114 / 117
word44 「さっきまで考えていたこと 内容」
しおりを挟む
――あれ、さっきまで何考えてたんだっけ?
そう思ったのはある日の夜のことだった。
就寝前のルーティンが終わった23時40分。あとは眠くなるまでベッドでだらだらとするだけ。そんなタイミングのことだ。
僕はつい先ほどまで考えていたことを忘れた。何か考えていたのは確かに覚えている。それなのに何を考えていたのかが頭から抜け落ちてしまった。
操作していたスマホを置いて、思い出すことに頭を集中させる。トイレに行く前には考えていたはずだ。何かの疑問を解消しようとしていたのか、しょうもない妄想だったか、それともやらなければならないことを唱えていたのか。いずれにしろ何かは考えていたはずだ……。
数分間、頭を悩ませた……。けれども何を考えていたのか思いだせなかった、どうしても。そこで僕は思った…………あー、イライラする。
忘れてしまったくらいだから、きっとどうでもいいこと。この苛立ちも一緒に放ってしまえばいい。しかし、思い出せそうで思い出せないこの感覚が僕を諦めさせなかった。あー本当にイライラする。
もう少しでパっと。次の瞬間にはパっと閃いていそうなのだ。頭の中が霧ががっていて、そこに対象が見え隠れするのに、手を伸ばせども伸ばせども捉えられない。
寝ころんだ体を起こしてまで頭を働かせる。すると僕は決めた、こいつだけは許してなるものかと。
たまにこういうことがあるが、僕は1度も思い出せなかったことが無い。何戦何勝かは分からないが無敗の男だ。その力を見せてやる。必ず正体を暴いてやるぞ。
僕は必殺技、さっきやっていたことをそのまま再現する、を実行した。自分がやっていたことを振り返って、記憶に残っているところから1つ1つそのまま実行する。きっときっかけはそのどこかにあるはずなのだから。
トイレに行く前はえっと……スマホでこのサイトを見ていて……その次にこの動画を視聴していた……。ベッドに寝転ぶところからそのまま再現した。足に挟んでいたクッションも同じ格好で足に挟んで。
……が、しかし求めるものは降ってこない。
「はあ?」
僕は動画を見終わると言った。何のひっかかりも得られなかった。こんなに手がかりが無いのは初めてだ。
頭から何かを取り出すジェスチャーをしてもダメ、一度全く何も考えない無の状態になってもダメ、いよいよ僕は笑った。怒りを通り越して笑ったのである。
はははは、そっちがその気なら僕にも考えがある。
僕は力強く収納のドアを開けた。こんな時に頼るのはもちろん黒いパソコンである。
「さっきまで考えていたこと 内容」
間髪入れずにワードを入力した。こうなったら必ずあの気持ち良さを手にしてやる。ここまで焦らされてから得る快感は一体如何ほどのものか。
今回の検索結果に対しては予想などなかった。そんなものがあったら今頃こんな1日1回の検索を使うなどという愚かなことはしていない。
Enterキーを叩くと短い文章が表示される。
「あなたが忘れた考え事は、先ほど動画を視聴するとき広告に出てきたキャラクターの声がどの声優の声かというものです。」
僕はそれを見て戦慄した――。まさか、そんなことがある訳がない。しかし、微かに感じるスッキリとした気持ち。頭では分かっていても、体がそれを事実だと認める。
そうだ。そうだった。こうやって悩む前もまた悩んでいたのだ。あの見たこともないキャラクターの声、どっかで聞いたことある気がするんだけど、どのアニメのどのキャラの声だっけ……。
ぬわああああああ――。頭の中で叫び、地に伏せる。
心が折れかけた……しかし、僕はまた笑う。上等じゃねえか、そっちがその気であるならと……。
――翌日の僕は目を瞑ってあくびをしながら家を出た。
そう思ったのはある日の夜のことだった。
就寝前のルーティンが終わった23時40分。あとは眠くなるまでベッドでだらだらとするだけ。そんなタイミングのことだ。
僕はつい先ほどまで考えていたことを忘れた。何か考えていたのは確かに覚えている。それなのに何を考えていたのかが頭から抜け落ちてしまった。
操作していたスマホを置いて、思い出すことに頭を集中させる。トイレに行く前には考えていたはずだ。何かの疑問を解消しようとしていたのか、しょうもない妄想だったか、それともやらなければならないことを唱えていたのか。いずれにしろ何かは考えていたはずだ……。
数分間、頭を悩ませた……。けれども何を考えていたのか思いだせなかった、どうしても。そこで僕は思った…………あー、イライラする。
忘れてしまったくらいだから、きっとどうでもいいこと。この苛立ちも一緒に放ってしまえばいい。しかし、思い出せそうで思い出せないこの感覚が僕を諦めさせなかった。あー本当にイライラする。
もう少しでパっと。次の瞬間にはパっと閃いていそうなのだ。頭の中が霧ががっていて、そこに対象が見え隠れするのに、手を伸ばせども伸ばせども捉えられない。
寝ころんだ体を起こしてまで頭を働かせる。すると僕は決めた、こいつだけは許してなるものかと。
たまにこういうことがあるが、僕は1度も思い出せなかったことが無い。何戦何勝かは分からないが無敗の男だ。その力を見せてやる。必ず正体を暴いてやるぞ。
僕は必殺技、さっきやっていたことをそのまま再現する、を実行した。自分がやっていたことを振り返って、記憶に残っているところから1つ1つそのまま実行する。きっときっかけはそのどこかにあるはずなのだから。
トイレに行く前はえっと……スマホでこのサイトを見ていて……その次にこの動画を視聴していた……。ベッドに寝転ぶところからそのまま再現した。足に挟んでいたクッションも同じ格好で足に挟んで。
……が、しかし求めるものは降ってこない。
「はあ?」
僕は動画を見終わると言った。何のひっかかりも得られなかった。こんなに手がかりが無いのは初めてだ。
頭から何かを取り出すジェスチャーをしてもダメ、一度全く何も考えない無の状態になってもダメ、いよいよ僕は笑った。怒りを通り越して笑ったのである。
はははは、そっちがその気なら僕にも考えがある。
僕は力強く収納のドアを開けた。こんな時に頼るのはもちろん黒いパソコンである。
「さっきまで考えていたこと 内容」
間髪入れずにワードを入力した。こうなったら必ずあの気持ち良さを手にしてやる。ここまで焦らされてから得る快感は一体如何ほどのものか。
今回の検索結果に対しては予想などなかった。そんなものがあったら今頃こんな1日1回の検索を使うなどという愚かなことはしていない。
Enterキーを叩くと短い文章が表示される。
「あなたが忘れた考え事は、先ほど動画を視聴するとき広告に出てきたキャラクターの声がどの声優の声かというものです。」
僕はそれを見て戦慄した――。まさか、そんなことがある訳がない。しかし、微かに感じるスッキリとした気持ち。頭では分かっていても、体がそれを事実だと認める。
そうだ。そうだった。こうやって悩む前もまた悩んでいたのだ。あの見たこともないキャラクターの声、どっかで聞いたことある気がするんだけど、どのアニメのどのキャラの声だっけ……。
ぬわああああああ――。頭の中で叫び、地に伏せる。
心が折れかけた……しかし、僕はまた笑う。上等じゃねえか、そっちがその気であるならと……。
――翌日の僕は目を瞑ってあくびをしながら家を出た。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密
まさき
青春
俺は今、東大院生の実験対象になっている。
ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。
「家庭教師です。住まわせてください」
突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。
桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。
偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。
咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。
距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。
「データじゃなくて、私がそう思っています」
嘘をついているような顔じゃなかった。
偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。
不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる