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第13話-①
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――エリック様には探している女性がいる。
フランシスカ様とのあの会話がずっと頭から離れない。もし彼女の勘が合っているならエリック様は過去に不可抗力で離れ離れになってしまった女性がいて、エリック様はその方のことが忘れられなくて探していた。
そんな時にあの家に囚われている私を見かけてしまい、見逃すことができなくて私と婚約をしてくれたのだとしたら。エリック様の想いを私が絶ってしまったのなら。
私はあの人を解放してあげるべきじゃないのだろうか。
「シーラ? どうかしたかい?」
「あ……」
朝食の時間、向かいに座るお母様は心配そうに伺ってきていた。考え込んでいるうちにスープを飲もうとしていたスプーンが止まっていたようだ。
「どこか体調でも悪いのかな。君はいつも無理をするから」
「い、いえ……その、大丈夫です」
心配かけまいと笑顔を作るけれどお母様にはお見通しみたいで、フォークとナイフを置いたお母様は指を組んで私をじっと見つめてくる。彼女からの視線には逃げられないと悟った私は同じようにスプーンを置く。
「……ちょっと、睡眠不足で」
「何か不安なことでも?」
「……少しだけ」
「それは私には言いにくいことかな」
「…………」
黙って俯く私にお母様は立ち上がり、隣の椅子に座って顔を覗き込むと目の下を指でなぞった。
「ああ、隈があるね。今日はもう部屋で休んでいなさい」
「でも、今日は家庭教師の先生がいらっしゃる日で……」
「私から連絡しておくよ。君の体の方が大事だ」
「……分かりました」
先日倒れてしまったこともあって私は素直に自分の部屋に戻ってベッドに横になる。
リリーは何かあったら声をかけてくれと言って部屋を出ていき一人になる。二人の優しさに感謝しながら私は見慣れてきた天井を見てため息を吐く。
きっとお母様は私の悩みの原因を分かっている気がする。エリック様と昔馴染みのお母様に相談したらきっと解決するのだろうけれど、それじゃいつまでも母親がいないと何もできない箱入り娘になってしまう。これじゃあエリック様の隣に堂々と立てない。
先日のことをずっと考えてしまって寝不足のせいでだんだん瞼が落ちてくる。お母様の好意に甘えて今日はもう休んでしまおう。私はそのまま眠りにつくことにした。
◇◇◇
(ん……?)
頭を優しく撫でられている感触に意識がゆっくりと浮上する。様子を見にきたお母様かと思ったけれど、この大きくて優しい手は……。
「えりっく、さま……」
ゆっくり瞼を上げるとそこにはやっぱりエリック様がいて、彼は困ったように眉を下げている。
「すまない、起こしてしまったか」
「いいえ……」
私の頭に乗っていた手が離れようとしているのが分かり、その手を咄嗟に掴んで頬に添える。大きくて温かくて大好きな手に頬擦りしているとぴくりと彼の動揺が伝わってきた。そこで寝ぼけていた頭がようやく覚醒し、自分のしでかしたことに慌てて手を離す。
「も、申し訳ありません!」
「い、いや……」
エリック様は先ほど頬擦りをしていた手で自身の口元を隠して目を逸らした。色々恥ずかしくて頭からシーツを被る。
寝ぼけていたとはいえ、エリック様が目の前にいたことが嬉しくてあんなことをしてしまうなんて……今すぐにでも穴に入って埋めてほしい!
シーツの中で唸っていると小さく笑う声とまた頭に触れて撫でられる感触に目の下までシーツから覗かせる。
「あ、あの……エリック様はどうしてここに……」
「ん? アナベラからシーラが体調を崩したって連絡がきたんだ。それと、フランシスカからお茶会のことで相談されたんだ」
「っ!」
友人の名前に心臓が跳ね、彼を真っ直ぐ見ることができない。私が一人悩んでしまうことを知っているから様子がおかしいと聞いてすぐに来てくれたのだろう。申し訳なくて泣けてくる。
「シーラ。少し私の話を聞いてくれるか?」
「……はい」
フランシスカ様とのあの会話がずっと頭から離れない。もし彼女の勘が合っているならエリック様は過去に不可抗力で離れ離れになってしまった女性がいて、エリック様はその方のことが忘れられなくて探していた。
そんな時にあの家に囚われている私を見かけてしまい、見逃すことができなくて私と婚約をしてくれたのだとしたら。エリック様の想いを私が絶ってしまったのなら。
私はあの人を解放してあげるべきじゃないのだろうか。
「シーラ? どうかしたかい?」
「あ……」
朝食の時間、向かいに座るお母様は心配そうに伺ってきていた。考え込んでいるうちにスープを飲もうとしていたスプーンが止まっていたようだ。
「どこか体調でも悪いのかな。君はいつも無理をするから」
「い、いえ……その、大丈夫です」
心配かけまいと笑顔を作るけれどお母様にはお見通しみたいで、フォークとナイフを置いたお母様は指を組んで私をじっと見つめてくる。彼女からの視線には逃げられないと悟った私は同じようにスプーンを置く。
「……ちょっと、睡眠不足で」
「何か不安なことでも?」
「……少しだけ」
「それは私には言いにくいことかな」
「…………」
黙って俯く私にお母様は立ち上がり、隣の椅子に座って顔を覗き込むと目の下を指でなぞった。
「ああ、隈があるね。今日はもう部屋で休んでいなさい」
「でも、今日は家庭教師の先生がいらっしゃる日で……」
「私から連絡しておくよ。君の体の方が大事だ」
「……分かりました」
先日倒れてしまったこともあって私は素直に自分の部屋に戻ってベッドに横になる。
リリーは何かあったら声をかけてくれと言って部屋を出ていき一人になる。二人の優しさに感謝しながら私は見慣れてきた天井を見てため息を吐く。
きっとお母様は私の悩みの原因を分かっている気がする。エリック様と昔馴染みのお母様に相談したらきっと解決するのだろうけれど、それじゃいつまでも母親がいないと何もできない箱入り娘になってしまう。これじゃあエリック様の隣に堂々と立てない。
先日のことをずっと考えてしまって寝不足のせいでだんだん瞼が落ちてくる。お母様の好意に甘えて今日はもう休んでしまおう。私はそのまま眠りにつくことにした。
◇◇◇
(ん……?)
頭を優しく撫でられている感触に意識がゆっくりと浮上する。様子を見にきたお母様かと思ったけれど、この大きくて優しい手は……。
「えりっく、さま……」
ゆっくり瞼を上げるとそこにはやっぱりエリック様がいて、彼は困ったように眉を下げている。
「すまない、起こしてしまったか」
「いいえ……」
私の頭に乗っていた手が離れようとしているのが分かり、その手を咄嗟に掴んで頬に添える。大きくて温かくて大好きな手に頬擦りしているとぴくりと彼の動揺が伝わってきた。そこで寝ぼけていた頭がようやく覚醒し、自分のしでかしたことに慌てて手を離す。
「も、申し訳ありません!」
「い、いや……」
エリック様は先ほど頬擦りをしていた手で自身の口元を隠して目を逸らした。色々恥ずかしくて頭からシーツを被る。
寝ぼけていたとはいえ、エリック様が目の前にいたことが嬉しくてあんなことをしてしまうなんて……今すぐにでも穴に入って埋めてほしい!
シーツの中で唸っていると小さく笑う声とまた頭に触れて撫でられる感触に目の下までシーツから覗かせる。
「あ、あの……エリック様はどうしてここに……」
「ん? アナベラからシーラが体調を崩したって連絡がきたんだ。それと、フランシスカからお茶会のことで相談されたんだ」
「っ!」
友人の名前に心臓が跳ね、彼を真っ直ぐ見ることができない。私が一人悩んでしまうことを知っているから様子がおかしいと聞いてすぐに来てくれたのだろう。申し訳なくて泣けてくる。
「シーラ。少し私の話を聞いてくれるか?」
「……はい」
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