ドリーム・クロスコネクト〈夢=異世界で主人公が無双する⁉︎〉

ミライユキ

文字の大きさ
2 / 4
第1章 少年と研究者

第2話 きっかけ

しおりを挟む
窓から差し込む朝日で目を覚ました。

「あれ…もう朝か…」

結局使わずに寝ちゃったな。

僕はベッドに腰をかけ、机の上に無造作に置かれている「夢コン」に目をやった。光沢のある表面が太陽の光を反射して輝いている。

同じく机の上に置いてある〈スマート・ジーニアス〉を腕につけ身支度を始めた。 

急速にIT技術が発展している日本では、大手の会社がスマートフォーンの後継機となる〈スマートデバイス〉を開発。それは腕に装着することで、目の前に仮想モニターを表示するというもので、使用時にいちいち取り出す必要がなく、紛失する心配もないなど、その優れた機能性は多くの人の目を引いた。僕が使っている〈スマート・ジーニアス〉もその一つであり、今の人気機種とも言われている。

「顔認証を開始します」

「認証完了」

メイン画面が表示されると「写真」アプリを開き、学校の時間割を表示。テキパキとカバンの中に今日いるものを詰め込んでいく。

一応言っておくと、僕〈星月裕也〉は高校1年。進学校だからそれなりに忙しいのだ。住んでいるのは東京。中心地からはほど遠く、皆が想像する華やかな場所ではなく、よくありがちな街中である。学校があるところは人通りも多いのだが。

準備と身支度を整え、食事を取るために1階に下りると、母が既に作り終えて待っていた。

「ちょっと!そんなにのんびりしていると電車に乗り遅れるわよ!」

「大丈夫だって」

「テレビをつける状況じゃないでしょ?」

「ニュースから社会情勢を知るのも勉強の一環ですから~」

という毎朝恒例の会話をする。

目玉焼きとキャベツの塩茹でを交互に口へ運びながら、ニュースのキャスターを見る。

「…次のニュースです。厚生労働省が先日発表したデータによりますと、労働者人口における未就職者人数の割合は過去最高を記録しています。この問題について研究をされている方に本日はお話を伺います。よろしくお願いします。」

「主たる理由の一つとして挙げられるのは、AIの進出ですね。今や多くの企業でAIが採用されており、その分野において人を雇う必要がなくなったことが大きいでしょうね。」

「なるほど。人はAIから仕事を奪われている言っても過言ではありませんね。」

「そういう人たちもITに頼りその有用性を十分理解している。発展に期待する反面、自分の場所がなくなってしまうのではないかという不安にも悩まされるんですよ。」

「世界の流れに対応していくために、今求められているのは何でしょうか?」

「人間にあってAIにないもの。それは感情です。豊かな心を育むことこそが、この社会において生き残る要だと思いますね。」

「私たちは日頃から自分の心を見失わないように過ごさなければなりませんね。本日は貴重なお話をしていただきありがとうございました!」

このニュースに僕は多少なりとも不安を感じていた。要するに勉強ができるだけではダメだということだろう。勉強ができて且つ人情味ある人こそが、今後の社会に求められているのだ。しかし対策を取るのは困難だろう。だって今の状況が人情味を養うのに適しているとは到底言い難い。AIのせいでリストラされた人が「豊かな心を育もう!」と考えられるようになるまでのプロセスはそう簡単ではない。だからこそ、学生のうちに対策をとるべきなのだが…
 
味噌汁をグイッと飲み干して「ごちそうさま」と言いおぼんを運びながら時計をチラ見。もうこんな時間か。

「人に与えられた時間は有限だからなあ」

「いきなりどうしたの!早くしなさい!」

カバンを掴んで「いってきます!」とどこに言っているのかよく分からないまま、ドアを開けた。太陽の光が眩しい。一日のスタートラインが明るく見える。このような感情を人情味といえるのなら、安心できるのに。

*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

家から駅・駅から学校の道のりが短いのはとても有難いことだ。おかげで朝はそれなりの余裕を持って登校できる。

教室のドアをガラガラと開けると、何やら教室が騒がしい。

「ねえねえ、夢コン買った?」

「せっかく並んだのに買えなかったー」

「なんと早朝から並んだら買えました!」

「うっそ!いいなあ!!」  


「お前、あれ買えたんだよな」  

「おう、大変だったんだぜ」

「俺たち友達だよな!?」

「言っとくけど貸さないよ?」

「はあ!?ケチかよ!!」


これでもかというほど、クラスは「夢コン」の話で持ちきりだった。

「裕也~、おはよ!」

「おわっ!?」

背後から急に声をかけられ驚き振り向くと、そこには〈遠藤実成えんどうみのる〉がいた。父親が温厚な公務員であり、その性格を引き継いだのか実成もとても親しみやすい性格をしている。僕とは中学校が同じで長い付き合いなのだ。

「お、おはよ!」

「朝から教室は騒がしいね~」

「そうだね… 」

「別に夢コンがなくたって平気だよ。」

実成には夢コンに興味はないと話していたため、僕を気遣ってくれているのだろう。が、実際は持ってますなんてことは言えるはずもなかった。

「宿題出しに行こっか」

僕が通う高校は、宿題を各箇所に設けられた提出場所に置くというやり方を取っている。始業ギリギリに出しに行くと、多くの生徒でごった返しているので、早めに出しに行くのが無難である。

カバンのなかから宿題を取り出す。そこで一つあってはならない不純物が混ざっていた。

「あれ、裕也、それって…」
 
「…」

「夢コンの取説じゃない?」

朝に急いで準備したせいだろう。宿題に取説が混ざりこんでいることに気づかなかった。明らかな僕のミス。

「いや、あの、これは…」

「あははは、なんだ~。夢コン買ってんじゃーん!あれだけ『僕は夢コンなんかに興味はない』とか言ってたのに!あははは!」

実成が目の前で爆笑している。

「ちがうんだよ!これは運命というか…」

「なるほど。運命的な出会いを果たした裕也にとって夢コンはかけがえのない存在となってしまい、せめて取説だけは学校に連れて行きたい。そういうこと?」

「んなわけあるか!!」  

「なにか楽しいことでもあったの?」

このやり取りに、またしても中学からの付き合いである〈海川愛うみかわまな〉が乗じてきた。母親は看護師ということもあり将来は医療系を目標にしている。人の世話をするのに努力を惜しまないその性格はきっと現場で生かせるだろう。

「おっマナ!おはよう!」

「おはよう…」

満面の笑みを浮かべる実成とは対照的に、僕は屈辱にまみれた顔をしているだろう。

「裕也が夢コンを買ったんだって」

「あれ、そうなの?以前に聞いたときは1mmも興味を示さなかったのに、人って分からないもんね。」

「それがさ。どうやら運命的な…」

「そこは言わなくてよろしい!」

僕が慌てて静止すると、実也は「えーっ」と残念そうな顔をした。

「となると3人とも夢コン所持者ということね!オンラインプレイで遊びましょうよ!」

3人は中学の頃から交流がある。そして3年間クラス替えが行われない「特進コース」に入学できたのも、きっと何かの縁だろう。

「私ね。投稿されている面白い夢を見つけたのよ。この3人でその世界に行ってみましょうよ!」

僕が「ジャンルは?」と尋ねると

「ホラーよ」と答えた。

僕は実也がちょっと嫌そうな顔をしたのを見逃さなかった。さっきの仕返しだ。

「あれ、もしかして実也はホラーは苦手なのかな~?でも僕がいるから大丈夫だよ!」

「はあ!?」

そんな2人の様子を見て愛が

「相変わらず仲がいいわね。はい、これが夢のIDよ。今晩、夢の中で会いましょう!」

「よし、楽しみだな!」と実也。

「怖くないのか?」と尋ねると

「むしろ楽しみ」とだけ答えた。

思い出すように愛が

「そういえば2人とも宿題は出したの?もうじき始業のチャイムが鳴るわよ?」

「やべえ!そうだった!」

こうして3人は別れ、今夜夢の中で再開することを約束を交わしたのだった。

こうして果てしない夢の旅は始まった。


☆To Be Continued☆

~作品内に登場する人物・舞台・機関はすべてフィクションです~

◇作品のお気に入り登録をお願いします!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

大賢者アリアナの大冒険~もふもふパラダイス~

akechi
ファンタジー
実の親に殺されそうになっていた赤子は竜族の長に助けられて、そのまま竜の里で育てられた。アリアナと名付けられたその可愛いらしい女の子は持ち前の好奇心旺盛さを発揮して、様々な種族と出会い、交流を深めていくお話です。 【転生皇女は冷酷な皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!】のスピンオフです👍️アレクシアの前世のお話です🙋 ※コメディ寄りです

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

【完結】金の国 銀の国 蛙の国―ガマ王太子に嫁がされた三女は蓮の花に囲まれ愛する旦那様と幸せに暮らす。

remo
恋愛
かつて文明大国の異名をとったボッチャリ国は、今やすっかり衰退し、廃棄物の処理に困る極貧小国になり果てていた。 窮地に陥った王は3人の娘を嫁がせる代わりに援助してくれる国を募る。 それはそれは美しいと評判の皇女たちに各国王子たちから求婚が殺到し、 気高く美しい長女アマリリスは金の国へ、可憐でたおやかな次女アネモネは銀の国へ嫁ぐことになった。 しかし、働き者でたくましいが器量の悪い三女アヤメは貰い手がなく、唯一引き取りを承諾したのは、巨大なガマガエルの妖怪が統べるという辺境にある蛙国。 ばあや一人を付き人に、沼地ばかりのじめじめした蛙国を訪れたアヤメは、 おどろおどろしいガマ獣人たちと暮らすことになるが、肝心のガマ王太子は決してアヤメに真の姿を見せようとはしないのだった。 【完結】ありがとうございました。

処理中です...