キンメッキ ~金色の感染病~

木岡(もくおか)

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第5話 ナナミ

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 部屋の奥側の隅にはルリも座っていて、うつむいて時間が来るのを待っている。ルリの隣の席は空いていて、近くに座る子達も各々別の方向を見て話していた。金色の髪は数か月前に暴れた感染病をちらつかせる。

 テーブルに着く子供達の前にはお盆に置かれた今夜の夕食があって、ルリのようにうつむいている者もいれば、うるさいほど喋っている者もいる。ルリのほうに視線を送ってみたが応答はなかった。

 班ごとに分けられたテーブルへエイタ達も座る。エイタとショウゴは7班で、タイシは2班だった。

「おお、うまそうやなあ」

 ショウゴはご飯に喜び、同じ班のメンバーと隣でざわつく室内に混ざりうるさいほど喋りだした。

 ほどなくしてナナミが立ち上がり、キッチンの前で手を叩いて注目を集める。

「はーい、全員揃ってますかー?……揃ってないところないね。えっと明日は予定通り畑の栽培面積を増やすために耕すことと、ここの冷蔵庫に入れとく食料諸々共有する物資の補給を2班に分かれてやるからね」

 ナナミは雰囲気からは想像できないほどやり手で、この公民館の生活方針やルール、各部屋の用途などを1人で決め、小さい子の世話も中心になって行っていた。

 おそらく何かを管理するのが好きなのだろう。食糧問題に備えて農業を始めるのもナナミが決めたことで、最近はいつ使えなくなるか分からない電気を自分たちで発電していけるように1人でこそこそと企んでいる。

「はーい。じゃあいただきまーす」

 ナナミの号令で全員が合掌して食事が始まった。ナナミは仕事を終えた後、ルリの隣の席に座る。誰に対しても優しいナナミは孤立しているルリにも積極的に近づいていた。

 ナナミのことはエイタも人として好きで尊敬していた。班全員が揃わないとご飯を食べ始められないといった決まりや、仕事を回してくることは窮屈に感じている。それでも従い続けるのは彼女の負担を増やしたくないと思っているからだった。

「飯食った後、また続きやるよな」

 隣のショウゴがカレーを頬張りながらショウゴが当たり前のように言う。

「いやーちょっと疲れたんでまた明日にしませんか」

 今日は頑張ったので嘘ではなかったし、1人になる時間がほしかった。今日中でもチャンスがあればルリにもう一度挑戦して――ちゃんと話がしたい。

「だめだめ。俺は疲れてないもん」

「ええ。もう目が疲れましたよ。日中ずっとやってじゃないですか」

「俺はあんなんじゃ足りねえよ。深夜までやろうぜ」

「んー……じゃあ、ちょっとだけですよ」

 笑顔を作って渋々了承した。焦る必要はないと自分に言い聞かせながらカレーを口に運ぶ。

 夕食に作られるカレーはいつも甘口だが、どこかの班の料理上手の女子のレシピで作られたカレーは甘口に飽きてきた年齢でもかなりおいしい。

 エイタの前では同じ班の年下の男の子が動物のような勢いでカレーを食べている。同じ年齢がいないので、7班のメンバーとは表面上仲良くしているがショウゴ以外と特に用がなく話すことは少ない。

 真っ先にカレーを1杯食べ終えた目の前の少年が空いた皿を持って走っておかわりに向かう。自分もまだ子供だが若い男子の食欲には驚かされる。

「なかなかやるな」

 ショウゴがなんだかうれしそうな表情で言っている。ショウゴと彼の早食い対決は毎日自然と行われていた。ショウゴが本気で勝ちにいくことはないが彼はいつも勝負を本気で楽しんでいる。

 ショウゴが2杯目を食べているときに1杯食べ終えたエイタはスプーンで皿に張り付いたカレーを搔き集めて米一粒残さず口に入れた。ショウゴに何も言わずにおぼんをおぼんをキッチンに置くと、そのままカフェスペースから出る。

 いつの間にかカフェスペースからいなくなっていたルリがロビーのどこかにいないか探したが、金色の髪は見えない。手持無沙汰になったエイタは玄関を抜けて公民館の外に行った。

 本当ならもう遊び部屋に戻りたいところだが今日は班で食器洗いを担当する日なので皆が食べ終わる時間までもう少し待つ必要があった。だから、気持ちを落ち着かせるためにも静かな外へ。
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