何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー

木岡(もくおか)

文字の大きさ
71 / 117

番外編 2 「人類 滅亡」①

しおりを挟む
「あーあ。本当に使えない奴だね」

 今日もそんな言葉が私に向けられた。いつも通り、溜め息と一緒に言われた言葉だ。

 向けられたと言っても、直接目を見て言われた訳ではない。隣の部屋からわざと聞こえるような大きさで言われた。

 相手は母親。きっと18歳でフリーターをしている私のことが嫌いで嫌いでしょうがないのだ――。


 今年の春、私は高校を退学した。通信制の高校だった。やめた理由はめんどくさいからだ。

 あと1年頑張れば、卒業できる。卒業したら大学に行くか就職するか、そういう状況だったのだけれど、私にはそのどちらも魅力的ではなかった。大学にも行きたいと思わなかったし、就職もしたくなかった。したくない目標の為に人は頑張れない。だから、やめた。

 理由はそれだけではない。私の家にはお金が無かった。

 母親は水商売、父親は無職。ボロいアパートで3人暮らし。そんな家庭には言うまでもなくお金は無い。

 私は中学を卒業と同時に働くことを強要されたくらいだ。高校には行っていいけど、行くなら自分でお金を稼げ。中学卒業前に親からそう言われた。

 そういう理由で、私はその時からバイトをしていた。職種はホテルの清掃業、働く時間を多くする為に高校は通信制のものを選んで、週6でシフトに入った。

 支えも目標も特にないし、勉強の仕方も目上の人との付き合い方もよく知らない。そんな状態から2年頑張ったのだけど、肉体的にも精神的にも疲労が溜まって、バイトか高校どちらかをやめないと倒れてしまう。そう感じて、どちらをやめるか考えた時にお金の無い家庭に生まれた私には高校をやめる選択肢しかなかった。

 それからはフリーターとなってバイトだけをして生きた。やるバイトの数や量を増やした訳ではないから、今までよりも時間に余裕はできた。勉強と高校に使っていた分の時間で休むことができるようになった。

 けれど、しばらくして別の問題が発生した。親に嫌われてしまったのだ。

 大して金を稼がない癖に、家で寝ていることが多い私を見て、母親は事あるごとに嫌味を言うようになった。

 暇ならもっと働けだとか、自分と同じ水商売を勧めてくることもあった。父には何も言わないくせに弱い立場の私には思うことを何でも言ってきた。

 自分が10代で水商売を始めるなんて考えると、涙が出そうだ。しかし、遅かれ早かれそうなるしかないと自分でも分かっていた。そもそも高校をやめる時も最悪、体を売って生きていけばいいと思っていたのだから……。

「さっさとやればいいのに……はあ、産んでやったんだから……」

 私は体を起こして耳を塞ぐ。母親の溜め息と独り言として発する愚痴が聞くに堪えなくなった。

 その状態で視線を落として見えた、私のふとももには数か所青いアザがある。

 父親からのDVも母親だけでなく、自分にも頻繁に向くようになった。ちょっとでも逆らったら体罰。お酒を飲んでいる時は何もしてなくても目が合ったら体罰。対策方法は別の部屋で隠れているしかない。

 人生詰んでしまっている。これから先も幸せなことがある気がしない。母親の言う通り水商売を始めたとしても私の不幸は変わらない。

 私と似た境遇をしている漫画やドラマの人物は皆自殺を考えていた。けれど、私は違った。死ぬのも嫌だった。痛いのは嫌、死ぬぐらいだったらまだ今の生活のほうが良い。そう思っていた。

 別に明日や未来に何が待っている訳ではないけれど、何故か時間が過ぎるのだけが今の私の楽しみだった。夜まで生きて布団に入れば、少しは落ち着けるから。暗闇で目を閉じていれば、何も考えなくていい瞬間が私を包んでくれた。

 そんな最後の砦さえもつい最近崩されてしまうようになった。深い夜、初めて私の顔面へ水がかかって飛び起きた時は一瞬悪い夢かと思った。

「コンビニ行って酒買ってこい」

 暗い部屋で咳き込みながら、影も見えない父親に無理やり立たされる。同じようなことが数回あって、これが続くと分かった時にはいよいよ私は絶望した。死にたくなくても死ぬしかない。

 そんな時だ。私の目の前に黒いパソコンが現れたのは。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
青春
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)

MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。 しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。 ​母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。  その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。 ​純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。 交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。

処理中です...