恋は盲目?ならこの愛は失明だろう

藍都相楽

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京、不信感

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自分の父は、三年前の八月に夏の暑さにあてられてしまい、それはもう、元々の物腰柔らかい雰囲気さえ暑さで溶け落ちたのかと思う程げっそりと顔がこけてしまいまって、

案の定、坂を転がり落ちるような速度で衰弱して、もう身体を起き上がらせるのがやっとの状態でしたが、その年の九月に息を引き取りました。

自分と同じく咽び泣く分家の奴らは、葬儀が終われば態度が一変した人もおりました。それだけではありません、父と親しくしていた、ラクの一人が

(それは、本家である我々が、分家の誰かを呼ぶ言い方でした)

集会では涙を流しながら、お悔やみ申し上げます、なんて震える事で言うものですから、嗚呼、父は尊敬された人なのだなと、寂しさあれど誇らしかったのです。

ですがそのラクの奴が自分が少し席を外したが辺りを警戒し、梅が聞き耳をたてているとは知らずに、やれ父の悪口を何とも楽しそうに話すではないですか。

金回りがこれで良くなる、厄介者は早々にご退場願う、齢十五の京は取り込みやすいな、などなど言い煙草を出せば、外へ出て行きました。

そうして後々、当主任命式がありました。そ奴らは、期待していますだの、前当主様は、それは立派な方でなんて話し始めて、自分は怒りがふつふつともう頭まで浸透してきてしまって、今では、緊張と怒りでもう記憶など薄れてしまいました。

遂に自分は、人間不信になりました。まだ集会が終わり一週間経過したかどうかの頃でしたが、屋敷には梅と竹虎しか通しませんでした。運転手には近くの家を貸し与えて、玄関には絶対に通すものかと固く誓いました。

自分の母は厳しい方で、閉じ籠った自分に罵詈雑言の限りをぶつけようとしたのですが、いやはや、あの頃の母はどこかおかしかったのですよ。

変な物にお金を使い続けて、父に金を縋って、くれないと分かると血相を変えて、そして父が亡くなる年の六月の中旬にはついに、父の金庫から金を盗みまして、父は表向きは実家で療養をしろと言いつつ、自分に悪影響があると、母を遠ざけました。

また、それを見て聞いていた梅と竹虎は、例えなんて言われようとも母を門さえも通さずに、自分を守ってくれて、ですが父の一件、たまに疑心になってしまう心に自己嫌悪しつつ、十八歳を心待ちにしたのです。

ある日梅は、自分の疑心を分かっていましたけれども、雨の日梅は珍しく散歩を提案してきました。九年間も共にしつつ、自分が外出は別に好きではないとは、重々承知していたのにも関わらずに。ですが別に、悪い気はしなかったのです。

「京様、今日は雨が柔らかく降っています。家の近くに、新しい喫茶が出来たと噂を聞きました、行ってみては如何でしょうか?メロンソーダも、ソフトクリームもあるそうで、籠りっぱなしでは、筋力も落ちてしまいますし、どうです?」

なんて梅は、紺色の外出着物を手に取りつつたずねました。自分も断りづらく、渋々頷き出かけるように支度を整えつつ、梅は、竹虎には内緒ですよ。なんて悪い顔でクスッと笑いました。

丁度、竹虎は買い出しに行っていて、家の玄関も門もしっかりと戸締りをして、初めて梅と二人きりで出かけたのです。
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