化しその世界に入り込む技術ー[夢仮想化システム](DVS)を開発した。
今までに成し得なかった夢の制御に成功した彼は世間から賞賛され、その研究への期待を背負っていた。
期待に応えるべく研究に没頭した結果、人が見たい夢を寝ているときに見ることができる[夢創造システム](DCS)を完成させる。
そうー彼が開発した2つのシステムにより「夢→現実」「現実→夢」というかつては不可能とも言われた、夢と現実の相互作用を可能にしたのだった。
偉業を成し遂げた彼はードリーム・クリエイターと言う名の会社を起業する。開発したシステムを駆使してかねてから願った”人と人との夢での繋がり”の実現へと奔走する。
2038年6月22日。桜吹雪率いるドリエイターは「夢コントローラー」を発売した。
*・゜゜・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜・*:.。..。.:*・
「さあ!待ちに待ったこの日がついに到来!本日がなんの日かご存知ありませんか?解説は私にお任せあれ!本日はドリーム・クリエイター開発の夢コンの発売日でございます!」
爆音ともいえる音量だ。
その主は電気量販店の広告用巨大スクリーンであり、その面前には学生から社会人までも勢揃いである。
スクリーンに映る人が話を続ける。
「夢コンで何ができるのか皆さん気になりますよね?そこで私が夢コンの主要機能について簡単にご説明いたします!」
“簡単に”と言いつつもかっ飛ばしているので集中しないと上手く聞き取れない。
聞き取った範囲で要約すると、
~仕様~
持ち運びが楽なように軽量設計。
タッチパネル対応。
内臓バッテリー有。
寝る前に夢コントローラーの電源を入れ電波の届く範囲の安定した場所に設置する。
~オフラインでできること~
①夢の記録
②夢の世界の再現
③夢の交換(近くにいる人に限る)
④夢コン対応のゲーム(別売)
~オンラインでできること~
⑤自分の夢の投稿
⑥投稿されている夢の受信
⑦夢コン対応ゲームのオンラインプレイ
⑧フレンド登録 など
である。夢の記録・再現・交換機能だけでなく、ゲームソフトを購入することで夢のなかで楽しむことができるという点については、勉強やバイトで忙しい学生や多忙な社会人も寝ている時間を使って娯楽を満喫できる。それが多くの人に魅力を感じさせるのだろう。
「変わらないよね」
そう僕は呟いた。
勉強には積極的に取り組んでいる方だと思う。ありふれた会話ができる友達もいる。それなりの日常を過ごしている。
しかし何かが足りないように感じる。
情熱的なもの。いや情熱的って何だ?
僕は踵を返した。そうだよ。別に変わらない。
あんな機械を使ったところで現実は現実で僕は僕だ。
何も変わらない。
(ドンッ)
人とぶつかった。
前を向いて歩かないからこうなるんだよ…
「すみません!」
ぶつかった人に頭を下げた。
そして足早に立ち去ろうとした。
「興味があるんだろう?」
その人は言った。
今のは僕に向けた言葉か?
「はい?」
振り向いてその人を見る。
若くはない。だが年老いてはいない。どちらか…と言われたら若い類に入るだろう。
身につけているのは白衣だ。研究者だろうか。
「夢コン」
付け加えるように男は僕に伝える。
ああ。なるほど。この男は気になったのか。
かつて不可能とされた夢への干渉。この世の中には捨てても捨てきれないほどの興味を抱く研究者が数多くいるだろう。そしてこの男もその一人というわけだ。
「そりゃあ気にはなりますよ?これだけ世の中を熱狂させてるんですから… でも…」
「でも?」と男がその先を求める。
「今、僕が生きているのはこの現実です。夢は想像の産物に過ぎません。」
そう答えた。
そして男は僕に問う。
「では聞こう。君はその現実に満足かい?」
僕はすぐに答えを返すことができなかった。
僕は現実に満足しているのか。いや満足していない。でも足らない部分を夢コンで充足できるのか?
「…現実に満足はしていません。じゃあ夢コンが僕を満足させてくれるのか?そうも思いません。」
素直にそう答えたつもりだが心の奥に何かが引っかかった。男はそれを見通すかのように僕に言った。
「君は諦めている。現実世界に何かが足りないと感じていながらどうせ それを見つけることは不可能だと決めつけている。」
男は持っていた鞄から四角い箱のようなものを取り出した。そして僕に手渡した。それは…夢コンだった。突然の出来事に困惑している僕に男は
「私からのプレゼントだ。もしかしたら君が探し求めているものに出会えるかもしれない。」
そう告げて立ち去ろうとした。
「ちょっと。」
僕は男を呼び止め尋ねる。
「なんで僕にくれるんですか?」
男は微笑を浮かべつつ
「己に認識できない感情があるとしよう。大抵の人はその感情を元々なかったものとし忘れ去ってしまう。でもその感情の正体に迫ろうとする人もいる。私のような研究者にとってその真の意味に近づいた者の活躍は気になるものなんだよ。」
男は再び歩き出そうとした。
僕は反射的にその研究者の男に問いかける。
「あなたは一体…何者なんですか?」
男は「ふむ」と軽く頷き
「まず君の名前を聞こう。」
と言うので、僕は
「〈星月裕也〉」
と名乗った。
男は僕に言う。
「では改めて星月裕也君。君は己に認識できない感情が存在する。その答えに近づいた暁に多くのものを得ることができるだろう。期待しているよ。」
「あ。僕の名前なんだけどね。その夢コンの取扱説明書のなかに名刺が挟んであるから。」
淡々と告げ
「では星月裕也君。またどこかで会おう。」
そう言い残して立ち去った。
*・゜゜.:**・゜゜*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゜・
玄関のドアを開けて家の中に入る。
今日は疲れた。ちょっと家電量販店の広告に気を取られたために、変な親切なのか常識はずれの内分点を取るような男から別に求めてもいない夢コンを貰わされたのだ。やっぱ寄り道するとロクなことがない。
(夢コンの取説だけ見て寝ようかな… )
僕はベットに体を預けて貰った夢コンの取説を読むことにした。昼間の巨大広告スクリーンの説明が意外に頭に入っていたため、想像していたより早く読み進めることができた。今日寝るときに使ってみようかどうか迷いながら最後の1ページを開いたときー
ヒラヒラと一枚の紙切れが舞い落ちた。
(名刺か…)
そこには筆記体のサインが記されていた。
学校で筆記体はを習っていないので書くことはできないが、読むことはできる。
そこに記されていた名を見て目を疑った。
〔SAKURA HUBUKI〕
しばらく動けなかった。なぜその場で気づかなかったのだろう。いや仮に気づいて本人に尋ねたところで自分の正体を明かしただろうか。なぜ今日の昼間にあんな場所に居たのだろう?
多くの謎について考えるには脳が疲弊しきっていた。
取説を閉じて部屋の電気を消し、目を閉じた。
男は僕に「いつか会おう」と言った。
その言葉は僕に現実味を感じさせていた。
きっと会える。どこかで再会できる。
僕は胸にそう刻み込み、意識を手放した。
*・゜゜・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゜**・゜
ある建物の屋上で夜空を見上げる二人の男がいた。
一人の男はもう一人に言う。
「いやあ。今日は星が綺麗に見えるなあ。日頃の疲れが癒されていくようだねえ、近藤君。」
近藤と呼ばれた男が苦笑を交えながら答える。
「そういうもんですか…そういえば今日のあなたはやけにご機嫌ですが…何か嬉しいことでもあったんですか?」
男は視線を夜空に仰ぎながら
「私はね。ついに手に入れたんだよ。」
と得意げに言った。
近藤は特段の反応も示さず
「何を手に入れたんです?」
と尋ねる。
それに対して男は答える。
「私と意思を共にする仲間だ。彼らによって研究は守られ、さらなる発展を遂げるだろう。」
涼しげな風を受け白衣をなびかせながら男は屋上から立ち去ろうとした。近藤は囁く。
「展開が楽しみですよ。桜吹雪さん。…ちなみに研究室にお戻りになられるのですか?」
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