虚ろで完璧な少女

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 普通の人間より成長が早い私の容姿が幼女から少女へと変化した頃
 私は外に出た。
 白い研究所だけが世界だった私が外の世界に出ても、何も感じる事はなかった。
 二十一世紀中頃から成長を停めた世界。
 消費が生産を上回る世界。
 資源が減っていくだけの世界。
 このに造られた私ーーNo27。

 私という『物』が世界の為にどう使われるかは、この時点で大体の予測はついていた。
 それがわかっていながら、私は世界に何も思わない。
 やはり傑の言った通り私は『虚ろで完璧』なのだろう、
 
 と...傑の家につくまではそう思っていた。


 何故だ⁉ 何故、私はこんな格好をさせられているのだ⁉
 この実験は、一般的な家庭の子供として過ごす為のものだった筈だ?
 一般的な一戸建ての家にはない筈だ。
 何故、私を見るや挨拶もなしに私を有無をいわさず着替えさせたこの女まで同じ格好なのだ?
 いや、一応データとしてならある。
 しかし、それはデータでは、あくまで空想上の物だった筈だ。
 主に『ライトノベルス』という物語の中での話だったはずだ。
 
 私は考えた。
 それはそれは必死で思考した。
 おそらく、自我をもってから初めてと言ってもいい程考えた。
 そして、完璧な私は完璧な答えを導き出した。
 こちらを微笑ましい笑顔で見ている傑を見て間違いないと確信した。

 私は私を抱き締めながら頬擦りをしている女の膝の上から言った。

「なるほど、傑のお義父様は『中二病』でしたか」

 当然だろう。
 自分の娘を自宅でメイド姿にさせて微笑んでいるのだから。

◆◆◆
 
 高遠家に滞在して数日が過ぎた。
 私は今『冬華』と呼ばれている。戸籍上では傑の養女という立場である。
 一般家庭と言うには些か問題のある高遠家に

「いやいや冬華ちゃん。うちは普通の一般家庭だよ」
「そうですね。ラノベ的な一般家庭ですね」

 私はメイド姿で答える。
 この家はおかしい! 
 私の得たデータではそう断じるしかできなかった。

「はは、確かに鷹華は少しアレだけど一生懸命なだけだよ」
「そうですね。確かにお姉ちゃんは一生懸命なドジっ子ですね」

 そう、この家がおかしいのは傑の一人娘である『高遠鷹華』の存在のせいだと私は断言する。
 私に驚愕という感情を体感させた彼女は本物だ。

 本物のドジっ子だ。




 

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