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第1章 少年と研究者
第2話 きっかけ
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窓から差し込む朝日で目を覚ました。
「あれ…もう朝か…」
結局使わずに寝ちゃったな。
僕はベッドに腰をかけ、机の上に無造作に置かれている「夢コン」に目をやった。光沢のある表面が太陽の光を反射して輝いている。
同じく机の上に置いてある〈スマート・ジーニアス〉を腕につけ身支度を始めた。
急速にIT技術が発展している日本では、大手の会社がスマートフォーンの後継機となる〈スマートデバイス〉を開発。それは腕に装着することで、目の前に仮想モニターを表示するというもので、使用時にいちいち取り出す必要がなく、紛失する心配もないなど、その優れた機能性は多くの人の目を引いた。僕が使っている〈スマート・ジーニアス〉もその一つであり、今の人気機種とも言われている。
「顔認証を開始します」
「認証完了」
メイン画面が表示されると「写真」アプリを開き、学校の時間割を表示。テキパキとカバンの中に今日いるものを詰め込んでいく。
一応言っておくと、僕〈星月裕也〉は高校1年。進学校だからそれなりに忙しいのだ。住んでいるのは東京。中心地からはほど遠く、皆が想像する華やかな場所ではなく、よくありがちな街中である。学校があるところは人通りも多いのだが。
準備と身支度を整え、食事を取るために1階に下りると、母が既に作り終えて待っていた。
「ちょっと!そんなにのんびりしていると電車に乗り遅れるわよ!」
「大丈夫だって」
「テレビをつける状況じゃないでしょ?」
「ニュースから社会情勢を知るのも勉強の一環ですから~」
という毎朝恒例の会話をする。
目玉焼きとキャベツの塩茹でを交互に口へ運びながら、ニュースのキャスターを見る。
「…次のニュースです。厚生労働省が先日発表したデータによりますと、労働者人口における未就職者人数の割合は過去最高を記録しています。この問題について研究をされている方に本日はお話を伺います。よろしくお願いします。」
「主たる理由の一つとして挙げられるのは、AIの進出ですね。今や多くの企業でAIが採用されており、その分野において人を雇う必要がなくなったことが大きいでしょうね。」
「なるほど。人はAIから仕事を奪われている言っても過言ではありませんね。」
「そういう人たちもITに頼りその有用性を十分理解している。発展に期待する反面、自分の場所がなくなってしまうのではないかという不安にも悩まされるんですよ。」
「世界の流れに対応していくために、今求められているのは何でしょうか?」
「人間にあってAIにないもの。それは感情です。豊かな心を育むことこそが、この社会において生き残る要だと思いますね。」
「私たちは日頃から自分の心を見失わないように過ごさなければなりませんね。本日は貴重なお話をしていただきありがとうございました!」
このニュースに僕は多少なりとも不安を感じていた。要するに勉強ができるだけではダメだということだろう。勉強ができて且つ人情味ある人こそが、今後の社会に求められているのだ。しかし対策を取るのは困難だろう。だって今の状況が人情味を養うのに適しているとは到底言い難い。AIのせいでリストラされた人が「豊かな心を育もう!」と考えられるようになるまでのプロセスはそう簡単ではない。だからこそ、学生のうちに対策をとるべきなのだが…
味噌汁をグイッと飲み干して「ごちそうさま」と言いおぼんを運びながら時計をチラ見。もうこんな時間か。
「人に与えられた時間は有限だからなあ」
「いきなりどうしたの!早くしなさい!」
カバンを掴んで「いってきます!」とどこに言っているのかよく分からないまま、ドアを開けた。太陽の光が眩しい。一日のスタートラインが明るく見える。このような感情を人情味といえるのなら、安心できるのに。
*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
家から駅・駅から学校の道のりが短いのはとても有難いことだ。おかげで朝はそれなりの余裕を持って登校できる。
教室のドアをガラガラと開けると、何やら教室が騒がしい。
「ねえねえ、夢コン買った?」
「せっかく並んだのに買えなかったー」
「なんと早朝から並んだら買えました!」
「うっそ!いいなあ!!」
「お前、あれ買えたんだよな」
「おう、大変だったんだぜ」
「俺たち友達だよな!?」
「言っとくけど貸さないよ?」
「はあ!?ケチかよ!!」
これでもかというほど、クラスは「夢コン」の話で持ちきりだった。
「裕也~、おはよ!」
「おわっ!?」
背後から急に声をかけられ驚き振り向くと、そこには〈遠藤実成〉がいた。父親が温厚な公務員であり、その性格を引き継いだのか実成もとても親しみやすい性格をしている。僕とは中学校が同じで長い付き合いなのだ。
「お、おはよ!」
「朝から教室は騒がしいね~」
「そうだね… 」
「別に夢コンがなくたって平気だよ。」
実成には夢コンに興味はないと話していたため、僕を気遣ってくれているのだろう。が、実際は持ってますなんてことは言えるはずもなかった。
「宿題出しに行こっか」
僕が通う高校は、宿題を各箇所に設けられた提出場所に置くというやり方を取っている。始業ギリギリに出しに行くと、多くの生徒でごった返しているので、早めに出しに行くのが無難である。
カバンのなかから宿題を取り出す。そこで一つあってはならない不純物が混ざっていた。
「あれ、裕也、それって…」
「…」
「夢コンの取説じゃない?」
朝に急いで準備したせいだろう。宿題に取説が混ざりこんでいることに気づかなかった。明らかな僕のミス。
「いや、あの、これは…」
「あははは、なんだ~。夢コン買ってんじゃーん!あれだけ『僕は夢コンなんかに興味はない』とか言ってたのに!あははは!」
実成が目の前で爆笑している。
「ちがうんだよ!これは運命というか…」
「なるほど。運命的な出会いを果たした裕也にとって夢コンはかけがえのない存在となってしまい、せめて取説だけは学校に連れて行きたい。そういうこと?」
「んなわけあるか!!」
「なにか楽しいことでもあったの?」
このやり取りに、またしても中学からの付き合いである〈海川愛〉が乗じてきた。母親は看護師ということもあり将来は医療系を目標にしている。人の世話をするのに努力を惜しまないその性格はきっと現場で生かせるだろう。
「おっマナ!おはよう!」
「おはよう…」
満面の笑みを浮かべる実成とは対照的に、僕は屈辱にまみれた顔をしているだろう。
「裕也が夢コンを買ったんだって」
「あれ、そうなの?以前に聞いたときは1mmも興味を示さなかったのに、人って分からないもんね。」
「それがさ。どうやら運命的な…」
「そこは言わなくてよろしい!」
僕が慌てて静止すると、実也は「えーっ」と残念そうな顔をした。
「となると3人とも夢コン所持者ということね!オンラインプレイで遊びましょうよ!」
3人は中学の頃から交流がある。そして3年間クラス替えが行われない「特進コース」に入学できたのも、きっと何かの縁だろう。
「私ね。投稿されている面白い夢を見つけたのよ。この3人でその世界に行ってみましょうよ!」
僕が「ジャンルは?」と尋ねると
「ホラーよ」と答えた。
僕は実也がちょっと嫌そうな顔をしたのを見逃さなかった。さっきの仕返しだ。
「あれ、もしかして実也はホラーは苦手なのかな~?でも僕がいるから大丈夫だよ!」
「はあ!?」
そんな2人の様子を見て愛が
「相変わらず仲がいいわね。はい、これが夢のIDよ。今晩、夢の中で会いましょう!」
「よし、楽しみだな!」と実也。
「怖くないのか?」と尋ねると
「むしろ楽しみ」とだけ答えた。
思い出すように愛が
「そういえば2人とも宿題は出したの?もうじき始業のチャイムが鳴るわよ?」
「やべえ!そうだった!」
こうして3人は別れ、今夜夢の中で再開することを約束を交わしたのだった。
こうして果てしない夢の旅は始まった。
☆To Be Continued☆
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一応言っておくと、僕〈星月裕也〉は高校1年。進学校だからそれなりに忙しいのだ。住んでいるのは東京。中心地からはほど遠く、皆が想像する華やかな場所ではなく、よくありがちな街中である。学校があるところは人通りも多いのだが。
準備と身支度を整え、食事を取るために1階に下りると、母が既に作り終えて待っていた。
「ちょっと!そんなにのんびりしていると電車に乗り遅れるわよ!」
「大丈夫だって」
「テレビをつける状況じゃないでしょ?」
「ニュースから社会情勢を知るのも勉強の一環ですから~」
という毎朝恒例の会話をする。
目玉焼きとキャベツの塩茹でを交互に口へ運びながら、ニュースのキャスターを見る。
「…次のニュースです。厚生労働省が先日発表したデータによりますと、労働者人口における未就職者人数の割合は過去最高を記録しています。この問題について研究をされている方に本日はお話を伺います。よろしくお願いします。」
「主たる理由の一つとして挙げられるのは、AIの進出ですね。今や多くの企業でAIが採用されており、その分野において人を雇う必要がなくなったことが大きいでしょうね。」
「なるほど。人はAIから仕事を奪われている言っても過言ではありませんね。」
「そういう人たちもITに頼りその有用性を十分理解している。発展に期待する反面、自分の場所がなくなってしまうのではないかという不安にも悩まされるんですよ。」
「世界の流れに対応していくために、今求められているのは何でしょうか?」
「人間にあってAIにないもの。それは感情です。豊かな心を育むことこそが、この社会において生き残る要だと思いますね。」
「私たちは日頃から自分の心を見失わないように過ごさなければなりませんね。本日は貴重なお話をしていただきありがとうございました!」
このニュースに僕は多少なりとも不安を感じていた。要するに勉強ができるだけではダメだということだろう。勉強ができて且つ人情味ある人こそが、今後の社会に求められているのだ。しかし対策を取るのは困難だろう。だって今の状況が人情味を養うのに適しているとは到底言い難い。AIのせいでリストラされた人が「豊かな心を育もう!」と考えられるようになるまでのプロセスはそう簡単ではない。だからこそ、学生のうちに対策をとるべきなのだが…
味噌汁をグイッと飲み干して「ごちそうさま」と言いおぼんを運びながら時計をチラ見。もうこんな時間か。
「人に与えられた時間は有限だからなあ」
「いきなりどうしたの!早くしなさい!」
カバンを掴んで「いってきます!」とどこに言っているのかよく分からないまま、ドアを開けた。太陽の光が眩しい。一日のスタートラインが明るく見える。このような感情を人情味といえるのなら、安心できるのに。
*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
家から駅・駅から学校の道のりが短いのはとても有難いことだ。おかげで朝はそれなりの余裕を持って登校できる。
教室のドアをガラガラと開けると、何やら教室が騒がしい。
「ねえねえ、夢コン買った?」
「せっかく並んだのに買えなかったー」
「なんと早朝から並んだら買えました!」
「うっそ!いいなあ!!」
「お前、あれ買えたんだよな」
「おう、大変だったんだぜ」
「俺たち友達だよな!?」
「言っとくけど貸さないよ?」
「はあ!?ケチかよ!!」
これでもかというほど、クラスは「夢コン」の話で持ちきりだった。
「裕也~、おはよ!」
「おわっ!?」
背後から急に声をかけられ驚き振り向くと、そこには〈遠藤実成〉がいた。父親が温厚な公務員であり、その性格を引き継いだのか実成もとても親しみやすい性格をしている。僕とは中学校が同じで長い付き合いなのだ。
「お、おはよ!」
「朝から教室は騒がしいね~」
「そうだね… 」
「別に夢コンがなくたって平気だよ。」
実成には夢コンに興味はないと話していたため、僕を気遣ってくれているのだろう。が、実際は持ってますなんてことは言えるはずもなかった。
「宿題出しに行こっか」
僕が通う高校は、宿題を各箇所に設けられた提出場所に置くというやり方を取っている。始業ギリギリに出しに行くと、多くの生徒でごった返しているので、早めに出しに行くのが無難である。
カバンのなかから宿題を取り出す。そこで一つあってはならない不純物が混ざっていた。
「あれ、裕也、それって…」
「…」
「夢コンの取説じゃない?」
朝に急いで準備したせいだろう。宿題に取説が混ざりこんでいることに気づかなかった。明らかな僕のミス。
「いや、あの、これは…」
「あははは、なんだ~。夢コン買ってんじゃーん!あれだけ『僕は夢コンなんかに興味はない』とか言ってたのに!あははは!」
実成が目の前で爆笑している。
「ちがうんだよ!これは運命というか…」
「なるほど。運命的な出会いを果たした裕也にとって夢コンはかけがえのない存在となってしまい、せめて取説だけは学校に連れて行きたい。そういうこと?」
「んなわけあるか!!」
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このやり取りに、またしても中学からの付き合いである〈海川愛〉が乗じてきた。母親は看護師ということもあり将来は医療系を目標にしている。人の世話をするのに努力を惜しまないその性格はきっと現場で生かせるだろう。
「おっマナ!おはよう!」
「おはよう…」
満面の笑みを浮かべる実成とは対照的に、僕は屈辱にまみれた顔をしているだろう。
「裕也が夢コンを買ったんだって」
「あれ、そうなの?以前に聞いたときは1mmも興味を示さなかったのに、人って分からないもんね。」
「それがさ。どうやら運命的な…」
「そこは言わなくてよろしい!」
僕が慌てて静止すると、実也は「えーっ」と残念そうな顔をした。
「となると3人とも夢コン所持者ということね!オンラインプレイで遊びましょうよ!」
3人は中学の頃から交流がある。そして3年間クラス替えが行われない「特進コース」に入学できたのも、きっと何かの縁だろう。
「私ね。投稿されている面白い夢を見つけたのよ。この3人でその世界に行ってみましょうよ!」
僕が「ジャンルは?」と尋ねると
「ホラーよ」と答えた。
僕は実也がちょっと嫌そうな顔をしたのを見逃さなかった。さっきの仕返しだ。
「あれ、もしかして実也はホラーは苦手なのかな~?でも僕がいるから大丈夫だよ!」
「はあ!?」
そんな2人の様子を見て愛が
「相変わらず仲がいいわね。はい、これが夢のIDよ。今晩、夢の中で会いましょう!」
「よし、楽しみだな!」と実也。
「怖くないのか?」と尋ねると
「むしろ楽しみ」とだけ答えた。
思い出すように愛が
「そういえば2人とも宿題は出したの?もうじき始業のチャイムが鳴るわよ?」
「やべえ!そうだった!」
こうして3人は別れ、今夜夢の中で再開することを約束を交わしたのだった。
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