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第3話 変色
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エイタが望んでいた展開に鼓動が早くなったが、距離を詰めることなくゆっくり階段を下りた――。エイタが1階に着いたとき公民館の正面入り口の自動ドアがちょうど閉まる。
これでまた今度にするのは何回目だ。問題を先送りにして、どこかへ捨ててしまう度に降り積もっていく気持ちはそろそろ溢れてしまいそうだった。
エイタは自分で作った嘘を全うする為にカフェスペースへ向かった。本当はルリに話しかけるチャンスを逃さないために1人で出てきたのだが今日も勇気が出せなかった。
外ではまだ雪が降っていて電気をつけていないとカフェスペースのキッチンは薄暗かった。アルコールの消毒の臭いの中大型の冷蔵庫を開けて、最初に見えた冷凍食品を手に取りため息を吐いた。重い足取りで3階まで戻って、廊下の突き当りまで歩く。
ここからは公園が一番よく見えて、ここからならルリの金色の髪も見えた。ルリはいつも1人でいて、それはルリの髪が金色で、金色は今の世界では忌み嫌われる色だからだ。
うわさによると昔は周りと同じ黒髪だったらしいが、染めたわけでもなく、ある日突然金色になったらしい。その話をしていた女の子は続けて不気味だとルリの悪口を言っていた。ルリは普段通り大きなアスレチックの向こう側の散歩道にある木製ベンチで彼女は本を広げている。
エイタはちょっとした隙にこの場所で窓越しに斜め後ろ姿のルリを見つめることが習慣になっていた。
立って眺めていても仕方ないし、冷凍食品の袋を持っている手が冷たいのでショウゴとタイシと過ごす遊び部屋に戻る。
ドアを開けると、2人の体制は部屋を出る時と同じだった。どうやら本当に寝てしまったらしい。エイタは手に持った冷凍食品を冷蔵庫に入れ、座イスに座ることを静かにこなした。
暖房の音だけが流れる部屋で、座イスの背もたれを倒し部屋の蛍光灯を見つめる。ルリは今も1人なのだ。自分が望む未来を叶えるには行動するべきなのはわかっている。しかし景色は止まったままだ。
目を閉じそうになった時、ザーザーと音が聞こえた。窓に無数の雨粒がぶつかっていて、起きあがり近づいて見てみると一瞬でアスファルトを濡らし色を濃くするなかなか見ないような豪雨だ。おそらく通り雨だけど――ルリは傘を持っていただろうか……。
すぐに体が動き、部屋の出口においてある傘を持って走り出していた。
階段を降りる途中、傘を2本盛ってくるべきだったと気づいたが止まらない。1階で急な雨に濡れた顔見知りとすれ違ったが目もくれず、あっという間に外に出て雨の中公園を目指す。
この雨の中で傘を差して走ったことはなかったので激しく傘にぶつかる雨に濡れずに体を動かすのが難しい。大きなアスレチックのところまできて走る速度を緩め向こう側に目を凝らすと、屋根付きの休憩所の中にいるルリを見つけた。
ルリは傘を両手で持ち広げて、前方からくる雨を傘を回しながら受け止める子供のようなことをしていた。
エイタはなんだか拍子抜けしてその場で数秒止まり、今度は歩いた。雨でぬかりみ始めたグラウンドから出て、両脇に緑が並ぶ石床の散歩道を通って後ろ姿のルリに近づく。
ルリは傘を回すのをやめて傘を少しだけ下げた。同時に肩が下がりうつむく。おそらくこの雨でこちらには気づいてない。
雨が差し込み床が半分濡れている休憩所の数歩手前、このまま、やってやろう――
「あのさ……」
振り向く彼女、エイタを捉えた瞳が大きく開いて、信じられないくらい輝いた。
これでまた今度にするのは何回目だ。問題を先送りにして、どこかへ捨ててしまう度に降り積もっていく気持ちはそろそろ溢れてしまいそうだった。
エイタは自分で作った嘘を全うする為にカフェスペースへ向かった。本当はルリに話しかけるチャンスを逃さないために1人で出てきたのだが今日も勇気が出せなかった。
外ではまだ雪が降っていて電気をつけていないとカフェスペースのキッチンは薄暗かった。アルコールの消毒の臭いの中大型の冷蔵庫を開けて、最初に見えた冷凍食品を手に取りため息を吐いた。重い足取りで3階まで戻って、廊下の突き当りまで歩く。
ここからは公園が一番よく見えて、ここからならルリの金色の髪も見えた。ルリはいつも1人でいて、それはルリの髪が金色で、金色は今の世界では忌み嫌われる色だからだ。
うわさによると昔は周りと同じ黒髪だったらしいが、染めたわけでもなく、ある日突然金色になったらしい。その話をしていた女の子は続けて不気味だとルリの悪口を言っていた。ルリは普段通り大きなアスレチックの向こう側の散歩道にある木製ベンチで彼女は本を広げている。
エイタはちょっとした隙にこの場所で窓越しに斜め後ろ姿のルリを見つめることが習慣になっていた。
立って眺めていても仕方ないし、冷凍食品の袋を持っている手が冷たいのでショウゴとタイシと過ごす遊び部屋に戻る。
ドアを開けると、2人の体制は部屋を出る時と同じだった。どうやら本当に寝てしまったらしい。エイタは手に持った冷凍食品を冷蔵庫に入れ、座イスに座ることを静かにこなした。
暖房の音だけが流れる部屋で、座イスの背もたれを倒し部屋の蛍光灯を見つめる。ルリは今も1人なのだ。自分が望む未来を叶えるには行動するべきなのはわかっている。しかし景色は止まったままだ。
目を閉じそうになった時、ザーザーと音が聞こえた。窓に無数の雨粒がぶつかっていて、起きあがり近づいて見てみると一瞬でアスファルトを濡らし色を濃くするなかなか見ないような豪雨だ。おそらく通り雨だけど――ルリは傘を持っていただろうか……。
すぐに体が動き、部屋の出口においてある傘を持って走り出していた。
階段を降りる途中、傘を2本盛ってくるべきだったと気づいたが止まらない。1階で急な雨に濡れた顔見知りとすれ違ったが目もくれず、あっという間に外に出て雨の中公園を目指す。
この雨の中で傘を差して走ったことはなかったので激しく傘にぶつかる雨に濡れずに体を動かすのが難しい。大きなアスレチックのところまできて走る速度を緩め向こう側に目を凝らすと、屋根付きの休憩所の中にいるルリを見つけた。
ルリは傘を両手で持ち広げて、前方からくる雨を傘を回しながら受け止める子供のようなことをしていた。
エイタはなんだか拍子抜けしてその場で数秒止まり、今度は歩いた。雨でぬかりみ始めたグラウンドから出て、両脇に緑が並ぶ石床の散歩道を通って後ろ姿のルリに近づく。
ルリは傘を回すのをやめて傘を少しだけ下げた。同時に肩が下がりうつむく。おそらくこの雨でこちらには気づいてない。
雨が差し込み床が半分濡れている休憩所の数歩手前、このまま、やってやろう――
「あのさ……」
振り向く彼女、エイタを捉えた瞳が大きく開いて、信じられないくらい輝いた。
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