毒におかされた隊長は解毒のため部下に抱かれる

・めぐめぐ・

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 どれくらい時間がったのかは分からない。

 微睡まどろみの中をただよっていたリースの意識が、ゆっくりと現実に向かって浮上していく。

 薄っすら開かれた瞳の向こうに、ゆらゆらと揺れる光が見えた。

 光の元は、ランタン。
 どうやら外はまだ、やみに包まれているらしい。

(私は……、今まで一体何を……)

 意識がはっきりしない。

 思考のきりを払うように頭を軽く振ると、ゆっくり上半身を起こした。
 
 上にかけられていた布がすべり落ち、何も身に着けていない肌が空気にさらされる。まだ恥ずかしさを感じるほど、覚醒してないようだ。

 しかし、身体の異変には気づいたらしい。

「んっ……、痛いっ!」

 走った違和感に、思わず顔をしかめ声が出る。

(なっ、何? あそこが……ジンジンして痛みが……。私、一体……)

 普段、決して感じるはずの場所からの痛みに、リースは戸惑とまどいの表情を浮かべた。

 上半身を完全に起こした時、秘所から何かがあふれ出す感覚が襲った。それは彼女の内腿をつたって、床に敷かれていたマントを濡らす。

 布に広がるシミを見た瞬間、リースの心臓が跳ね上がった。

 全てを思い出したのだ。

 敵に、有毒な催淫剤さいいんざいを飲まされたこと。
 解毒のために、男の精をナカに受けなければならなかったこと。

 そして、

(解毒のためにレフが私を……抱いて……ナカに……)

 まだ、秘所から彼の体液が流れ出ている。
 先程までの情事じょうじが生々しく脳内で再生され、頬をおおう手のひらから変な汗が湧きだした。

 恥ずかしさと苦しさで胸がいっぱいになりながらも、細い指が溢れたそれをすくい取る。

 指を濡らす白いもの。

 ピンク色が混じったそれを良く見ようと顏に近づけると、ツンとした匂いが鼻を刺激した。

(これが、レフの……)

 そう思うと下腹部が勝手に熱を持ち、キュンっと締まった。男の匂いにあてられ、彼女の表情が欲情したそれへと変わる。

 誘われるように、指先に付いた彼の体液を舌ですくった。
 彼が指についた愛液を舐めとった光景が重なり、ほわっと吐息といきれる。

(……にがい)

 舌先で転がしながらも、その味を不快に思っていない自分がいる。むしろ興奮が増し、ジンジンと痛む蜜穴がヒクついた。 

 トロンととろけ、情欲じょうよくに浸っていた彼女の瞳が見開かれた。

(わっ、私は一体何をっ‼)

 正気に返り、頭を抱えて落ち込むリース。

 慌てて舐めた指先をふき取ると、さらに自分の上半身が裸ということにも気づき、落ちた布で胸元を隠した。

 その時、ガタンと扉が開かれる音が響き渡った。突然の音に、リースはビクリと身体を震わせる。

「リース……隊長、お目覚めになっていたのですね?」

 入ってきたのは、レフだった。上半身は裸のままで、その手には水をたたえた桶が抱えられている。

「一人にしてすみません。近くで水音がしたので、水をみに行ってたんです」

 どうやら近くに川があったらしい。

 自身がそばにいなかった理由を告げながら、布きれを水に浸し、少し気まずそうに彼女の体調を尋ねた。

「あの……、身体の方は……、大丈夫ですか?」

「えっ、あ……、ああ……。そっ、そうだな……。さっきのような、おっ、おかしいところもないし、もう大丈夫そう……だ」

 レフの鍛えられた裸から視線をらし、盛大せいだいにどもりながらリースが答える。

 確かに、変なうずきも腹部の激痛も感じられない。

(行為後の違和感と痛み以外は……)

 そう思いながら、リースは身体を隠す布を強く握った。
 先程感じていた羞恥と罪悪感が蘇り、言葉となってこぼれる。

「……すまなかった、レフ」

「いいえ」

 レフは小さく微笑んだが、彼からそれ以上の言葉は出なかった。ただ、どこか寂しそうな表情を浮かべ、こちらを見つめている。

(そうか……、そうだ……な。あの行為は……解毒だ)

 リースの心が締め付けられる。
 自分の気持ちを悟られまいとうつむき、ぎゅっと瞳を閉じた。

 その時、レフが濡らした布を差した。

「良かったら、これで身体を拭いてください。えっと……、特に腹の辺りを……」

 そう言いつつ頬を赤くしながら、落ち着かない様子で視線をあちらこちらにらしている。

 挙動不審な姿を見て、何気なく腹部を手で触れると、

「ひゃぁっ! なっ、何⁉」

 ぬるっとした感触が襲い、リースは思わず声を上げてしまった。

 慌ててレフが彼女の手を取って付着ふちゃくしたそれをふき取る。そしてさらに顔を赤くしながら白状した。

「すみません! 目覚める前に綺麗にしようと思ったのですが……。あなたが眠った後……、どうしても我慢出来なくて……」

 その先の言葉は出てこなかったが、彼が一体何をしたのか、うといリースにも分かった。

 一度達しただけでは欲情が収まらず、自身を慰めその欲をリースの身体に放ってしまったらしい。
 
「そっ、そうかっ! まっ、まあ、お前も男だしな! そっ、そっ、そんなこともあるだろう! きっ、気にするな!」

 衝撃を受けつつも、隊長としての威厳を守るため、リースは必死で言葉を紡ぎ理解を示そうとした。が、心の中では、

(……って、そんなことあるのか……? ……わからん)

と、勢いに任せて適当な事を言ってしまったと酷く後悔し、そっとため息をついた。
 
「さっき、近くに川があるって言ってたな? そこで洗った方が……早そうだ。せっかく汲んできてもらったところ、悪いが……」
 
「そっ、そうですね! ご案内します」

 差し出した布を桶に突っ込むと、レフは慌てて立ち上がった。それにつられ、リースも立ち上がろうと足に力を込める。
 
 毒は抜けているので、身体の自由は戻っていた。
 しかし急に立ち上がったため、身体がバランスを失い、レフの胸に飛び込む形となってしまう。

 厚い胸板むないたに寄りかかり、リースの身体が不自然な熱を持った。ドキドキして、心音の乱れが密着する身体から伝わらないかと心配になる。

「すっ、すまない……。ちゃんと立てるから、すぐに……」 

「いいえ。自分がお連れします」

 そう言ってレフは、床に敷いていたマントをリースの肩にかけた。全身が布で覆われた瞬間、ふわっと身体が持ち上がる感覚が彼女を襲った。

 レフがリースを抱き上げたのだ。

「れっ、レフ⁉ だっ、大丈夫だから! 降ろして……」

 リースが慌てて声をかけるが、レフは手を離さなかった。それどころか、少し悪戯いたずらっ子のような笑みを浮かべ、耳元で囁く。

「大丈夫じゃないですよ。隊長、初めてだったんですから……」

 何が初めてなのか、嫌でも分かる。

 顔を赤くしながら、その表情が見られないよう、レフの胸に顔を埋めた。

 ナカが反応し、まだ残っている体液が零れ出そうになるのを必死でこらえながら。
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